表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/50

第二話 倒れた橋

カルマ村の朝は早い。太陽が昇る頃には、村人たちは畑や家畜の世話に取り掛かっている。シンもまた、その一員となりつつあった。


「シンさん、ちょっと!」


小屋の掃除をしていたシンに声をかけてきたのは、村の若者リークだ。額に汗をにじませ、何か焦った様子である。


「どうしたんだ?」


「村の東にある橋が壊れちまったんだ!昨日の雨で流されたらしいんだけど、あそこがないと川を渡れなくて困るんだよ!」


リークの話によれば、その橋は村人が自力で作ったもので、近くの森から木を切り出して架けていたらしい。しかし、老朽化もあって耐えられず、増水した川に流されてしまったのだという。


「このままじゃ、畑の収穫物を運ぶのも一苦労だし、他の村との交易も止まっちまう!」


「なるほどな……」シンは腕を組んで考え込む。橋を直すには、まず流された材木を回収し、新たな木材を集めなければならない。しかし、それだけでは強度の問題が解決できないだろう。


「わかった。俺に任せてくれ」


シンは早速、現場へ向かうことにした。


壊れた橋を目にしたシンは、思わずため息をついた。想像以上に大きな被害だ。橋は完全に崩壊しており、材木の一部は川下に流されている。


「これ、結構手間かかりそうだな……」


リークと他の村人たちも集まり、材木を回収しようと川に入るが、水流が強くて苦戦している様子だった。


「よし、まずは材木を確保しよう。俺が何とかする」


シンはスキル「何でも屋」を発動させる。頭に思い描いたのは、簡易的な水流を遮るためのバリケードだ。川辺に転がる大きな石や木の枝を使い、シンは手際よくそれを作り上げた。


「これで流れが少し緩くなったはずだ。さあ、今のうちに材木を引き上げよう!」


村人たちはシンの工夫に感心しながらも、一斉に材木の回収を始めた。


材木の回収が終わると、シンは次の計画に取り掛かった。単純に元通りの橋を作るだけでは、また同じように壊れてしまう可能性がある。


「強度を増すには、どうしたらいいだろう……」


頭の中で考えを巡らせた末、シンは答えを出した。「木材だけじゃなく、石を組み合わせて支柱を強化しよう」と。


彼は村人たちと協力し、森から丈夫な木を切り出し、川辺の石を集め始めた。切り出した木材を加工し、石を積み上げて橋脚を補強する。スキルを駆使して、シンは作業を効率的に進めていく。


数時間後、新しい橋が完成した。それは以前のものよりも丈夫そうで、村人たちも大満足の様子だった。


「シンさん、ありがとう!これで安心して使えるよ!」


リークが満面の笑みで感謝を述べる。シンもまた、初めてこの世界で「自分が役立った」という実感を噛みしめていた。


「大したことはしてないさ。でも、これで少しは村の役に立てたなら嬉しいよ」


「いやいや、大したことだ!あんたがいなかったら、どうにもならなかった!」


村人たちは口々にシンを称賛し、彼への信頼が一層深まった。その夜、村ではささやかな宴が開かれ、シンはその中心で祝福を受けた。


その夜、月明かりの下で一人静かに空を見上げるシンは、自分のスキルの可能性を思い描いていた。


「これからもっと色々なことができるようになりたいな……」


まだ見ぬ世界に思いを馳せながら、シンの「何でも屋」としての成長は、少しずつ始まっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ