ハズレ職業、あそび人
この世界は生まれてすぐ、名前と共に職業を授けられる。
私が授けられ職業は、遊び人。
私はスーと名付けられ、祖母に育てられた。
父方の祖母が、両親から引き取り育ててくれたのだ。
祖父母が裕福なお陰だった。
独り立ち出来るようにと、生きるための最低限を教えてくれたのも祖母。
そんな彼女は、私が8歳になる前に他界。
祖母を見送った後、祖父母の家を出た。
大切にしてくれたのは、祖母だけだったから。
どうせ遊び人。フラフラしているのが性に合っている。
空を屋根とし、大地を寝床とする。
そんな生活をするんだと意気込んで。
思っていたより放浪の旅って大変かも。
もっと色々、家から持ってこればよかったなぁ。
どうすべきかどこかで考えようと、向かった先は以前から気になっていた一本の大きな木。
のんびり来たから、もう日が暮れ始めてきてしまった。
木に向かい草むらを歩く。
なんか踏んだ。
バキィって大きな音共に、大きな何かを踏みつけた感じしかしない。
走って逃げた。
若干の距離を走り、木に辿り着き音を立てた方を見た。
根っこの様な物を踏んだらしい。
木って、しかも根っこってあんな音する?
しかもココ草原ですよ。
気のせいですね。
気付かなかったことにして、予定の木に到着。
木の根元で休むため座る。
「こんな遅い時間にお前さん、何してんだい? 」
「家出してきたから今後の予定立てるために、持ってきたもんの確認とか色々しようと思ってね。
ちょっと座らせてもらうよ」
「勝手にしな。って、お前さんワシの話が分かるのかい。
いや、まさかな」
自らを人と言い切った、木がまだ何かぶつぶつと続けている。
「話してる内容わかるよ。悪いけど今は疲れてるんでね。細かいことは明日にしてくんない。じゃ、おやすみ」
眠ろうとするも、木がどんどん話しかけてくるせいで眠れない。
面倒だから全てあそび人だからと言って寝てやることにした。
失敗した。
全部言わないと寝かせてくれそうにない。
仕方なく、自分が遊び人だからか人間以外と話せること。
祖母の言いつけで家を出るまで植物などと話せることを隠していたこと。
先ほど家出してきたことなどを掻い摘んで話した。
「ワシはそろそろ寿命が尽きる。お前さんワシに少し付き合え。先ほどワシの一部も破壊され、さらに時間が無くなったのだ」
「……まさか、根っこ的な? 」
「お前さんだったのか。犯人であるお前さん、名は何という」
「スー、あんたは? 」
「ワシはブレシル、名を交換しよう」
「お断り『そなたの真名をブレシルとし、今後はブレンヌスと名乗るがよい』
ブレシルが言うと、ブレンヌスの心臓辺りが光る。
「あ、もう決まっちゃった感じですかね」
「ワシからの門出のプレゼントだ。ワシはもうすぐ深い眠りにつく。ブレンヌスよ、ここはもう安全ではなくなる。明日にでも出立するが良い。さぁ、お眠り」
スーが言い終わる前に、彼女は深い眠りに落ちた。
ブレンヌスが目を覚ますと、枯れた大きな木に寄り添っていただけであった。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。