第65話 悪夢なら
「あのー。いつまで目隠しと耳栓をしていればいいのでしょうか。」
急にあたりが光り始めた。ただ事ではないと思い、すぐに目隠しと耳栓を取った。
「ここは?」
「ああ、やっと気が付きましたか。邪魔者。」
この声は、まさか。
「なんなんだ!女神!」
「まあまあ。今は気分がとてもいいのですよ。これから面白いものが見れますから。」
は?そういえばここは結局どこなんだ。転生した時と同じような空間。だが、光の牢獄に閉じ込められている。クッソ。脱出することもできない。
「なんなんだよ。その面白いものって。」
「まあまあ。急かさないで。気分がいいから見させてあげるわ。」
目の前に二つのモニター?が現れた。まさか。
片方では、彩陽が四肢を固定させられている。これから何をされるんだ?あれは日本人?なぜ豪華な剣を持っている?もしかして勇者か?そいつは大きく振りかぶって、
「止めろーーーーー!!」
俺の悲鳴は虚しく、彩陽は殺された。そして、あの「魔王の分娩室」の最下層に転送させられ、あの半透明な紫色のハンデット飲み込まれていった。そして、何かを形作っていく。直感だがなんとなくわかる。あの存在はもう彩陽じゃない。
「あ、ああ。」
「気分がいいので少しネタバレをしましょう。彼女、朝羽蒼はまだ蘇生魔法を使えば蘇ります。ただ、彼女はこれから魔王の養分として使われます。これから魔王が誕生しますよ。なので、今後は勇者に討伐されますね。ま、やられてしまうと、もう二度と蘇生できませんが。ほんと勝手に逃がさないでくださいよ。すぐに養分にして魔王の養分にするつもりだったのに。あと、彼女が勝手に魔王だと思っていたのは見てて少し面白かったです。」
「魔王を復活させて何をしたいんだ!」
「単純なことですよ。面白いものが見たいだけです。今のあなたのように。魔王を倒せるのは勇者だけ。その勇者がバカで屑なら面白くないですか?国のトップでさえそんなバカで屑な奴にいくらムカついても頭をさげなければいけない。あーはっはっはっ。思い出しただけで面白い。」
「は?」
何なんだこいつ。何?面白い?どこが?そんなことのためだけに簡単に人の命を?
「ほら、これだけじゃありませんよ。」
そういうと、もう一つのモニターにペロが映し出された。ドラゴンに襲われている。
「逃げろーーーーー!!」
ただ、ペロの足はすべて骨折していて、移動することさえできず、ただ吠えることしかできない。
「哀れですよね。自分の両親の敵に何もできず、ただ殺されてしまうだなんて。そんな様子もまたいい。」
そう女神が言っている間にペロはドラゴンに弄ばれながら殺された。そして、骨ごとボリボリと喰われた。
「もう蘇生なんて無理ですね。あ、そうだ。面白そうなのでアンデット化させますか。」
そう言うと、ドラゴンの口から骨の破片が出てきた。次の瞬間、そこには骨のペロがいた。
「せっかくですし、魔王の配下にでもしますか。」
「もうやめてくれ、、、。」
「ふふっ。自業自得ね。いろんな人を巻き込こまなければこんな思いをしなくて済んだのに。では、最後に。竜国に魔物の軍勢をっと。あ、ペロとやらのアンデットに第二皇女を殺させましょう。喜んで死にそう。ああ、想像するだけで楽しい。」
俺の心が完全に折れた音が聞こえた気がした。ああ、悪夢ならよかった。
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※筆者のnininieeeeです。
今回は間話はありません。引き続き第五章をお楽しみください。




