第九話 貴女達は誰に仕えていたの?
リオンは眼を瞑ったまま静かに語る。
「そう……今まさにシャルスは変わろうとしている。あのアルスエード王子なら、きっとシャルスをより良きものに変えてくれるだろう……」
「そ、それじゃあ」
沈んでいたユアンが綻ぶ。
「共に行こうぞユアンっ!」
大きく眼を見開き力強く発した。
「ええっ!」
ユアンもそれに満面の笑みで応える。
「俺は、シャルスの騎士として反乱軍……いや解放軍に加わるっ!!」
「だ、団長?」
「ホントっすか?」
シャルス騎士団の兵達が騒めき出す。
「無理にとは言わん、俺と共に行かぬか?」
リオンは兵達に呼び掛けた。
「はいっ!」
「団長に着いて行きます」
大半の兵達は、解放軍に加わる事を了承していった。
「我が心に一辺の迷い無しっ!我等の力、示すぞっ!!」
リオンは力一杯叫ぶ。
「「「「「「「「「「おおっ!」」」」」」」」」」
兵達も地面が揺れんばかに力一杯それに応えた。
「おいっ!」
そんな中、ホリンが何かを放り投げてきた。
「っ!?」
リオンはそれを受け取る。
「こっちにくるなら、それ必要だろ?」
「ああっ!」
ホリンが投げたのはリオン愛用の真紅の斧だ。彼はそれを力強く握った。
「にしても、まさかシャルスの騎士団長がお前さんのコレだったとはな」
ホリンはニカニカ笑いながらユアンに向けて親指を立てた。
「いいえ」
だが首を横に振りあっさり否定。
「あ~ん?」
「彼は私の兄です」
そうこの二人は兄妹だったのだ。ホリンは一瞬面食らう。
「へっ!そうかい」
「シャルスの騎士よ!見たところ皆、負傷しているな……後方に下がり速やかに治療を受けてくれ」
ジャイロが叫んだ。
ジェリドに二度吹き飛ばされたのだ。無傷とはいかない。
しかし、これは実は口実だった。全シャルス兵が寝返ったわけではない。敵味方の分別を確りする為だった。
ほどなくして、シャルスの城に残った敵兵は、わずか十名。二十名以上の兵が寝返ってきたのだ。
そして、残った十名が一瞬で片付いたのは言うまでもないだろう……。
「城には、まだ沢山の兵がいる……先行したアルスエード王子と弓兵の二人では荷が重いだろう。速く行った方が良い」
リオンが解放軍に呼び掛けた。
「ああ…わかった。だが、お前さんは来ないのか?」
代表でホリンが応える
「雷鳴剣が堪えたから、少し休ませて貰う」
「OK…じゃ全員行くぞ」
全軍城に突入した。二人だけ残して……。
「行かないの?」
「だから雷鳴剣が……」
「ウソばっかし」
ユアンは、リオンの言葉を遮り悪戯な笑みを浮かべた。そう残ったのはリオンとユアンだ。
「まあな。まだ増援がいる」
「やっぱり」
・・・・・・・・・・・・
「ぱんかぱ~ん!ミクちゃん只今参上っ!!」
シャルスの中庭では突然のミクの登場に皆、困惑していた。それはアルスとリビティナの二人だけではない。敵のバード部隊の驚きを隠せないでいた。
「ミクちゃん只今参上……じゃないですよ!ミクさん何をするですかっ?」
リビティアが怒鳴る。無理もない、自分の放った矢が弾かれたのだから。
「だから、ちょっと待ってって言ってるでしょうに」
「っ!?」
リビティナは仕方無しに押し黙った。
「皆のもの~。コレが、あっ!眼に、あ、は・い・らぬか~」
ミクらしく意味も無く歌舞伎風口調で言葉を発すると、一振りの剣を高々と掲げた。その剣の鍔にはマルストの紋章が刻まれている。更に……。
「あっ!控えよ~控えよ~」
と続けた。
「そ、それはマルストの秘宝」
「「「「ルーンブレイドっ!?」」」」
「せ、セイラ様専用の剣」
バード部隊の者達は響動めく出す。
ルーンブレイドとはユグドラシル大陸に一振りしかなく、中級程度の魔法を吸収できる剣。
セイラはシャルスに先行する際に、もしもの事を考え野営地に置いてきた。だが、そのお陰でシャルス側に取られず済み、今ミクが手にしているのだ。
「そう、これぞマルストの秘宝、ルーンブレイドよ。あっ!頭が高~いっ!」
「こらミクっ!何故貴女がそれを持っているの?」
「「「そうよそうよ」」」」
「セイラ様に借りたからに決まってるじゃん♪」
非難の言葉にミクはしれっと答える。
このやり取りにアルス達は固っていた。他にも地上にいる敵部隊も上の様子に眼を点にして見ていた。それだけ、突拍子のない言動や行動と言える。
「どうやって借りたの?」
「セイラ様が解放軍に身を寄せているからよ」
今度は静かに答えた。
「「「「「「えっ!?」」」」」」
「ねぇ…みんな……」
やがてミクの表情が真剣なものへと変わる。
「もう止めよう」
「「「「「「っ!?」」」」」」
「セイラ様が命令違反して、あたし達ルーンナイツは解散。そしてイスカ様は幽閉された。でもイスカ様は、アルスエード様によって救出されたのよ。足枷が無くなったセイラ様は解放軍に加わった」
「ほ、ホントなの?」
「ええ…だから皆、またセイラ様と一緒に戦おう」
「でも……」
バード部隊の一人が反論する。
「貴女達は誰に仕えていたのっ!?」
真面目なんだか不真面目なんだからわからなく、普段おちゃらけているミクが珍しく怒鳴った。
彼女は知っていた。皆セイラを愛していた事を。
セイラの為なら命を惜しまない事を。
本国の命令によりルーンナイツを解散したのを良きに思ってなかった事を。
何故なら彼女も同じ気持ちなのだから。いや、人一倍セイラに忠誠を誓っていたからこそ……。
バード部隊の者達は押し黙った。珍しく怒鳴ったミクに驚きを感じてたのもそうだが、何よりミクの<貴女達は誰に仕えていたのっ!?>という言葉が心の奥にグサリと刺さっていた。
「マルスト陛下?」
今度は落ち着いた口調でミクが問い掛けて来た。
バード部隊の一人が首を横に振る。
「マルスト王国?」
再びの問い掛けに対し同じくバード部隊の一人が首を横に振る。
「違うよね?セイラ様でしょう?」
次は全員で首を縦に振っていた。
「あたし達は皆セイラ様の盾となり、セイラ様の剣となって、この命尽きるまで戦うって誓ったでしょうっ!!」
再び怒鳴る。
バード部隊がビクっと身体を震わす。頭を何かで殴られたような衝撃が走った。
「だからお願い!セイラ様がいる解放軍に来て」
そして、ミクは必死に訴え掛けた。
「そうね……貴女の言う通りね」
バード部隊の一人、茶の鷲のバードがミクの元に羽ばたいて来た。
「ミクのクセに生意気」
また一人、黒い燕のバードが。
「仕方ありませんわね」
また一人、黒い鷹のバードが。そして次々にミクの元に集まって行った。
「綺麗……なんだかマルストに来たみたい」
天空でミクを中心に優雅に羽ばたくバード部隊を下から見ていたリビティナがポツリと呟いた。
「ああ…頼もしいな」
アルスがそれに答える。
「みんなありがとう」
ミクがにんまり笑った。
「貴女に感謝される筋合いはありません事よ」
「そうよ…あたいらはセイラ様の為にこっちくるんだからね」
「でも、嬉しい」
ミクの瞳から一滴の涙が溢れた。
「んじゃあ、行くよ~っ!!」
次の瞬間、ルーンブレイドをしまって、槍を取り出し地上部隊に向かって突っ込んだ。
「お前がしきるなーっ!」
反論しつつも、先行するミクに続く。
「貴女何様のつもりでしてよ?」
更に続く。
バード部隊……いやルーンナイツはミクを含め七人。四人はミクを先頭に一列に並び、地上部隊に向けて急降下。残り三人は、その場に待機していた。
「トルネードアタッ~クっ♪」
「だからお前がしきるなーっ!!」
「貴女何様でしてよ」
「仕方無いわね」
ミクが地上部隊の真上を円描くよう高速で回り始めた。ごたくを並べつつも他の三人も後に続く。
ブフゥゥゥゥ……っ!!
竜巻が起きる。ルーンナイツによる高速旋回がそうさせた。
中心にいた地上部隊は、空に舞い上がり、其処を待機していたルーンナイツの三人が一気に攻撃を仕掛ける。
一人は弓、一人は剣、一人は槍とそれぞれの獲物で、次々に倒して行った。絶妙なコンビネーションだ。
「此処はあたし達が引き受けます、アルスエード様達は先に!」
とミクが上空で叫ぶ。
「わかった頼む!」
「わかりました宜しくお願いします」
・・・・・・・・・・・・
一方城門ではリオンとユアンを三十以上の敵兵が囲んでいた。それを背中合わせで対峙する二人。
「行くぞっ!」
「ええっ!」
互いに声を掛け、二人はぴったり合った呼吸で敵を倒していく。しかし、数だけみると圧倒的に不利だ。
そこでお互いの顔を横目で見てコクリと頷いた。流石は兄妹というべきか。次の行動を眼だけで確認していた。
「「はぁぁ……っ!」」
リオンは斧、ユアンは大剣、それぞれの獲物を力強く握り気合いを籠める。
「ワイルド……」
「ブレイド……」
リオンとユアンの二人の声が被る。
「「スイングっ!!」」
そして二人の声がハモり、それぞれの獲物が振るわれた。
ジュキーン……シュゥゥーンっ!!
リオンの斧から斬撃が走り、目の前の敵を薙払い、ユアンの大剣からも同じく、斬撃が走り、目の前の敵を薙払った。
これがこの兄妹が使う闘気技。闘気を乗せ力強く獲物を横に振るうする事により、高密度な闘気による斬撃を発する事ができるのだ。
この技により、敵兵は大打撃を受けた。数名残っていたが、一目散に逃げてしまい、シャルス城の城門前での戦いはこれで幕を閉じた……。
同時刻、ミクが率いる?マルストルーンナイツが受け持った中庭での戦いは城門からジャイロ率いる解放軍が一気に流れ込んできた事により、一瞬で幕を閉じていた。
そう残すはアルスの方だけになった……。
ミクはほんとご都合主義キャラです(笑)
実は最後に考えたキャラで、所々都合良く物語が繋がらないかな~と思い考えたキャラです
なので、要所要所で都合良い行動をしております(笑)




