第10話 メス堕ちは突然に
新聞部が発行した朝刊によって、一週間後の金曜日に世紀の対決"銀狼vs金虎"が開催されることが発表された。
プロレスかよ...
まあいい。
とりあえずこの一週間は賭け試合はなしだ。
そういえば、あの賭けってどこ主催で収益は誰が受け取ってるんだ?
出演者に対してのギャラは?
謎は深まるばかりだ。
今日は金曜日。
授業が終わったら何をしようか。
結局俺は部活や同好会などには入ってないんだよな。
まあ賭け試合で忙しいから、入っていたところでまともな活動などできやしないのだが。
しかしそれでも、何かコミュニティに入ってないと交友関係が狭くなる。
クラスの友達もそれぞれ用事があるわけだし。
そんなことを考えながら、校門を出る。
「ねえ、君って最近噂の"金虎"だよね」
後ろから声をかけられる。
振り向くとそこにはめっちゃイケメンな奴がいた。
多分学校一だなこれは。
俺が男じゃなければ、一目惚れするところだった。
まあ、冗談だが、本当にイケメンだ。ついでに高身長。180cmくらいかな?
「そうだよ。」
「これが本物か。可愛いね。ファンなんだ、写真いいかい?」
「もちろんいいとも」
こいつ、なんか声がエロいんだけど。なんか...艶めかしい。
「ハイチーズ」
当然のように肩に手をまわしてきたぞ。馴れ馴れしい奴だ。
...意外と筋肉あるな。強いのか?
「ありがとう。えーと...金ちゃん?」
「アキラでいいよ。」
「夢見悠真だよ。アキラちゃん、良かったら今からカフェに行かない?」
なんだこいつ、初対面で飯誘って来やがったぞ。
断ってもいいが...行ってみたかったんだよな、お洒落なカフェというものに。
「いいよ、キミのおすすめのカフェにつれて行ってくれよ。私はあまり詳しくないんだ。」
「OK、まかせて」
夢見に案内されるがままカフェに行く。
「ここだよ」
うん、すごいおしゃれ。それ以上の感想は出てこない。
そのまま入店し席に着く。
「アキラちゃんは二十歳過ぎてる?」
「?過ぎてるよ」
「それじゃあ、これを飲んでほしいんだ。」
酒かあ...別にいいけどあんまり好きじゃないんだよな。
ちなみに伊古奈特設学校の入学条件に年齢制限は無い。描写してないだけで30代も普通にいる。
アキラ君は女体化した時点で18歳だった。その半年後の今はどう頑張っても19歳。
つまり年齢詐称をした。まあ、この伊古奈で年確はあってないようなものだ。
「そんなに薦めるなら飲んでみようか」
おいしかった。
酒というよりはジュースに近い飲み物だった。
そこからは他愛のない話をしていた。
夢見くんは話が結構上手かった。
来店から時間が経ち、そろそろ適当に理由をつけて帰ろうかなと思っていた時、夢見がとんでもないことを言い出した。
「君って少し、男っぽいよね」
心臓の鼓動が速くなる。
バレた!?バカな、どこで?完ぺきだったハズ。
いや、落ち着け。
「へえ、どの辺が?」
まだバレたと決まったわけじゃない。
逆にこれは改善点を見つけるチャンスかもしれない。
「仕草も何もかも女性のそれだ。うん、実に上手だ。でも練習の結果やっとできるようになったって感じだ。身についてない。多分、心まで女性じゃないからじゃないかな?」
ば、ばれてる...
「必死に練習したんだね。なんでわざわざ女の子としての振る舞いを練習したのかな。」
いつの間にか隣にいる夢見が聞いてくる。
心臓の鼓動がうるさい。
うまく声が出ない。
「わかった。人に性欲を向けてもらうためだね。」
心が掴まれたような感覚になる。呼吸が浅く速くなる。
「わかるよ。人から好意や性欲を向けられるほど気持ちいいことはない。僕もそうだ」
夢見も...同じ?
「アキラ...僕を見て」
顎に手をあてられて、強制的に夢見の顔を見てしまう。
酒のせいか頭が回らない。まつげ長い。きれいな顔...
心臓の鼓動はなおも素早く脈打っている。顔が紅潮していくのを感じる。
自然と目を閉じてしまう。
夢見が俺に口づけをする。
「っは...ありのままの君でいいんだよ。」
そこから先はあまり覚えていない。
あの店を出て、それから...ホテルに行った。
目が覚めたのは次の日の昼だった。