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戦慄のイクタベーレ ~敗退せし者達の母国奪還の軌跡~  作者: ユウキ
One day③ それぞれの研鑽
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ジェリドvsミク

 ジェリドとミクの戦いが始まった瞬間、物凄い速さで弓を連射し出した。


「す、凄い」


 リビティナは唖然と見ていた。

 それもその筈、連射を行なっているのは、ジェリドだけ。ミクは応戦で精一杯。飛んでくる矢を躱したり、時には剣で斬ったり、チカと分離したりと、巧みに躱す。

 だが攻撃の隙が貰えず、逃げ回るのが精一杯なのだ。


「バードを単純に倒すなら、これで充分だ……」


 ジェリドは矢を放ちながら、話始めた。


「いくら心が通じ合った相棒がいても、体力が尽きれば終わりだ」

「確に」


 リビティナが感心する。


「だが、このやり方には三つ弱点がある……」


 まだ連射を止めずに話を続ける。


「これはお前には無理だ……お前の連射最大数は?」

「五連が精一杯です」

「これは永久連射ができる者だけの技だ。次に一対一の時にしか使えない」

「なるほど」

「そう…同じ奴ばかり相手にしていては、他の敵の餌食になるからな」


 まだ矢の連射を止めない。話をしながら良くこんな事がとリビティナは思った。


「そして、最大の弱点は……ミク何だと思う?」


 ジェリドは上空に向かって問い掛けた。


「え?矢に限りがあるね」


 ミクはミクで応戦しながら平然と答える。


「そう…矢には制限があるからな」


 ジェリドがそう言うと弓を降ろした。

 リビティナがジェリドの持つ矢筒に眼をやり、13本しか入っていない事に気付く。

 つまり、あと13本で決めなくてはならないのだ。


「よし、じゃあ今度はこっちの番だねー♪」


 ミクは矢の連射された時にチカに肩を捕まれ、飛んでいる形になっていた。また手は剣のままだ。


「チカ!」

「ピ-ィ」


 相棒の名前を呼ぶとミクが落下してきた。肩を掴んだ足を離して貰ったのだ。着地と同時に剣を振り。続けざま更に振り続けた。


「はぁぁはっ!」


 だが全て躱される。また躱しながら、矢を一本取り出し、ミクに突き刺す。間合いから言って、これは完全に入ったと思いきやミクは右手で剣、左手でチカの足を掴み上昇。

 しかし、ジェリドに背中を見せていた。その隙を彼が見逃さない。先程突き刺そうとした一本を弓に装填し放った。残り12本。

 その一本も虚しく空を切る。狙ったのか、それともたまたまなだったのか……チカの足を掴んだミクは逆上がりの要領で、チカの真上へ、そして股がるように座った。

 矢はミクが先程までいたチカの真下を通過して行った。そしてチカに股がった瞬間、チカは右旋回をして、ミクは剣から弓へと持ち替えた。

 その持ち替えのスピードは一秒に満たない程速い。更にミクは弓に持ち替えた瞬間、四連射した。


(あれは……)


 胸中呟いたリビティナは気付いた。あの矢は逃げ道(・・・)を無くすものだという事に……。

 ジェリドも矢の軌道くらい読める。無駄には躱さないだろうとリビティナが予測した。


「っ!?」


 だが、半身を右にずらしながら一本放った。残り11本。それにリビティナは驚いた。


 ヒューン……カツンっ!


 ミクの矢を1本だけ弾く。その後、ミクが急降下・急接近。いつの間にか手には槍がある。ジェリドは左に一歩ずれる。


 シュ~っ!


 一筋の風が走る。ジェリドの手には確り弓があった。ミクが放った矢は前後右に刺さり、左に刺さる筈だった矢はジェリドに弾かれていたのだ。ジェリドは、こうなるのを予測していた。

 ジェリドは振り返った瞬間矢を放った。


「えっ!?」


 リビティナがまた驚く。人差し指と中指の間に一本、中指と薬指の間に一本、薬指と小指の間に一本、計三本同時に矢を放ったのだ。

 それだけではない、ミクの位置を目視する前に放った。だというのに矢は正確にミクを捉えている。


「やる~」


 と言いつつ横一文字に並んだ矢を、ミクは更に上昇する事で躱した。これで矢は八本。

 しかし、第二波がやってきた。次の矢は縦一文字。


「げっ!!」


 慌てた声を上げ、右旋回する事で躱した。


「ふ~あぶないあぶない」


 そして、ジェリドを見るとあの三本射ちをし、続けざまに二本射ちという二連射していた。それだけではない、二連射目を強く射つ事で、最初に射った矢に追い付かせミクの所で全て並ぶようにしていた。

 単発の連射でも、このように標的に同時に当てるなど難しい荒業。だというのにジェリドは三本射ちと二本射ちの連射で、やってのけたのだ。

 流石は大陸一の弓騎士といったところだろう。リビティナは、もう違う世界のレベルに呆然とするしかなかった。

 ミクの前に五本の矢が同時にくる。最初の横一文字に上下を加え、十字を描いていた。


「こんなの無理ーっ!」


そう左か右に旋回して避ける事は出来ないし、上昇下降も不可能。

 加えて上昇下降がダメなのでは分離なんて以ての外だ。そしてミクは矢に当たる覚悟をした。

 下手に避けるとチカに当たる恐れがあるからだ。彼女に取ってチカは大切な相棒。その相棒が傷付くのは見たくない。だが、それはチカも同じなのだ……。


「ピーィ」


 ブスっ!


「えっ!?チカ?チカー!」


 上空でミクが叫ぶ。

 ミクは十字を描いた矢の真ん中のに当たるつもりでいた。しかし、チカが急下降。下段の矢にミクを庇うようにチカに当たる。矢は羽根を貫いていた。


 ヒューン……ドーンっ!


 そのまま落下。


「チカ!大丈夫っ!?」


 地上に落ちたミクが叫ぶ。


「おい!大丈夫か?」


 その場にジェリドが走って来た。

 リビティナが後に続いている。ミクは念入りに羽根の状態を見た。


「う~ん!大丈夫かな……応急処置をして、後でディーネ様に回復魔法かけて貰うか」


 とミク。


「悪りぃ……やり過ぎた」

「良いって良いって……それよりジェリドには、やっぱり敵わなかったなぁ」


 ミクが苦笑を浮かべる。


「お前が本気を出していれば、殺られていたのはこっちだったかもな」

「それはお互い様♪」

「えっ!?えっ!?二人共、あれで加減してたのですか?」


 リビティナが驚く。


「まぁ模範戦だからねぇ」


 ミクが答える。


「というかミクさんは謙遜し過ぎですよ。あれだけ強いのに弱いだなんて」

「あははは……ほんと弱いんだってばぁ」


 再び苦笑。


「確に弱いな……」


 ジェリドがポツリ。


「えっ!?」


 それにミクは平然としているがリビティナが反応した。


「ミク、お前の剣や槍は、ホリンやサラのそれと比べたら赤子同然だろ?」

「まぁね♪」


 あっさり認める。


「弓もリビティナの半分にも満たない」

「まぁね♪」

「それは嘘ですよ……かなり鋭かったです」


 すかさずリビティナが反論。


「それはスピードが、そう錯覚させてるんだ」


 ジェリドが説明する。


「チカさんとの連携ですか?」

「それもある。大鳥との連携は完璧だ。だが、それだけではない、武器の切り替えがピカイチだった」


 ジェリドは冷静に分析していた。


「……お前、武器を使いこなす鍛錬より、切り替えの方の鍛錬を多くやっていただろ?」


「あははは……バレちった」


 舌を出し苦笑いを浮かべる。


「そういう事だったのですか」


 リビティナが納得した。


「それに、ミクの使用武器三つ……俺達みたいに一つを極めようとしてるわけじゃないからな」

「なるほど」

「だから弱いって言ったのよ」


 ミクが繋ぐ。


「そんな事も見極められないようじゃ弓兵としてまだまだな」

「……すみません」


 リビティナは頭を垂れる。


「ま、良いさ。それより、俺に付き合え」

「わかりました」

「っとその前に俺達は行くが良いか?なんならディーネ様呼んでこようか?」

「大丈夫大丈夫。お構いなく」


 そうしてジェリドとリビティナはその場を後にした。

 一人残ったミクはチカの応急手当を行う。


「ふ~…終わった」


 応急手当が終わると額の汗を拭う。

 その後、チカの羽根を撫で始めた。普段は白く輝く美しい羽根だ。しかし、今は赤く染まっている。

 応急処置が施されたとは言え、羽根の上に巻いた包帯に血が染み付く程に重症のようだ。


「あれ?ミクじゃねぇか」


 其処にイスカがやって来た。


「あっ、イスカ様……おはようございます」


 頭を垂れるミク。


「だから、その呼び方止めろと言ってんだろっ!!」

「あははは……セイラ様の幼馴染を呼び捨てになどできませんよ」


 ミクはから笑いをしながら答えた。


「あいつは王族、俺様は一般人だって何度言わせるんだっ!!」

「すみませんクセで。あははは……」

「敬語も止めやがれ、燃やすぞコラ!で、何やってんだ?」

「チカが羽根を痛めましたので休ませているのです」

「ふ~ん」


 興味無さそうに返して来た。


「イスカ様は?」


 ミクも訊き返す。


「見回りだ。まあもう終えるがな」

「アルス様にコキ使われているのですね」

「ちげぇーよ!あいつは、俺に何も命令してこねぇ……」


 遠くを見詰めるような眼差しで返して来た。


「えっ!?」

「大方、どっかの大ボケと一緒でセイラの幼馴染っつー事で、気ー使ってんだろ」

「あははは……耳が痛いっす」


 ミクは反省している様子もなく、ヘラヘラ笑っていた。


「それでなんだ……その…自主的に見回りをしていたってわけで」


 顔を赤くに染める。それを隠すかのように、そっぽを向き、人差し指で頬を掻いていた。


「流石、セイラ様の幼馴染っス……尊敬します」


 ミクが敬礼をする。


「うるせーっ!!燃やすぞコラ!それより待ってな……回復できる奴を連れてくる」

「そんな……イスカ様にご足労かけられないですよ」


 慌てて両手をブラブラ振りだす。


「その呼び方と敬語止めろっつってんだろっ!!」


 そう言って走り去って行った。


「あ……行っちゃったよ」


 しばらくするとラクームがやって来る。


「おっ!いなはった」


 相変わらず変わった口調をし、商人ならではの揉み手をしていた。また眼を細くしている。


「あっ!ラクーム……も~かりまっか♪」

「ぼちぼちでんな」


 意味のわからない会話を交わす。


「いなはったって……あたしを探していたの?」


 ミクは怪訝そうに首を傾げた。


「そや」

「あたしに何か用?」

「何ゆーてはります?アンはんがワテによーがあるんやろ?イスカはんから聞いているでぇ」

「えっ!?イスカ様からって……」


 ミクの言葉を最後まで聞かず、チカの傍まで行った。そして、一瞬だけ瞼を開く。


「これは酷いなぁ」


 チカの羽根を見てそう言った。


「矢が貫通したからね。あははは……」


 またカラ笑い。


「ほな行きまっせぇ」

「えっ!?」


『精霊の名において癒水にて邪を流し賜えー』


「えっ!?まさか……」


 ミクが驚く。


『ヒールっ!』


 シュイィィン!


 水系中級回復魔法(ヒール)でチカの傷が見る見る癒えていった。


「回復魔法なんて使えたんだ」


 ミクが感心する。


「ワテがいつ使えないと言いはりまった?」

「いや~水系しか使えないって聞いていたから……あははは……」


 再びカラ笑い。


「何ゆーてはります?これ水系の回復魔法でっせぇ」

「そんなのあるんだ」


 知らなくて当然だ。ミクは魔導を学んだ事がないのだから……。


「まだ完治したわけではあらへん。しばらく無茶させたらアカンでぇ」


 ラクームがチカの傷の具合を見ながら言って来た。


「わ-たでぇ……ラクームはんおおきになぁ」


 ミクはラクーム口調で返し、頭を垂れる。


「ええって……そげんこつより、ワテのマネせんといてー」

「は~い♪」


 手を挙げて返すが反省の色無し。


「ワテはもう行くでぇ。搬入のチェっクがまだ残っとるんやぁ」


 ラクームは解放軍の全ての武具の管理をしているのだ。


「うん…忙しい所ありがとうね」


 満面な笑みを浮かべるミク。


「ほなさいなら」

「ばっはは~い♪」

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