現代1
2022年1月、コロナウイルスの感染者が再び増加してきたため、またしてもニュースから「外出制限」「時短営業」などが目に映るようになった。カナデはそんなこと全く気にもせず、もう11時過ぎなのに布団の上でごろごろしていた。
「早く仕事探さないと・・・。」
数年前までアパレル店員として忙しく働いていたが、このウイルスによってようやく近づいていた本店勤務の話も流れて、辞表を出し、今は失業保険で暮らしている。
布団から起き上がり、コップに直接水道水を入れて飲んだ。最近はこういうことに抵抗がない。逆にミネラルウォーターをコンビニで買う方に抵抗ができた。
スマホからラジオアプリを起動し、物がたくさん載った机の上に載せた。ラジオを聞きながら、机の上に散乱したコスメなどを片付けて、机を広くした。昨日遊んだゲーム機の電源がついていたので、テレビをつけると、町でキャラクターが何もせずに立っていた。
「ああ、そういえば」
状況を思い出したようで、慣れた手つきでセーブをし、ゲーム機の電源を落とした。ラジオ番組では芸人が大きな声で笑っている。カナデは音楽が好きで、音楽大学まで卒業したが、ラジオはお笑い系を好んで聞いている。音楽大学を卒業しても音楽では食べられず、他の仕事についた時から、音楽への向上心が冷めてしまっている。
ボウルの中にシリアルを入れて、冷蔵庫から牛乳を出そうとしたが、昨日、全て飲み切っていたため、牛乳はなかった。
「あちゃー、まあ、いいか」
シリアルをそのまま食べ、コップの水道水で流し込んだ。急いでいるわけではないが、今は一緒に暮らしている人もいないので、面倒臭いと思ったことを不精できるのを楽しんでいる。
来月に引っ越しがあるので、部屋を整理していた。始めたばかりなので、2個の段ボールしか組み立ていない。3個目の段ボールを組み立てて、奥の方の棚に入っている物を少しずつ入れていった。
棚の中には音楽大学時代に使ったフルートやピッコロが入っていた。