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序章 封印の魔女

 



 この世界には、”円環の守護者”と呼ばれる者がいる。

 守護者は歴史を正しく廻す役目として、時に国を作り、時に滅ぼし、時に傍観する。

 滅びかけた小国を救い、一夜にして大国を滅ぼす。国の王として君臨し、いつの間にか消え去っていく。物語はおとぎ話として唄われる。

 そんな世界の理の中に組み込まれた魂は、時を越えながら歴史を鑑賞していた。

 

 ──これは、そんなとある魂の、消えていく伝説の物語。





 ランタンの光が石壁を照らす。

 魔法大国であるアスカラルド王国の王城の一角、王城で働いている者も近付くことのない塔。

 地下へ続く螺旋階段を一人の男が降っていた。

 質素なローブを被り、顔を隠すようにして足早に進む男は、小さな声で呟く。

「本当に封印なんかされているのか?俺のような奴にあれほどの報酬……罠か?いや、余計なことは考えないでおこう」

 独り言を呟きながら、一番下まで階段を降りると、冷たく重い空気が男の肌を刺す。

 石造で作られたそこは、王城の煌びやかな様子とは打って変わり、まるで罪人が入れられる監獄のようだった。

 男は真っ暗闇の中を少しずつ進んでいく。

「女……?」

 長く続いた通路の先に広がる広間に出た男は、驚いたように言った。

 そこに居たのは、壁に鎖と共に繋がれた女だった。

 艶やかな銀髪に、美しい顔立ち。陶器のような肌が藍色のワンピースの隙間から誘う。

「おい、本当だったのか……。王城の地下に魔女が封印されてるってのは。……この力を手に入れられるんなら何だって出来んじゃねぇか……、ちょっとぐらいいいよな?」

 恐る恐る近づいた男の手が女の太ももに伸びた、その次の瞬間。

「がっ」

 目にも止まらぬ速さで、男の首が落ちた。

 断末魔の声を上げる暇も無いまま、何も理解することなく男は死んだ。

 飛び散った血が、女の頬に張り付く。

 ぴくりと瞼が震え、真夜中の空のような瞳が露わになった。

 女は一つ息を吐くと、自らの状況を確認するため腕を動かそうとした所で、自身が鎖に繋がれていることに気がついた。

 鎖には細かい魔法陣が施されている。魔封じの鎖だ。

 彼女はしばらく何かを思い出そうとするかのように瞬きをして、小さく呟いた。

「そうだ、封印されたんですよね。……風精」

 鎖に繋がれたまま彼女は冷静にそう呟くと、ガシャン、と鎖が落ちる音がして女を縛っていた鎖が割れた。

 力ずくではない。まるで、風か何かがするりと鍵を外したようだった。

 鈴が鳴るような軽やかな声が、くすくす、くすくすと笑う。

 彼女はその声に礼を言うと、ずっと囚われていた体を伸ばし、深呼吸をした。

 銀色の髪を靡かせながら、石廊下を進んでいく。


 そうして長い封印の果てに、魔女は再び世界に溶け込んでいった。


 


大好きなファンタジーです。

アマチュアの駄文ですが、楽しんでいただければ嬉しいです。

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