第三話 暴れ牛
元々書き溜めてあったので、どんどん投稿していきます笑。良ければリアクションくださいませ!
シンが「何でも屋」として村に定着し始めて数週間が経った。村人たちの信頼を徐々に得ていく中、彼の元に新たな依頼が舞い込んだ。
「シン、大変だ!牧場の牛が暴れて手がつけられない!」
駆け込んできたのは、牧場を営む中年の男性、ガルスだ。彼は大柄な体格をしているが、その表情には焦りが浮かんでいる。
「牛が暴れてる?どうして?」
「昨日の雷で驚いたらしくてな。そのまま興奮して暴れっぱなしなんだ。おかげで柵も壊れて、他の家畜にまで危害を加えちまってる!」
「なるほど……放っておいたら被害が広がりそうだな」
シンはガルスと共に牧場へ向かった。
牧場に到着すると、シンは目を見張った。そこには、普通の牛とは思えないような巨大な体躯の魔牛が暴れ回っていた。黒光りする体毛に鋭い角を持つその姿は、圧倒的な迫力を放っている。
「……あれが問題の牛か?」
「そうだ。ただの牛じゃない、魔牛だ。力は凄いし、突進されたらひとたまりもない!」
シンは冷静に状況を分析した。このまま力づくで押さえつけようとすれば、誰かが怪我をするのは避けられない。そこで彼は、スキル「何でも屋」を活用して知恵で解決する方法を考えることにした。
「罠を仕掛けよう。その魔牛を大人しくさせる手段を思いついた」
シンは牧場の周囲にある道具や材料を確認し始めた。古い網、丈夫なロープ、そして木材――それらを使って、魔牛を捕える罠を作ることにした。
彼が思いついたのは「転倒式の囲い」だった。魔牛が突進してくるタイミングを見計らい、ロープと木材を使って足を絡め、動きを封じる仕組みだ。
「ガルス、あの牛をこの位置まで誘導できるか?」
「少し危険だが、やってみる!」
ガルスが魔牛を引きつける間、シンは準備を整えた。網を地面に広げ、その下にロープを仕込む。そして、木材で補強した囲いを設置して待ち構えた。
「来るぞ!」
ガルスの声と共に、魔牛が突進してきた。そのスピードと迫力に、一瞬シンは息を呑む。しかし、冷静さを保ちながらタイミングを見計らうと、罠を作動させた。
「今だ!」
ロープが引かれると同時に魔牛の足元が絡まり、そのまま地面に倒れ込む。そして網が上から覆いかぶさり、魔牛の動きを完全に封じた。
「やった!」
シンとガルスは無事に魔牛を捕らえることに成功した。
その後、魔牛は牧場の専用の囲いに移され、シンの工夫で以前よりも頑丈な柵が作られた。村人たちは彼の活躍に感謝し、ますます「何でも屋」としての彼を頼りにするようになった。
「シンさん、あんたがいなかったら、どうなってたかわからねえよ!」
ガルスが心から感謝の言葉を述べる。その言葉に、シンも少し照れくさそうに笑った。
「俺ができるのは、あくまで工夫とスキルを使うことだけさ。でも、力になれて良かったよ」
その夜、シンは一日の疲れを癒しながら、新たな決意を固めていた。
「この村の人たちの役に立てるなら、もっと工夫してみよう。そして、このスキルをさらに活かせる方法を探していこう」
静かに輝く星空の下、シンの「何でも屋」としての日々は、さらに深まっていく――。




