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第8話 とある日の一戦

あの告白を断ってからというもの、毎日ラブレターという名の果たし状が届く。


一応、全戦全勝しているので彼氏になる者は居ない。


俺は自分より強いやつじゃないと恋愛対象に入らないと言ったのに、噂が独り歩きして勝ったらヤレる女として広まってしまった。

毎回戦う前に、

「勝負は受けるけど、別に私に勝ったからってヤレる訳じゃないからね。」

と言っているはずなのだが、残念ながらダメみたいだ。

毎回ある程度は見物人が居るんだけどなぁ。

てかなんなら賭博やってるみたいだし。

自分に賭けていいか?



気持ちを切り替えて、目の前の相手に集中する。

場所は中庭。

今日の相手は16組の佐々木くんらしい。

全く知らん奴だが、顔は普通にかっこいい。お前絶対隠れファンいるんだからわざわざ俺の方来るなよ。

佐々木くんが口を開く。


「えーと、じゃあ始めていいかな?」

「いつでもどうぞ」


佐々木くんは開始と同時に距離を詰めてくる。

そのまま大振りな拳が飛んでくるので、姿勢を落として回避、勢いのまま通り過ぎた佐々木くんのがら空きボディに回し蹴りを叩き込む。


周囲から歓声が上がる。

人の戦いを見せもんにしやがって。


吹っ飛んだ佐々木くんは脇腹を痛そうに抑えながらも再び距離を詰めてくる。

根性あるな。


あと少しで間合いに入るところで急に佐々木くんはジャンプをした。


(飛び蹴りか?その距離じゃギリ届かないぞ?)


そう思っていると、

突然に後頭部に衝撃が走った。


謎の衝撃によって俺は前によろける。


まずい、蹴りが───────





「はぁ……はぁ」


ボタボタと血が滴る。

意識が飛びそうだ。


佐々木が体当たりで俺を突き飛ばす。

丁度"さっき蹴りが放たれた位置"だ。


腕を顔の前でクロスし防御の構えをとる。

次の瞬間両腕に衝撃が走る。

やはり、"先程の蹴りと同じ威力"だ。


「過去の攻撃の再現、って所かな?」

「当たり!」


更に追撃をするため佐々木は距離を詰める。


こいつの戦法はわざと大振りな攻撃を行い、相手に回避させ、2手目の攻撃と再現した攻撃を合わせて1人時間差攻撃を繰り出す、というものだ。


そうと分かれば対策は2つもある。

1つ目は移動する。再現する攻撃は同じ座標でないといけない。ならまだ攻撃が行われていない場所で戦えば良いだけだ。


2つ目は攻撃をさせない。少し組み合って分かったが、体術では俺が圧倒してる。全ての攻撃の出を潰せば再現する攻撃も無い。


佐々木が右手を振りかぶりながら近づいてくる。

俺はその右手を掴む。拳が加速し切る前に止めてしまえば大した威力は出ないものだ。

焦った佐々木は左手を振りかぶる。


「遅い」


両手を掴んだ俺は、その手を支えにしながら佐々木の顔面にドロップキックをお見舞いする。

佐々木は後退する。

俺から佐々木までの区間に過去の攻撃は無い。


「降参は?」

「勝負はまだ分かんないだろ!」

「そりゃ残念」


まだ諦めないつもりらしい。


佐々木はその場でシャドーボクシングを始める。


「ほら、かかってきな。」


なるほど、佐々木の周囲は過去の攻撃でいっぱいだ。

下手に突っ込めば大量の拳が同時に俺に当たる。

面倒な野郎だ。


「それが奥の手ってことかな?」

「そうだ!この技を破る術は無ぇ!」


こりゃあ面倒だな。

まあ、あの間合いに入らなければ俺は負けないんだが……

それじゃあ泥沼だ。

どちらが先に折れるかの我慢比べになってしまう。


それは嫌だ。

俺は早く帰りたいからな。


...使うか。



周囲に風が吹き始める。


俺は真っ直ぐ佐々木に向かって歩き始めた。


「諦めたのか?」

「まさか。私の勝ちだよ」


そのまま佐々木の間合いに侵入する。


「馬鹿な!?当たらない!」


佐々木の攻撃は全て俺をすり抜ける。

俺は佐々木の肩に手を置きながら、片目をウインクしながら言う。


「降参する?」


驚いた佐々木だったが、諦めたように言う。


「……ああ、負けたよ」

「惜しかったね」


そう言うと、周囲の風が止んだ。


野次馬たちが歓声を上げる。


「アキラさん、勝利した感想は?」


げ、新聞部だ。

こいつら苦手なんだよな。


「はいはい、邪魔邪魔。インタビューは受けないから〜」


さっさと立ち去ろう。




新聞部を撒いたあと、保健室へ向かう。


「アキラちゃん。そんなに戦いが好きなの?」

「いやー向こうから来るもんだから...」

「はぁ、若いっていいわね。」


毎回戦いが終わったあとは鈴先生の治療を受けてから帰っている。


「教師としては辞めて欲しいのだけれど。あなた、賭博の対象になってるわよ」

「知ってますよ。全戦全勝してるから賭けは成立してないですけどね。」

「いや、学校で喧嘩賭博が流行ってる時点で……はぁ、私の出る幕じゃないわね。」


鈴先生はなんだかんだ言いながら毎回治してくれる。優しい。

俺もここでは演技するのを辞めている。なんというか、全部見透かされてる感じがするから。


「ねぇ、そろそろあなたの能力教えてくれない?」

「いやだね。絶対言わない」

「そう」



そういえば俺にも異名がついたらしい。


曰く"金虎"だそうだ。


銀狼を意識しすぎだろ。

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