第一話 氷で閉ざす
この章は最後まで基本サラ視点です(ほんの一部だけ違いますけど)
サラ専用の章があったり、サイドストーリーの<アーク・ザ・ストーリー>でサラを主要キャラにしたりと、サラが気に入ってるから、という事はありません(笑)
状況的に扱いやすかったってだけです(爆)
それと申し訳ございません
One day③ それぞれの研鑽のリビティナvsミクにおいてジャイロの口調が違う事に気付きました
修正しております
口調を丁寧語に訂正しただけなので物語には全く関係ありません
暗い。暗い。暗い闇の中。
視界がボヤけていく。
不吉な合唱が耳を刺激している。
服は汗と泥でベトベトで身体に張り付く。
だが嫌悪感はない。
口の中も泥の味で溢れる。
でも嫌悪感はない。
全ての感覚が鋭くなっている。
何故自分が此処にいるのかわからない。
自分が誰なのかもわからない。
何故倒れているのかもわからない。
わかっている事は、もう長くない事。
燃え尽きる閃光のように最後はより一層鮮やかに燃え上がる。
感覚が鋭くなってるのは、つまりそういう事だと思う……。
これが私の最初の記憶だ
◆◇◆◇◆◇◆
夢を見た。どんな夢だったか覚えてない。でも、あまり良い夢ではなかった気がする。
「あ~……最悪な眼覚めだ」
酷い寝汗を掻いてる。シーツもびっしょりだ。こんな事がたまにある。
あの事を思い出すから気分が悪い。汗を掻いたままでは気持ち悪いので、軽くシャワーを浴びてから部屋を後にする事にした。
私の名前はサラ。本当の名は知らない。昔、孤児院のライラ院長に名付けられた名だ。
別に変えるつもりはないので、そのままそう名乗っている。冒険家を生業している。スリルを楽しむのが生き甲斐だ。
現在はイクタベーレの王子が率いる解放軍に所属。旅はあの時期を除いて私一人が常だ。そんな私が解放軍に参加したのは理由がある。それは……。
「よーサラ!おはよう」
後ろから声を掛けられた。朝っぱらから陽気な声だ。
「ああ!おはよう」
一応振り返って返事した。後ろに立っていたのはジェリドだ。昔一緒に旅をした事がある。
「こんな早く起きて大丈夫か?昼から深夜まで見張りだろ?」
テンションが高い。朝っぱらから鬱陶しい。
ちなみに今は日が登り始めている時間帯だ。
「ああ」
「にしてもお前変わったな」
「何?」
何を戯けた事を。
「気付いてないのか?朝の挨拶をした時、口元が揺るでいたぜ」
「なっ!」
私がそんな事をっ!?思わず口元を抑える。
「ははは……やっぱ気付いてなかったのか」
「いや…違う!社交事例だ」
思わず言い訳をしてしまった。
「あっ?まぁ良いや。お前がそう言うなら、そういう事にしてやるよ……でも、その社交事例って奴ですら、昔のお前は、してなかっただろ?氷の女神さん」
「ぬぅっ!お主はイチイチ引っかかる事を言う奴だな昔っから」
「それが俺の性分だからな……んじゃ俺はロッカ様に用事があるから」
そのまま私の横を通っていった。そういえばあいつに再会した時も変わったって言われたな。あいつは昔っから洞察力に優れている奴だ。
そうヤザンと大違い。
くっ!
……また嫌な事を思い出してしまった。思わず首をブルブル横に振ってしまう。
さっ!頭を切り替えるぞ。
テラスに足を運ぶと彼女にバッタリ出会った。
「あっ!サラぁ…おはよー♪」
やたらテンション高い。
「ああ…おはよディーネ」
私も朝の挨拶をした。今度は自分でもわかるくらい、にこやか言った。
彼女は特別な存在だから―――。
彼女の名はユリアン=ディーネ=タルミッタ。要は、タルミッタの王女ディーネ。
タルミッタと言えば、聖王国ユグドラシル王家の分家で大陸に必要な資源を採掘し、香辛料の栽培を管理している。
其処の王女だから、特別に思っているなんて事では決してない。
初めて出会った時、マンデなどと偽名は名乗るわ、やたらつっかかってくるわ、常にキレてるんだか、それが素なのかよくわからぬ奴だった。
でもそんな奴でも、私が友と思うただ一人の人間なのだ。そう唯一<友>と思える……。
それは一緒に旅をしたジェリドやあいつには決して抱かなかった感情だ―――。
「ねぇサラ?朝食摂った?」
「まだだ」
「じゃ一緒に摂ろう」
「ああ」
テラスにあるテーブルに向かい合って座る。お互いサンドウィッチを食べる事に。というかそれしかない。
統率の取れた軍隊だから仕方ない。だが、飲料は多少自由である。コーヒー、ティー、果実水の中から選べる。
ディーネはティーを。私はコーヒーを選んだ。
「そういえば暴動があまり起きないな」
サンドウィッチを食べながら話をした。
「ん……アルス様がその後の処理を確りなさってるからね。ロッカ様もお手伝いしてるようだし」
ディーネは口の中のサンドウィッチを飲み込んでから返してきた。
「ふ~ん」
此処シャルスは元イクタベーレの同盟国。そういった間柄からなのか、話し合いで終わらせたかったらしい。
だが不慮の事故からジキルス国王陛下を亡くなってしまい、結果的にはシャルスを侵略し、乗っ取った事になった。
となると、暴動が起きてもおかしくないのだ。だが、どうやら王子がちゃんと後処理をしてるようである。よくもまぁあんな状態で……。
「その為に部屋に籠りっぱなし。お陰で全く相手してくれないのよっ!……プンプン」
久々に見たなディーネのツンツン。思わず苦笑。
「何笑ってんのよーっ!!」
「お主が綺麗だから」
からかってみた。
「やだぁサラったぁ」
今度はデレデレモード。最初何なんだコイツなんて思ったけど、慣れてくると実に面白い。
ほんと変わった王女だと思う。ツンツンしたり、デレデレしたり、表情がくるくる変わる。
それでいて王女という立場を振りかざない。何処の馬の骨かも、わからぬ私に良く接してくれる。
いや、私だけではなく誰にでも分け隔たりなく接する。王女には見えない。けれど時には、王女という立場を全うする場合もある。
私は、そんなディーネを気に入ってる。
「ねぇサラ?」
デレデレしていたのに急に真顔になる。サンドウィッチはもうなく、ティー飲んでいた。
「ん?」
私もサンドウィッチは食べ終わり、コーヒーを飲みながら返事をした。
「変わったね」
また言われた。今日は二回目だ。
「そうか?」
「うん変わった……最初会った時なんか無愛想で眉間にシワを寄せてばかりだったよ」
眉間にシワを寄せていたのは、お主の態度がくるくる変わるからだよと胸中ごちる。
「よくわからぬが、今はディーネの事を友と思っておる。だから、お主だけ特別だ」
「ありがとう……でもサラは皆に対しても同じよ。自分で気付いてないだけ」
「……そんな事はない」
即答できなかった。私はあの時から心を氷で閉ざしている。だからあいつに氷の女神などとふざけた名を付けられたんだ。
「あーサラは私の言う事が信じれないって言うのーっ!?」
またツンツンが始まった。
「そ、そんな事はない」
とりあえず弁解。
「ねぇサラ?」
また真顔に。ほんとくるくる変わる。
「昔の話を聞かせて♪」
「はっ?」
コーヒーのカップを手に持ったまま固まった。何を脈絡のない事を。しかも満面な笑みで。
「だからぁ…サラの生まれや育ちとか」
「良いが、つまらぬぞ」
「うん…良いよ。サラの事をもっと知りたい♪」
「わかった……私はとある施設で育った……」
私はコーヒーで口を湿らせ遠い過去の話を語り出した……。
―――――
「んん……」
「あっ!眼が覚めた?」
知らない女の人が私の顔を覗き込む。
「此処は?」
……何処?
「此処はアノス村の孤児院よ」
「孤児院?」
何故そんなところに?
「そう…貴女は森に倒れていたの……覚えている?」
「……いや」
「そう…じゃあ、お父さんやお母さんは?」
「………」
「そう……」
女の人が困った顔をする。
「それじゃあ……名前は?」
「………」
「名前もわからないのは困るわね」
「別に困らない」
「私が困るっ!!」
おい!あんたがかよ。
「呼ぶ時に困るじゃない……じゃあ私が付けて上げる」
どうやらこの女の人は、この孤児院の院長で名前はライラというらしい。
そのライラ院長が私の名前を付けると言ってから、散々悩んだ挙句、髪がサラサラしているからという理由からサラと名付けてきた。
まったく安易だ。こうして私はサラと名乗り、此処での生活が始まる。
私は前での生活の記憶はない。覚えているのは、森の中で倒れていた事。恐らく両親に捨てられたのだろう。
と言っても、そう考えるようになったのは、三年後の私だ。何故なら、この時は見た目的に二歳くらいだったから、そこまで頭が回らない。
此処での生活は、はっきり言ってつまらない。というか人の醜い事しか眼に入らない。
ある時は、ある子が同じ施設の子に何かを頼んでいた。頼まれた方は……。
「良いよ」
って快く返したのに関わらず、その頼みに応えて上げてなかった。そうやって平気で裏切るのだ。勿論、それは私に振り掛かる事もあった。
ある時は、「○○さんは一番の友達だー」とか言ってたクセに状況が変わると、その子をイジメ始める。
私には、人の嫌なモノしか見えていなかった。村人もそうだ。ある商人は人によって値段を吊り上げる、足元を見る。
主婦達の井戸端会議では人の悪口ばかり、そのクセ本人の前では媚び諂っていたり。
こんなものばかり見えていつからか、物事をマイナスに見る事が多くなった。
だから、両親に捨てられたんだ、と考えるようになったのだ。
気付くと私は孤立していった。他人とは、あまり関わらないようにし出した。そう私は心を氷で閉ざした―――。
六年くらいに経つと私には誰も近寄らなくなっていた。施設の人だけではない、アノス村の村人全員だ。
新しく孤児院に入った一歳や二歳の子供まで近寄って来ない有り様である。
全く以て気にしない。それ所か、こう都合だ。
それはさておき施設の食事は年々貧しくなって行った。不満を言う子供もいた。それだけではない、気付くと施設はライラ院長一人になっていた。
施設には常に二十人は孤児の子がいる。はっきり言って一人で見れる数ではない。ライラ院長は日に日に窶れていくのがわかる。
何故こんな状況になったのかわからなかった。だが、此処に来て六年くらい経ってやっと色々と事がわかるようになった。お陰で気付けた。金が無いのだ。
ライラ院長と偉そうな格好した人が話しているのをたまに見掛ける。
「お願いです。これでは食うのも、ままなりません。もう少し……もう少しだけ」
ライラ院長が泣き付く。
「うるさいっ!!これが限界だ!これ以上は1Gも出せん」
偉そうな格好の人が怒鳴る。施設は寄付金によって成り立っている。その寄付金が年々減らされていたのだ。
孤児を引き取ったからって利益がでるわけではない。寄付金がでない限りには、施設は回らないのだ。
ある日、ライラ院長はしつこく偉そうな格好の人に食い付いた。それだけ切迫詰まっていたのだろう。その時に信じられない言葉が出てきた……。
「サラっつーガキが気に食わないだよ」
えっ!?私?
心あたりあり過ぎるかも。苦笑してしまった。
「なっ……さ、サラが気に食わないって……」
ライラ院長は言葉に詰まる。
「仮にサラが気に食わないとしても、他の子は関係ありません」
となんとか返す。更に……。
「それにサラは、態度悪いかもしれません。しかし、人に迷惑をかけるような事を決してする子ではありません」
と言葉を繋ぐ。私のフォローをしてくれた。そういえば、私に誰も近寄らなくなってもライラ院長だけは違ったな……。
ふとそんな事を思った。私もライラ院長だけには心を許していた気がする。
「何を言おうがダメだ!村のもんは皆、あのガキを嫌がってるんだっ!!」
要は私がいるから悪いみたいね。
「そこを何とかお願いします」
「うるせぇー!好い加減しろ」
パシーンっ!
あ、ライラ院長が平手打ちされた。
―――――
ディーネは唖然としていた。
「やはり、つまらなかったな。この話は止めよう」
私は話を打ち切りにしようとした。
「……ごめんなさい」
「ん?何故お主が謝るのだ」
「あまり言いたくない話でしょう?」
「まぁ…人に聞かせるような話ではないな」
「だから…ごめんなさい」
「別に謝らなくて良い。つまらない話をした私が悪かったのだから」
「いや、違うの!つまらなくなんてないっ!!……ただ……ただ……」
今にも泣きそうだ。
「お主は優しいな」
率直にそう思った。
「あのね……本音を言うともっと聞きたい……サラの事をもっと知りたい。でもね……え~っと……」
言葉が見つからないらしい。
「実を言うと、お主には聞いてもらいたいと思っておる……お主にはもっと知ってもらいたいと思っておる」
思っている事が、そのまま口に出てしまった。
「ほんと?」
「ああ」
「じゃあお願い……でも辛くなったら、いつでも止めて良いからね」
「ああ……だが、その前に」
「?」
「コーヒーおかわりしてくる」
「はー」
肩から崩れる。緊張が切れたようだ。
「……じゃ、私も♪」
それで良いディーネ。肩肘張って聞いてもらいたくないからな。
「それで、どうしたの?」
ディーネは新しく注いだティーで口を湿らし訊いてきた。私も新しく注いできたコーヒーで口を湿らせて話始める。
「村を出た」
簡素に話した。
「えっ!?でも、まだ見た目的に八歳辺りなんでしょう?ってあれ?そう言えば、私サラの年齢聞いた事ないよね?」
「知らぬからな」
「そっか孤児だったもんね」
「偏見の眼で見ぬのか?」
あ、しまった。
ディーネの眼尻がどんどん吊り上がってる。
いつものツンツン以上だ。
「……本気で言ってる?」
声に怒気が孕んでる。
「いや……すまむ」
「私は……私が今更そんなくだらい事でサラを色眼鏡で見るわけないでしょう」
あ、泣き出してしまった。
「すまむ」
「……違うでしょう?」
泣きながら怒気を孕んでる。
「はい?」
「こういう時はありがとうって言ってくれた方が嬉しいのよ」
普段というか昔から言って来なかった言葉だから慣れておらぬのだ。
「ありがとう」
「うん」
泣きながら今度は笑った。でも眼を直ぐに反らす。
ん?感だがディーネも何か隠してるな。後ろめたいという感じに見える。
まあ今更何を知ったとこで私も変わらぬのだがな。
「じゃあ続けるぞ。正確には八歳くらいの時に出る決意をした。で、一年後それを実行した……」
この章に登場するキャラの名前は、ギャグで考えました(笑)
サラとジェリドって名前が既にアレの名前なので統一しました




