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第14話 お前は誰だ

朝、登校すると、下駄箱に一通の手紙が置いてあった。

またラブレター兼果たし状かと思い開けてみると、

"放課後屋上で、銀狼より"

と書かれていた。


個人的な呼び出し。

大丈夫かこれ。殺されたりしないよな。

まあ、行くか。



放課後屋上へ行ってみるとそこには銀狼...ではなく銀髪ロングヘア、そして左目に眼帯をした女が立っていた。


「え、誰?」

「25組のシルベスターだ。よろしくな」

「あ、まさか...」

「そう、私が銀狼だ。」


シルベスターの顔がみるみる変わっていき、私の顔になる。


「その能力、知り合いにやってもらったって言ってなかったけ。」

「あん時はそう言ったが、これは私の能力だぜ。今から戦うって相手にヒント与えるバカがどこにいる。」


そう言いながら元の顔に戻す。

身体強化じゃなかったのか?ますます分からなくなってきたぞ。


「ふーん...それで、何の用で呼び出したの?」

「お前の実力を見込んで頼みがある。まず、前提として私は政府の雇われなんだ。この学校やこの街で起こるであろうトラブルとかを陰から解決してくれって言われてる。」


陰から...?

バリバリ表にでて、今や学内最強と謳われるあの銀狼が?

この子、アホの子かな?


「なんでわざわざ政府がそこまでするの?」

「この学校って能力者が大量に居るだろ?能力が暴走したり、能力者が集まって暴動でも起こしたら、そこらの警察じゃ対応出来ない。だから私みたいなのが派遣されたんだ。私の他にも何人かいるぜ。ほら、お前が言う鈴先生とかな」

「ちょっと、言わないでって伝えたよね?」


シルベスターの頭をコツンと叩きながら鈴先生が現れる。

鈴先生が政府から派遣された人だったとは驚きだ。

まあ只者じゃないとは思っていたが。


「つまり、スカウトってこと?」

「そうだ。私が別件で忙しくなるから、代わりが要ると思ってな。だからあの勝負も受けた。」

「別件って?」

「それは言えない。政府極秘の任務だからな!」


はぐらかしとけばいいのに。まあ、下手に誤魔化さずこれくらい堂々と言われたら、それはそれでそれ以上追求出来ないが。


「それ、報酬って出るの?」

「ああ、もちろんでるぞ。なんたって公務員だからな」

「じゃあやるよ。」

「本当か!いやー助かるぜ。じゃあ色々お前の家に送り付けておくわ。」


部活とか入ってないから、賭け試合のあと暇だし、そろそろあの闇バイトの貯金が無くなりそうだった。

丁度仕事が手に入るなら好都合だ。

このまま帰るのかと思いきやシルベスターが急に真面目な顔になり話し始める。


「...さてと、じゃあ本題に入ろうか。」

「?今のが本題じゃなかったんだ?」

「まあな。勧誘との順番が逆かとも思うんだが、あえて問おう。お前は誰だ?」


場の空気が変わる。

さっきまでの和やかな空気から一変。

一触即発という感じだ。

横の鈴先生を見る。

彼女も少しシルベスター程じゃないが警戒態勢といったかんじ。


「質問の意味が分からない。私は私。ただのアキラだ」

「ああ、それは知っているとも。お前の身体についてだ。」


内心派手に驚く。

しかし外側には出さない。悠真とのあれこれを経験してから、ポーカーフェイスを身につけたから。


「知らないフリか?まあいい。調べたところによるとお前の記録が7ヶ月前に書き換えられた形跡がある。性別の項目だ。男から女へ」


これは驚いた。そこまで調べてあるのか。


「それで、私を男だと糾弾するつもり?」

「いや、お前が男だろうが女だろうがそんな事はどうだっていい。問題はその身体だ。」

「何?」

「不思議に思ったことはないか?男の時の身体とは、かけ離れた今の姿になぜなったのか。その女の身体はどこから来たものなのか。」


確かにそれは思ったことがある。

この身体は誰かのものだったりしないか、と。

例えば、寝ている間に意識だけが入れ替えられ、自分の部屋にポンと置かれたままにされれば、女体化したと勘違いするかもしれない。


「キミたちはこの身体のもとの持ち主を知ってるってこと?」

「それは私が説明するわ。」


鈴先生が口を挟んでくる。


「5年前...まだ旧政府がこの国を支配していた時、革命を起こし、旧政府を打ち倒した人達がいたの。その人達のリーダーは、女性にしては高めの身長、金髪碧眼、誰もが羨む美貌を兼ね備え、彼らを率いた。しかし彼女は道半ばで死亡したの。それがあなたが今使っているその身体の持ち主よ。」


...なんだと?


「それを踏まえてもう一度聞くわ。あなたは..."私たち"のリーダーに何をしたの?」


嘘だろ、鈴先生...!?

いや今そこは重要じゃない。

この殺気、答えを間違えたらワンチャン殺されるんじゃないか?

だが、知らないものは知らない。

本当にある日、朝起きたらこうなっていたんだ。

だから、こう答えるしかない。


「私は、何も知らない...7ヶ月前のある日、朝起きたら突然こうなっていた。だから私が出せる情報は何も...無い」


しばらく沈黙が続く。





「っはぁ〜、疲れるなぁ。ねぇ、ハイネちゃん。私演技上手くできてたかな?」

「うおい、私の名前言うなよ!」

「え?どういうこと?」

「最初からアキラちゃんのことは悪い子じゃないって分かってたからね〜。良い機会だしここで揺さぶっておこうかと思ったけど、やっぱ何にも出なかったね。」


あれが演技?

だとしたらとんでもない役者だよ。

安心した私は一気に力が抜けて地面にへたり込む。


「死んだかと思った〜」

「あはは、背負ってあげるからおいで」


わーい、鈴先生の背中だー。


鈴先生の髪の毛に顔を押し付けて、一気に吸い込む。

すごくいい匂いがした。


「アキラちゃん?二度と治療してあげないよ?」

「ご、ごめんって」

「次は無いからね。そういえばアキラちゃんの能力って結局なんなの?」


屋上を後にし、校舎に入りながらそんなことを聞いてくる。

もう、言ってしまうか。同僚になったし。


「言語化するのが難しいんだけど、不確定性の付与っていう感じかな。そこに存在してるようで存在してない、その状態を作りだす、みたいな?」

「なるほど、合点がいった。しかし、あの制限時間はなんなんだ?」

「あれ以上あの状態を継続すると、自分の存在が不確定側に寄りすぎて消えちゃうんだよね。だから制限時間があるんだ。」

「お前、もっと能力の鍛錬をした方がいいんじゃないか?いくらでも克服方法はあるだろ。例えば、能力発動と共に発生する乱気流、あれって大気に不確定性を付与してるんだろ?あれ、別に"嵐王モード"だったか?にならなくても使えるんじゃないか?」


その発想は無かった。

今まで、能力発動状態で何が出来るか、どこまで制限時間を伸ばせるかしか考えていなかったから。

能力発動をするだけでもかなり消耗するからその1回でどうにかしよう、ということしか考えられなかった。


一気に視界が開けた気がする。


「ありがとう、ハイネ。私はまだまだ強くなれる気がする。」

「おい!やめろ!この学校じゃシルベスターで通ってるんだよ!」


銀狼、話してみると意外と面白いやつだ。

なんというか、頭は悪くは無いんだろうが、常に気を抜いていて元気系アホの子みたいな印象をうける。

可愛いな。


「じゃあ、ハイちゃん?の能力をまだ聞いてなかったね。教えてよ」

「おい、ハイちゃん言うな。せめてシルちゃんにしてくれ。あと、若く見えるかもしれないが、私の方が年上だからな?この場の誰よりも」

「え?何歳?」

「...35」

「どういうこと?その肌のハリは35じゃないでしょ!」


「私の能力は細胞レベルでの体内操作なんだよ。」

「ああ、それで身体を強化してるってことね」

「いや?そんなんじゃ上昇幅はタカが知れてる。能力の覚醒だよ。」

「は?覚醒?」


聞いたこともない単語が出てきた。

私がそれについて言及しようとしたとき、目の前に見知った男が現れた。


私の一人称を私にした張本人。私のセフレ、夢見悠真だ。

何故ここに?


「やあ、ハイネ遅かったじゃないか。」

「あ?遅くねーよ。時間ピッタリだろうが」


どういうことだ?ハイネと悠真が話し合っている?


「あっ、おい、今人いるんだから家帰ってから、あっ♡」


なんか目の前でイチャつき出したぞ。

ドユコト?


「ねぇ、2人とも...どういう関係なの?」


聞いてしまった。絶対に後悔する質問をしてしまった。

この質問をしたと同時に、悠真が私に気がつく。

そして気まづそうに目を逸らす。


「私の彼氏、むまくんだよ」


唐突なNTRにより脳が破壊された。


私の居場所が鈴先生の背中の上でなければ私は倒れていた事だろう。


その後2人はイチャイチャしながら帰っていった。


「鈴先生、私にはもう鈴先生しかいないです...」

「アキラちゃん.....」


慈しむような、優しい声がかけられる。

ああ、やはり鈴先生こそ私の運命の────


「私も既婚者よ」


本日二度目の脳破壊。


「うがーっ!私にも恋人よこせー!」

「あの賭け試合、負けたらいいじゃない」

「あんなところに来るやつどうせろくでもないよ」


別にあれは恋人が欲しくてやってる訳じゃない。

断る口実でしかないから。

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