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戦慄のイクタベーレ ~敗退せし者達の母国奪還の軌跡~  作者: ユウキ
第九章 Cool of Minerva
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第八話 二人目の友

「あの村がそんな村だという証拠もなく、やも得なくその場を後にするしかなかった……その後、ジェリドはヤザンの意思を継ぎ騎士団に入団すると言っていた」


 そして、私は一人旅に戻ったのだ。

 話終わる頃にはディーネの表情が真っ青になっていた。それ以上にロッカのが真っ青だな。


「やはりお主らには話さない方が良かったかな?」

「……あの…も、申し訳ございません……(わたくし)のせいで、ございますね」


 震えながらロッカが言葉を発する。


「ん? 何故お主が謝る?」

「その村ってユグドラシル領でございますよね?」


 ロッカは涙目になりながら言う。

 珍しいな……ロッカがこんな感情を見せるなんて。いや私が王女としての彼女しか知らないだけか。


「そうだな?」

「領主であり王族として、そのような村を作ってしまった(わたくし)の責任ですから……」


 一滴の水滴が瞳より溢れ落ちる。


「仕方なかろう……当時の領主はお主ではなかったのだから」

「しかし聖王国ユグドラシルの責任には変わりありません」


 真面目過ぎるぞロッカ。


「ふ~」


 一呼吸。どうしたもんかな……。


「綺麗な貴女には涙は似合いませんよ。あの程度の輩に負けた俺が悪いですからお気になさらず」


 茶番だ。自分で言っておいて呆れてしまう。


「えっ!?」

「あいつが生きていたら、そう言ったと思うぞ」

「ヤザン……」


 其処に彼がいるかのようにロッカは遠くを見詰める。どうにか涙は収まったようだ。

 あの茶番が通じてくれたようだ。ほっと胸を撫でおろす。続けてなるべく優しく言葉を発する。


「……お主は何もかも気負い過ぎなのだ。辛い時は何でも良い……私にも肩の荷を背負わせろ。それが友人なのではないか? ディーネもな」


 私も随分変わった気がする。こんな言葉を……何よりなるべく優しくなんて考えて言葉を発する事なんてなかった。

 でも、何故かディーネが愛おしいく感じた。こう言ってしまえばロッカついでのよう聞こえてしまうが、ロッカは何とか言葉を発してるがディーネは先程から沈鬱な顔をしてるだけだったからだ。

 ハイマンが言っていたのはこの事だったのかな? まだよくわからなぬが、もしそうでなくても、私はこのディーネを精一杯護りたい。

 これが私の今の素直な気持ちとだと思う。だが、自分の中に迷いがあるのも事実。

 ディーネだって同じ人間。いつ裏切られるかわからない。だから、本当は此処まで深入りするべきではなかったのだ。


 それだけではない。ヤザンと同じような事になってしまったら、やり切れない想いで一杯になってしまう。

 ヤザンは所詮ただ一緒に旅する奴って認識だったのに、あんな事になって結構堪えた。失って気付く事って沢山あるけど、これも一つだ。

 そう私の中で、ただ一緒に旅をする奴ではなくなっていたのだ。一緒に旅(・・・・・)をする仲間(・・・・・)……私の中でそういう気持ちに変わっていたのかもしれない。

 そして、思わずロッカも友人と言ってしまった。本当に私はどうしてしまったのだろうか? 


「えっ!?」


 ディーネが眼を丸くする。


「……二度と三度言わせるな……私はディーネを大切な友と思っておる。だから肩の荷を少しくらい分けてくれ」


 あまり良い言葉と思えないな……かなりぶっきら棒に言ってしまったと思う。

 ディーネの瞳にも涙が浮かぶ。嬉しい涙なら、此方も嬉しく思う。


「サラ」

「気にするな」


 少しだけ笑みを見せた。


「サラだーい好きっ!!」


 ディーネは急に立ち上がり抱きついてこようとしてきた。しかし彼女と私の間には……。


「ば、バカ! そんな事をすれば……」


 止めに入る。


 パリーンっ! 


 だが間に合わない。三つのカップが綺麗な音色を奏で割れてしまった。私が飲んでいたコーヒーとロッカとディーネが飲んで紅茶のカップがテーブルから落ちたのだ。


「全く……仕方無い奴だ。さっさと片付けるぞ」


 私は苦笑を浮かべ、後片付けを始めた。


「ごめんなさい……」


 ディーネも片付けをし出す。

 ふと先程から黙っているロッカを見ると、気丈に振る舞っていたのに呆然とボロボロ泣いている。


「えっ!?」

「ロッカ様?」


 ディーネも異変に気付いたようなだ。


「あ、(わたくし)とした事が申し訳ございません」


 ハンカチを取り出し顔を拭って言った。


「ロッカ様、如何なさいました?」

「サラっ! 怒りますよ?」


 いや、もう怒ってるだろ。何なんだ? 一体。


「先程やっと友人と言ってくださいましたのに、また他人行儀でございますか?」


 あ、それか。つい口走っただけなんだけどな。まあ良いか。


「それは失礼」

(わたくし)は、大陸を背負って立つ身。友人など出来ぬと思っておりました。先程の言葉は本当でしょうか? (わたくし)を友人と思ってくださるのですか?」

「ああ、ロッカも友だ」

「感謝致しますわ。それにあのようなお優しいお言葉……ディーネは良き友人を見付けましたね」

「はい」

(わたくし)は……(わたくし)は……」


 またボロボロ泣き始めてしまった。余程肩に重い物を乗せていたのだな。

 当然か……大陸を背負って立つ身と本人も言っていたが、それはかなりの重責なのだろう。

 普段大人びて見えて、気丈に振る舞っており、元服はしていても、まだまだ見た目的には少女なのだから。

 私は黙って席を立ち、ロッカの横に立ち、彼女の肩に手を置いた。何故か自然とそうしてしまった。


「……サラ」


 ロッカは、私に抱き着いて来た。


「ぅうう……」


 そして泣き続ける。


「張り詰めていらしゃっていたから……」


 ディーネもいつの間にかロッカの横に移動し、彼女の肩に手を乗せ呟く。


「そうなのか?」

「戦争が起きる前は、もっと子供っぽいとこあったわよ。サラは凄いよね……私だけでなくロッカ様にも、こうしてしまうのだから」


 自分では良くわからぬ。

 そして、しばらくロッカは泣き続けていた。


「ふふふ……(わたくし)とした事が、お恥ずかしいとこを」


 扇子を口元に当て再び優雅に微笑む。


『キュア』


 ディーネがロッカの張れた目元を癒している。


「感謝致しますわディーネ」

「……それ止めないか? ロッカ」

「何がですか? サラ」

「私を友と思うのなら、その振る舞いを」

「あらあら……(わたくし)のこれは、ディーネと違いの普段の振る舞いですわ」

「ロッカ様っ!」


 すかさずディーネが抗議の声を上げる。


「距離を作っているのはロッカ自身だ」

「えっ!?」


 ロッカが眼を丸くした。


「さっき見たいにもっと心の内を見せて良いのではないか?」

「そう……なのかもしれませんね。では(わたくし)なりにサラに歩み寄って行こうと思います」


 私も何を言ってるのだ? 最近の私はどうもわからん。

 心を氷で閉ざしてる私が、人に説教して良い事ではないだろ。


「あ、サラ…結構な時間経ってるよ」


 ディーネが焦ったように言う。

 話し込んでいるうちにどうやら正午を向かえていたようだ。日の出くらいからディーネと朝食を取り始め、途中からロッカも加わり、どうやら随分長話をしていたようだな。


「そうだな。では私は見張りがあるからこれで」

「いろいろありがとうねサラ」

「感謝いた……いえ、ありがとうございますサラ」


 ロッカなりに距離を縮めようとしてるのかな? 


「気にするな。ディーネとロッカはこれからどうするんだ?」

「私達はセイランローヌ王女の回診をしに行くわ」

「そうか…ではまた」

「うん…またね」

「では、失礼致しますわ」


 私はテラスを後にした。アルス王子に正午より屋上からの見張りを命じられていたのだ。







 ・・・・・・・・・・・・


「交代だ」


 屋上で見張りをしていたエルクに声を掛けた。


「ん? ああ……もうそんな時間か。では宜しく」

「ああ」


 エルクは下がり、彼が立っていた場所に私が立つ。これから深夜まで見張りだ。それまで退屈だな。統率の取れた軍に所属してしまったのだ、仕方無い。


「なぁ…ちょっと良いか?」

「ん?」


 私は振り返る。


「まだいたのか? 何だ?」


 後ろには、エルクがまだ残っていた。


「ティアって知っているか?」

「白き剣を扱う扱う女剣士か? 直接対峙はないが話は聞いている」


 確かこのエルクの幼馴染で、敵として再会したと聞いている。


「そのティアなんだが……どうすれば正気に戻ると思う?」


 何故私にそんな事を聞く? わかるわけなかろう。余程その女が心配なのか。まあもしそれがディーネなら私は同じ気持ちだったかもしれない。

 いやバカらしい。敵として現れたなら倒すのみ。余計の情は判断を鈍らす。確にディーネは友と思えるが、敵に回るなら……いや私は何を考えているのだ? 

 わからぬ。自分がわからぬ。人は立場によって敵にも味方にもなる。そんな事はわかっている。でもディーネは……。

 わからぬ。もう何がなんだか……。

 私の心は疾うの昔に凍結した筈。だというの何故揺さぶられる? 一体私はどうしてしまったのだ? 


「顔色悪いがどうかしたか?」


 考え込んでいる中、急に声を掛けられた


「えっ!?」

「えっ!? じゃない……真っ青だぞ」


 青い? そんな顔しているか? 確に心拍数が上がっている。心臓がバクバクしているのが、はっきりわかる。


「いや…なんでもない。それよりティアだったな?」


 どうにか気持を落ち着かせ言葉を発した。


「ああ……って本当に大丈夫か?」

「気にするな……正気に戻すには、やはり術者をどうにかするしかないのでは?」

「やっぱあの魔導士をどうにかしなきゃならないか……どうもありがとう。じゃ」


 エルクは右手挙げ踵を返した。


「ああ」



 ・

 ・・

 ・・・



 見張りを始めてから随分時間が経過していた。もう日が沈み、あたり静寂が支配する闇と化していた。

 その時、前方に500m付近を飛ぶ影が見えた。


「ん?」


 眼を凝らす。私は眼には自信がある。見ようとすれば、あの影が何なんか簡単にわかる。


「んっ!? ディーネ?」


 鳥に掴まれたディーネが確に前方にいる。いやあれは鳥じゃない。


「なっ!? 何なんだ、あのバケモノ(・・・・)はっ!?」

第九章はOne dayで抜粋したので大分短くなってしまいました

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