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戦慄のイクタベーレ ~敗退せし者達の母国奪還の軌跡~  作者: ユウキ
第七章 光の超魔法ゼクト
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第六話 破滅の序曲

 バルマーラ地方は極寒の地。悪雲そびえ立ち、雷が止む事なく大地を打ち付ける。まるで、地獄を思わされる光景が広がる死の大地。

 そのバルマーラに暗く不気味な城がそびえる。その城の一室に誰かと話しているザーゼヴの姿があった。


「アルスエード等は、ガンダーラを発った。奴らすっかり救国の英雄気取りだ。民衆もそれを歓迎しておる。どうする?これは由々しき問題だ」」


 ザーゼヴの眼の先に長く上に続く階段があり、その上に人らしき影が見える。


「このままでは、帝国を足元から崩す事になりかねん。早急に反乱軍を叩き潰し、大陸全土に……」

 《くくくく……》


 ゴオオォォォ……!


 上にいた者は、薄ら笑みを浮かべた。


「どうした?」

 《いや、貴様がそれほど真剣に帝国の安泰を願ってるとはな……魔導士の小娘一人にやられ逃げ帰って来た事が悔しいと見える》


 ゴオオォォォ……!


 この者が口を開くと地響きが起こる程、凄まじいものがあった。この者こそ、暗黒魔王ガディウスなのだ。力は、完全ではないにしろ、既に復活を遂げていた……。


「うぬっっ!」


 ザーゼヴは、苦虫を噛み締めた顔になる。


 《しかし、貴様の言う通りではある。人間共に、これ以上増長させる訳にはいかぬ》


 ゴオオォォォ……!


「と言うと?」

 《それについてだが、自分で、やりたいと名乗りでた者がおる。この反乱を鎮めてみせるとな……誰だと思う?貴様も良く知る男だが》


 ゴオオォォォ……!


「はっ!?ま、まさか……」」

 《くくく…そうだ!クラヴィスだ》


 ゴオオォォォ……!


「クラヴィスーっ!?」


 ザーゼヴは、その名に絶叫した。


「あんな奴に任すのか?あんな、信用ならぬ男に……忘れたのか?あいつのせいで、この戦いの初期、どれだけの犠牲が出たかを……!」

 《フッ……》


 ゴオオォォォ……!


「あいつは、バルマーラのニーベ攻略戦の折、自分の仕掛けた魔法陣に敵軍のみならず、自軍までも引き入れ、双方を全滅せしめたのだぞ?しかも、あいつはそれをわざとやりおった……奴にとって敵も味方も関係なかった。ただ血を欲しておっただけだ!!」

「酷い言い草ですね……」

「っ!?」

「かつての愛弟子に対して、あまりと言えば、あまりな言葉ではありませんか?ザーゼヴ師匠」

「………クラヴィス!


 クラヴィスと呼ばれる男……いや少年がザーゼヴの前に姿を現した。白きローブを身に纏った容姿で、歳は十二歳前後といったところだろう……。

 頭に被ったフードから、覗かせる顔は、まだ幼さが残るが邪悪に満ちていた。


「こいつに任せるなど、承服できん。こいつのやり方は、帝国に対してさえ、仇をなす危険なものだ」


 ザーゼヴは、必死にガディウスに進言した。


「随分嫌われたものですね。僕は師匠を尊敬申し上げておりますのに……」

「確かに貴様程、魔導の才に長けた奴をわしは知らぬ……が、貴様はその才を自分の欲望の為だけに使う事を止めようとせん」

「アハハハハハハハ……これは異な事を……自分の欲望の為に力を使う事にどんな問題がありますか?ガディウス皇帝もザーゼヴ師匠も、そうやって、現在の立場を勝ち取ってこられた。今それと同じ行動して、なんの不都合があるのです?」

「うぬぅっ……!」

「それとも、その事で帝国が崩れるのですか?ならば反乱軍を待つまでもない!僕がこの帝国を潰してごらんにいれましょう。アハ、アハハハハハハハ……」

「貴様…!」


 ザーゼヴは、何かの魔法をクラヴィスに放った。


 ゴォォォ…!


 が、指ニ本でかき消されてしまう。


「不意打ちとは、卑怯ですでね」


 クラヴィスは、スーっと宙に浮いた。クラヴィスの身体中でバチバチ、音がなり、何かの魔法が渦巻く。それを両掌に集中させた。


「お返ししますよ!」


 ズッドォォォン……っ!


 これは、一点集中型のファイゴルだが、身体中でバチバチと魔力が、渦巻く程、超強力なものだ。


「ぬうっっ!」


 バリバリ……っ!


 それをザーゼヴは、ユーリと同じように障壁を出し掌で押さえ込んだ。


 《やめんか!!》


 ドゴォォォォン……ッ!


 このガディウスの一言に双方気圧された。ガディウスの言葉に先程からのより、凄まじい地響きが起きたのだ。


 《あまり調子に乗らない事だ……でなければ、貴様も消さなければならなくなる》


 ゴオオォォォ……!


「わかりました。まあご安心ください。師匠はお忘れですか?僕のもう一つの才能を」

「……頭」」

「そう。戦を制するのは、魔導でも絶対多数の戦力でもありません。究極の魔法……それは此処です」


 と言って頭部を指差した。


「……頭脳です。力任せの戦いで、惨敗を重ねてきたのです。そろそろ学ぶべきですよ。大軍を持って当たるだけが能では、ありません。それに無策でゼクトに挑むのも愚かです」

「ぬぅぅぅ……」

 《大した自信だな。何か策があるのか?》


 ゴオオォォォ……!


「いかにも策があります。相手は人間なのです……哀しみ、憎しみ。そういった感情にかられた人間は、モロいものです。そういった人間は、僕の術に簡単に落ちるものです」

 《それで策は?》


 ゴオオォォォ……!


「はい、こちらご覧ください……ティア!おいで」


 クラヴィスに呼ばれ一人少女が歩いて来た。しかしその眼は虚ろだ。


 《ほう……これは珍しい。剣人族か……》


 ゴオオォォォ……!


 ガディウスは、剣を持ってない状態でも、ティアが剣人族だという事を一目で見抜いた。


「いかにもそうです。ティアは、僕の術に落ちた剣人族です」

 《確かに剣人族は、特有の剣を扱い、なかなかの戦力となるだろう……だが、果たしてそれだけで、反乱軍を止められるかな?》


 ゴオオォォォ……!


「ご心配には及びません……実は更に既に最初の一手を打っておきました。此処に来る前にね。アハ、アハハハハハハハ……」


 と言ってクラヴィスは、不気味に高笑いを上げた。

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