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旧キ吸血姫《きゅうけつき》ノ幻想《ユメ》  作者: ろーぐ・うぃず・でびる
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第四話 夜ノハジマリ


 夜の帳に、全てが閉じきる頃。


黒い翼は、村雲を払い飛翔を続ける。


姿を見せぬ月光は、闇を切りさいて現れ――翼に力を与えていた。


欲望に蝕まれた、動悸と、渾然とした意識を紛らわして。


 しばらく飛び続けていると、漆黒の翼の主の胸から、穏やかな脈が戻る。


月光を背にして、ミラは己が内に秘められた衝動が鎮められていった。


(不便なものだな、二度目の生の為とはいえ)


 ミラが月光を十分に浴び、少しづつ翼を下ろしていく。


すると、その視界はミラにとって見慣れた風景へと変わって行った。


駈素(かるす)町はここらへんだったか……さて、降りるか)


 ミラは体を急降下させ、町の電波塔に降り立つ。


電波塔に捕まり、下へ降りるとミラの身は柵に寄りかかった。


暗闇の空を、見上げて。


 ただ、無言で――手鏡の様に丸い月に、想い人を重ねていた。


それから、数分ほど。


 ミラの瞼が閉じかかった時。


頭に、貫くような悲鳴が耳を襲った。


(やかましい………一体なんだ)


 ミラは電波塔から飛び降り、悲鳴の元へと駆ける。


声の聞こえた方角は、音の大きさからミラとそう遠く感じさせなかった。


 電波塔下、住宅の屋根を飛び越え、乗用車の速度すら超えた速度で向かう。


アンテナを蹴り飛ばし、屋根の上の鴉を払い、あるいは瓦を踏み砕いて。


辿り着いた先には――ミラの想像だにしていなかった光景が広がっていた。


(なんだ、これは!?)


 夥しいまでの死体が、鮮血に彩られ、じゅうたんの様に広がっている。


死屍累々、混沌とした人の形をしたものが、鉄の匂いをあたりに充満させていた。


その血の香に、ミラの眼前は一瞬眩む。


(ぐっ………駄目だ、駄目なのに…………)


 口許からは、抑えた欲求を示す液が零れていた。


喉が鳴り、震える牙を食いしばりミラは、鼻孔での呼吸をやめ、口から酸素を取り入れる。


空腹と渇きを、耐え凌いでいた時。


「グルルルル…………」


ミラの背後に、低く響く唸り声。


ミラが後ろを振り向くと、そこにはみすぼらしく破れ、薄汚れた衣服に身を包む男がいた。


「あの、なんですか急に」


 ミラはできうる限り、外見相応の、可憐な少女の声色で話しかける。


が、男は赤黒いよだれを垂らすばかりで、何も反応を示さなかった。


そこに、ミラは不審感を抱かざるを得ず――ミラは男の様子を首を横に傾け、あるいはかかとを上げ、見下ろす。


(なんだ、酔っ払いか何かか)


 一瞬、楽観的な考えがよぎるが、背後の骸を見て、それは一秒ともたず否定された。


「まさか貴様!」


ミラは、鋭く睨むと“その男”の顎を上へ拳を突き上げた。


 すると、鈍い音と共に男の頭は宙を舞い、首から離れる。


男の頭は、地面に着くと道路へ転がっていった。


転がっていると、対向してくる乗用車に、容易く粉砕されると道路を赤黒く染める。


 その様を見届け、ミラは男の体を蹴り飛ばした。


(さて、もしこれが“やつら”であれば………)


 ミラは、じっと正面で倒れた男の胴体を見つめる、


その後、ミラが空を見上げると月の光が、地上を照らしているのが見えた。


 再び、見下ろすと、正面の胴体は、もがいている。


正面の胴体は、頭を失いながら活動を再開せんとしていた。


「……やはりお前、生死体(グール)か!」


ミラは胴体を睨むと、胸倉を掴みあげ、上へ放りなげる。


月光に照らされ、生死体(グール)は爪を立て、下に居るミラへ反応を見せた。


 対してミラは、冷ややかな視線を向けて――。


爪を振り上げ、五枚の肉塊へと、それを変えた。


肉塊が雨の様にミラに降り注ぎ、ミラは肉塊が地に落下すると忌々し気に踏み潰す。


足首をねじり、靴が汚れる事すら厭わず。


存在すら許さぬように。


(どういうつもりだ。“奴”は一体今更何を考えている?)


 ミラは背後の死体に向くと、その死体の服に、血で何かが書かれている事に気付く。


“|Welcome to the under hell.Old redy《ようこそ、無間地獄へ。オバアサマ》”


見覚えのある文字列を解読すると、ミラはコンクリートブロックに向かって拳を放つ。


コンクリートは砕かれ、砂利の様にミラの衣服を埃で汚していった。


 埃を払うと、ミラは目を見開き、顔を歪める。


その表情は、かつてないほどの怒りに――満ちていた。

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