第5話 お手本
能力についてはよくわかっていない。
百人に一人だとか、十人に一人だとか、とにかく適当な情報しかない。
なぜなら、ブラックボックスの部分が多すぎるから。
例えば光の弾って何からできてるのか、とか、どういう原理で射出されるのか、とか既存の物理現象に当てはまらないことが多すぎて、全く研究が進まない。
ただ一つ言えるのは、この伊古奈特設学校には大量の能力者がいるってことだ。
「俺の弾が...!」
「キミのその能力はもう、私には通じない。このままこのままキミにぶつけても良いけど?」
俺は光の弾を周回させながら言う。
この光の弾の威力はこいつ自身が1番分かってるはず。そして、こいつはこれを回避できる程速く動けない。俺の勝ちだな。
これがいつ何時も余裕を崩さないお姉さんの立ち振る舞いってもんだぜ、bro。
「チッ、今日はこの辺にしといてやるよ。」
「その子も連れてってよね」
俺がそういうとスカジャンはメリケンを担いで教室を去っていく。
教室内はしばらく静寂に包まれていたが、一人が拍手をしだすと一人、また一人と増えていき遂には全員が拍手をし始めた。
「すごかったぞ!」
「かっこいい!」
教室内は俺に対する歓声と称賛の嵐だ。
俺、また何かやっちゃいましたか?ってな
まあ"また"じゃないんだけど。
「さあさあ、みんなこの散らかった机を整理しよう」
そんなこんなで迎えた最初の授業。
俺はさっきの喧嘩の時、盾にしたバッグに入っていた教科書たちがボロボロになっていることに気が付く。
まあ最初の授業なんてガイダンスだけだから問題ないか。
そして、授業が始まってしばらくした後気が付く。
さっきまでアドレナリンがドバドバだったから分からなかったが、どうやらあの光の弾の攻撃力はかなりのものだったらしい。
痛みが引いていかない。
さっき見たとき出血はなかったように見えたが。内部で損傷が起きているのかもしれない。
午前の授業が終わったら保健室に行こうか。
「うん、内臓潰れてるね」
「うぅ、痛いよぉ。」
養護教諭の鈴先生に怪我を診てもらうと、そんな言葉を言い渡された。
昼まで耐えるとか無理だった。どんどん増してく痛みに耐えられず一時間目終了時点ですぐ保健室へ向かった。
しかも内臓潰れてるって、あのスカジャン野郎殺意高すぎだろ。本当に殺す気だったじゃねーか。
「はいじゃあ治すよー。」
「え?」
痛みがどんどん引いていく。潰れた内臓治すとか、どうなってやがる。
この養護教諭ただもんじゃねえ...
「うーん、怪我は治ったけどしばらく安静にしておいてね。体力まで回復したわけじゃないから。」
それだけ言い残して立ち去ろうとする鈴先生は途中で止まり、
「あ、あと先生として言っておくけど......喧嘩はしちゃだめだよ」
「は、はい」
俺のあごに手をやりながらしゃべりかけてくる。
すごいきれいな顔がゼロ距離にある。
毎朝俺の美少女顔を拝んでなきゃ確実に惚れていた。
これがホンモノか...
ぜひとも見習いたいものだ。