第五話 理想と解放の剣
後半アルス視点
アルス一行以外の解放軍が野営地にしてる場所に、ユーリ達の事があったので全員其処まで下がらせた。
とある一つのテントから、ディーネが出て来る。外では、アルス、ユーリ、ホリンが待っていた。
「イスカの容体は?」
開口一番にアルスが安否を気にする。
「事前にマジックパウダーをかけていたようなので、幸い命の危険から脱する事はできましたが、私の中級では其処までが限界です。明日もう一度、同じ魔法をかければ普通に動けるようになるでしょう」
いつもと違いしおらしく応えるディーネ。
「そうか。セイラ王女の方は?」
「ソウテンで、三人も飛ばした為でしょうか。他者を飛ばすと通常よりマナを多く使う魔法ですから……お疲れの様子で、イスカの隣で寝ております」
「……わかった。じゃあディーネも休んでくれ」
「でも、ユーリもかなり深手を負ってるから……」
「今回の事、完全な私の独断行動です。規律を乱した以上、どのような裁きも受けるつもりでいます」
それをユーリが遮った。
「わかった…処置については、追って伝える」
それに対しアルスが応えるとユーリは頭を垂れ、その場を後にした。
「あの……アルス様!彼女を許してあげなさいよっ!!」
ディーネは、いつものツンツンな態度に変わる。
「とっくに許してるよ。だけどそれじゃ彼女が此処に居辛くなる。彼女は責任を取る事で、これからも我々といたいという心の表れだから」
ディーネの言葉に笑顔で応えるが、直ぐに遠くを見つめ……。
「彼女の気持ちは、痛いくらいわかるから……」
どこか哀しげな瞳だ。
「で、処罰はどうすんだい?」
ホリンが会話に入ってきた。
「う~ん…それが問題だね。どうしようか?」
・・・・・・・
「…ぅうう……わぁぁああ……お母様……ぅぅうう……」
野営地から離れた木の下、悲痛な叫びが響き渡る……。
木の下でしばらく涙を流し続けていた。
・
・・
・・・
「いたたたたたたっ!!」
野営地にある一つのテントから、叫び声が聞こえて来た。
「騒がないのっ!男でしょ」
ユーリがイスカの腕に包帯を巻いている。
「もう少し丁寧巻けよ。傷が痛むんだから…いたたたっ!」
「丁寧巻いてるじゃない……ほら終わったよ」
包帯が巻かれた腕をポンっと軽く叩くとイスカは……。
「うぎゃっ!」
と声にならない声を上げた。
「だらしないわね。ほんと」
「一応怪我人なんだから労らえよ」
「あら、労ってるじゃない……先の独断行動の処罰としてアルスエード様から緊急時に備えディーネ様のマナを使わせない為に貴方の看病命じられたんだもん。精一杯やってるつもりよ」
「……あのクソ王子ぃぃ!!」
ボソッと毒を吐く。
「で、ユーリ?」
「ん?」
「てめぇの方の怪我は大丈夫か?」
「へーき、大した事なかったから」
「それなら良いが……だがあれは無茶だ。気持ちはわからんでもなかったから止めはしなかったがな」
「ありがとうイスカ助けてくれて。私ね……決めてたの、一人でザーゼヴをぶっ殺すんだって……」
彼女は、医療道具を片付けながら話始めた。
「……その為に私なりに努力してきたし、やれるって思ってた。だけどダメだった……イスカが助けてくれた時、私……お母様が来てくれたのかって一瞬思った。お母様はいつも私を守ってくれたから、最期の時も、もし私を庇ってなければ、ザーゼヴを倒していたんじゃないかって、それがずっと引け目になってた」
「……ユーリ……」
イスカは、何を言って良いのかわからず、ただただユーリを見つめていた。
「だから絶対ザーゼヴは、私がぶっ殺す。そればかり思って……でもイスカに“憎しみに駆られて殺されたらお母様が悲しむ”って言われて初めて気付いた。お母様は、私を生かそうとしてくれたって事、その為に命まで賭けたんだって事、その思いを無駄するような事ばかり……そんな事さえ私、見失ってた……」
ユーリは、少し恥ずかしそうに笑った。母を亡くしてから初めての心の底から笑みを浮かべたのだ。
「……だからありがと」
イスカには、その照れたような笑顔が可愛らしく映ってしまい赤らめた頬を掻きながらそっぽ向く。
「いや……その俺様は……」
イスカが返す言葉に戸惑うと彼女は、掌をパンパンっと叩く。
「さ、変な話はこれくらいにして、スープでも飲んで」
そう言ってスープをイスカに差し出した。
「ひょっとしてコレてめぇが作ったのか?」
「そ。口に合うと良いけど」
「大丈夫!俺様は好き嫌いないから」
っと言って一口。
「ぐぇぇぇぇっ!」
「どーしてぇぇぇっ!?」
ユーリの叫びが野営地中に響き渡った……。
・・・・・・・
魔導都市ガンダーラ。
かつて大司祭が起こした魔導の都。
いつからなのだろう……。
本来は人々を幸せにするべき魔法を戦に勝つ為の力として使い始めたのは……。
その為に多くの犠牲が出ても引き返す事ができず、より強い魔法を求めていく。
人の手に余る危険な力を求めて。
しかし私もその危険な力を求めている。
星剣ベーレシオン……星々の力を封じ込めた伝説の剣を。
戦いを終らせる為に……。
戦いに倒れた仲間達の為に私ができる事を……。
彼等が信じてくれた理想をあくまで貫く事だけだ。
私は思いに耽けながら、ユーリとザーゼヴの激戦の場、大聖堂に訪れていた。大聖堂は、見る無惨に破壊され、原型を止めていない。残ってる外壁も傷だらけ。
「こんな激闘があった場所で良く二人は生き残ったな。それもザーゼヴを退けるなんて……」
ん?何か落ちてる。これは……剣かな?
「こ、これは……」
私は眼を疑った。幻なのか?其処にある輝かしい光を放つのは……。
「……ベーレ……シオン」
ゴクリと唾を飲み込んでしまう。
其処にあるのは、まさしく星剣ベーレシオンだ。ザーゼヴが落としていったのだろうか?
私は、はやる気持ちを抑え、ベーレシオンを手に取った。
「えっ!?」
その瞬間ベーレシオンは、ただの鉄の剣へと変わった。
私は何度も何度も眼を擦るが、手に持つ剣は、ただの鉄の剣に変わりない。
これは一体……?
そうか……私はまだ所有者として認められていないのか……。




