第1話 女体化してやりたいこと
なんでもない朝、胸に重量感を感じて目を覚ます。
目を開けば自分に何が起きたか鏡を見るまでもなく気が付く。
視界の隅、下の方に肌色が見えるからだ。脂肪の塊、男にあるはずもない、そうデカパイが。
「うおっ、でっか」
自分の体をちゃんと見てみれば胸がでかいだけでなく、ちゃんとケツもでかい。
ただ、お腹が少しだらしない。ぷよぷよしたお腹を触る。
さて、体はおおむね"良い"身体をしている。
問題は顔だ。こればかりは鏡を見ないことには分からない。そう思いベッドから降りて洗面台に向かう。
鏡に映る自分の顔を見て、俺は言葉を失う。
そこには、道を歩けば10人中11人が振り向くほどの、絶世の美女がいた。
自分の顔に自分で見惚れていると、段々自分の置かれた状況を理解してくる。
そう、何故こうもすんなりと、"ああ、俺は女体化したのか"と自然に受け入れていたのか。
その答えは単純。
寝ぼけていたからだ。
思考がクリアになってきて初めて気がつくことがある。
これ、男に戻れるのか?
今まで"明"として積み上げてきた全てを失ったのでは無いだろうか。
四月に始まる学校にも男の"明"として申し出を出した。
身体がこれ程大きく変わっているのだ。虹彩や骨格、指紋など、本人かどうか確認できるものなど何も無い。
そもそも俺が、"明"の記憶を持っただけの一般女性である事も否定できない。
「女体化……なんて恐ろしいんだ」
いや、起こってしまったことはしょうがない。
今考えるべきは、今後のことだ。
この家はどうせあと数ヶ月で退去することが決まっている。しかも大家は女体化した俺のことを認識出来ないだろうから、最悪逃げれる。問題は無い。
学校に行けないのはかなり困る。何故って?...まあそれはおいおい明かされるとして。
申請した性別と異なっても入学出来るだろうか?...まあ十中八九出来ないだろうが。
他に方法を思いつかない俺は、一縷の望みをかけて電話をかける。
「はい、こちらは伊古奈特設学校です」
「四月に入学予定の明というものなんですが...」
「はい、アキラさんですね。どうされましたか?」
「えっと、その...言いずらいんですが、女になってしまいまして...」
「ああ、性別が変わったんですね。了解しました。こちらで変更しておきますのでご安心ください。」
「は?」
「用件は以上でしょうか?」
「は、はい」
「それでは、入学を心待ちにしております。」
そういうと電話が切られた。
なぜ何も聞かずに信じられたんだ。
まるで、よくあることかのように、当然の如く受け入れられたぞ。
……まあいい。女体化しても変わらず入学出来るというのなら、願ったり叶ったりだ。
幸い俺には家族も、友人もいない。
まあ、バイト先の人たちにはもう会えないかもな。
さて、問題が解決したところでやっと本題だ。
俺のこのちょーかわいい顔を見て一つ閃いたんだ。
この顔なら男も女も関係なく堕とせる。
決めたぜ、俺は
学校中の人の性癖をぶっ壊す