第四話 真に光輝くゼクト
前話はエピソードと銘打って、此方を4話としておりますので一応前話を読まなくても良いように繋げています
特に意味はないです(笑)
3話と来て次を4話と付けずエピソードとして、此方を4話にしたので、ちょっとしたこだわりです
逃げちゃアカン時があるんや、というラクームの父の最期の言葉がよぎりラクームは踏み止まる。
もし自分が逃げたらイスカ達が狙われるとかもしれないと敵魔導士と対峙すると決意した。
そして水系上級魔法を使う事に……水系魔法の唯一の攻撃魔法だ。
水系最終魔法ハザードウォームを解き放ったラクームの掌から、人の三倍はある水の魚が現れた。
その水魚をラクームが手を動かし操る。手始めに一番近くにいた敵魔導士に真っ直ぐ向かい、その敵魔導士を喰らった。
喰われた魔導士は、当然もがくが脱出できないでいた。また魔導士を喰らった水魚は更に一回り大きくなった。
そして、その水魚は次々に敵魔導士を喰らっていく。一見、地味な魔法に見えるが、この水魚の中では、息は当然できなく、深海にいるような、物凄い水圧がかかるのだ。
それに速い。あっという間に全ての敵魔導士を喰らう。時間にして数秒。
敵魔導士も魔力で、水圧に潰されないように、必死に抵抗するが、息ができない為に集中できないでいた。
そして……。
「終わりや」
プッシャーンっ!!
ラクームが掌をギュっと握ると全ての敵魔導士を喰らった水魚が、魔導士もろとも一気に破裂した。
残ったのは血だまりと肉塊のみ。
「やったでぇ……オトン……」
バタンっ!
初の上級魔法を使ったラクームも身体が保たなかったらしく、膝から崩れ落ちてしまう。
「しもーった!……ハァハァ…マナがカラや…ハァハァ……どない…しよ……」
ラクームがなんとなく感じ取っていたようにこの魔法は多大なマナを食う。
その為、彼はそのまま意識を闇に呑まれてしまった……。
・・・・・・・
「ハァハァ……何これ?体が動かない……」
ユーリはザーゼヴにダークライを食らった事により、しゃがみこみ何故か身体が動かなくなっていた。
(なんなの?……これが、お母様を殺したダークライ!?)
「ククク……もう動けないようだな」
(悔しい……勝てないの!?私のゼクトでは、ザーゼヴに勝てないのっ!?……お母様っ!!)
「ミンシアよ!これがお前への手向けだ…受け取るが良い」
ザーゼヴは右掌をユーリに向けた。その瞬間、身体が引き裂かれる。
「ぐはっ!(これはあの時と同じ風系上級……いや今の私ならわかる。これは中級ね。中級なのに身体が引き裂かれるような痛みだわ)」
魔法名破棄の風系中級を食らい。あちらこちらからおびただしい血が噴き出る。
「ククク……まだ生きていたか。だが次で終わりそうだな」
彼女は俯き、母の仇を討てず哀しみ駆られ、これが今生の最期と悟った。
『フーガルっ!!』
今回は魔法名を口にしていた。風系中級魔法である。
(お母様……)
「ユーリぃぃっ!!」
ゴォォォォ!!
しかし、その魔法はユーリに届かない。誰かがユーリとフーガルの間に入った。
「がはっ!」
その者は、吐血する。
「何っ!?」
ザーゼヴが驚く。
「お母様――っ!!」
彼女の目の前に母の幻影が映る。母が後ろを振り向く。頭部から大量の血が流れていた。
だが、その者は母ではなかった。母はユーリの心が映した、ただの幻でしかすぎないのだ。
では目の前にいる者は……。
「……イスカっ!?」
「大丈夫かい?…ユーリ……」
いつもの態度とは裏腹に彼はユーリに優しく声を掛けた。
「うっ!」
イスカは反転しユーリに抱かれる形で倒れ込んだ。
「イスカ?……イスカっ!!」
抱きとめ呼び掛ける。そしてイスカの背中にヌルっとした感触。ユーリは恐る恐る自分の掌を見た。
「うわぁぁぁぁぁ……イスカぁぁぁぁっ!!」
真っ赤に染まる掌を見てユーリは半狂乱に叫ぶ。
「ぅせぇーよ!……まだ生きてるよ」
弱々しくもイスカは声を出し、顔を上げた。
「逃げろ!……てめぇもこれでわかっただろ?憎しみ駆られたところで、奴には勝てねぇ。それにこんなんで殺されたら、てめぇのお袋さんが……哀しむ」
彼女の肩を抱き呟いた。
イスカにはユーリじゃ勝てないとわかっていた。ガンダーラから始まったこの戦争。その際に多くの魔導士がザーゼヴに挑んだ。しかし、その全てが虐殺されたからだ。
「シャレた真似をするわ」
ザーゼヴは掌を前に翳し魔法名破棄の炎系中級を繰り出す。
ボォォォンっ!
「ぐわあぁ!」
イスカの背中が真っ赤に燃える。
「イスカっ!」
「邪魔だ!」
ファーガに更に魔力を込めた。
ゴォォォォ!
「ぐぁぁぁぁっ!!」
「イスカ?」
「に…げろ!逃げ延びて…生きろっ!!…ユーリっ!」
そして、彼の意識は闇へと引き込まれた……。
(どうして!?……どうしてこんな時にっ!!どうして大切な時にいつも私は……何もできない!?……どうして……)
彼女は己の無力差に胸中嘆いた。母が殺された時も、何もできなかった。今もイスカが危険なのに何も出来ない。
【立ち上がりなさい!ユーリ】
だがその時、彼女の心に母の言葉が響いた。
「えっ!?」
【もう一度…立ち上がって、魔力を全身に集中させるのよ】
―――――
「立ち上がりなさい!ユーリ」
「お母様……無理です……私には……」
「もう一度…立ち上がって、魔力を全身に集中させるのよ」
「そんなの無理よ!」
「いいユーリ?魔導の力とは誰かを守る為にあるの。貴女が魔導の道を選ぶかどうかは自由……でも、これだけは覚えておきなさい。貴女には否応無く魔導の力が備わっている……その魔導の力は、決して避ける事のできない戦いに貴女を必ず巻き込むわ」
あの頃の私は魔導の道を望まなかった。それでもお母様は、魔導の基礎と守りを教えてくれた。
普段は、優しくても魔導となると本当に厳しい人だった。
何故なら魔導の力は誰かを守れると同時に、誰かを傷付けるものだから。使い方を誤らせたくないというお母様の想いが込められていたからだわ。
「だから立ち上がりなさい!」
私は言われるままに立ち上がった。
「魔力を全身に集中しなさい。意識を全身に駆け巡らせなさい」
「はい」
全身に魔力を籠めた。
「そう……できるじゃないユーリ」
―――――
「身体が……さっきより動く」
彼女の腕が動いた。母の言葉を思い出し今までよりも更に全身に魔力を張り巡らせたからだ。
「これなら……うっ!」
だが、立ち上がろとした瞬間、身体が何かに引っ張られる。
「なに……これ?」
彼女の身体に無数のドス黒い手が絡みついていた。ユーリの身体に絡み付く無数の黒い手……ダークライによって、呼び出された冥界に住む者達の手だった。
ダークライとは、漆黒の霧を振り撒きそれを餌に冥界に住む者の手を呼び出す。冥界の者、故に見えない何かに引っ張られ動きを封じられるものであった。
つまりは呼び出されたのは死者達だったのだ。基本的には、余程の魔力がない限り目視は皆無……しかし体内の魔力を防御へ、全集中させたユーリには、それを見るに至った。
(これがダークライの正体……お母様は、これに捕まってしまったのね……でも私は負けられない……負けてらんないのよぉぉッ!!)
彼女は、再び魔力を全身へと更に駆け巡らせた。
ピカ~ンっ!
その瞬間、ユーリは光輝き無数の手を振り払い立ち上がった。これがゼクト所有者として真に認められた証。
詠唱にも<浄化の光輝>とある。ダークライを弾き飛ばす……正確には浄化するもの。それ故に、かつてザーゼヴはゼクトを恐れミンシアから奪おうとした。
「馬鹿な!動ける筈がない…っ!!」」
ザーゼヴは、驚き戸惑い後退りしてしまう。そしてユーリは、真っ直ぐザーゼヴを見据えた。
(あの時と同じ状況……あの時は、お母様が……今度は、私が守って見せるっ!!)
「宝の持ち腐れと言ったわね……ゼクトを宝の持ち腐れだと……」
瞳がギラ付く。もう彼女の中にあるのは、怒りや復讐なんかではない。後ろにいる仲間を助けたい……そんな想いが瞳の奥に入り混じっているのだ。
ダークライは負の感情で強くできるがゼクトは真逆。生の感情で真の力を発揮する。不幸か幸いかイスカを守りたい感情がゼクトの真の力を発揮するに至った。
「本当にそうなのか、しかと見るが良いわっ!!」
ユーリは掌を天に翳した。
『ゼクトっ!!』……ドゴォォーン!!
「がああああ……!」
ユーリがゼクトを唱えた瞬間には、ザーゼヴに頭上に光の球体が落ちていた。
使いこなせていないゼクトでは宙に光の球体を出現させ、それを落とすという唱えてからの発動までにタイムラグがあるものだ。しかし今は違う。唱えた瞬間に発動した。
『輝け、浄化の光輝よ!ゼクトっ!!』……ドゴォォーン!!
ユーリは短縮詠唱で、更に魔法をかけ直す。
「……まさか…こんな…そんな馬鹿なっ!…そんな…馬鹿なぁぁぁっ!!」」
断末魔にも思える叫び共にザーゼヴの前に魔法陣が現れ、ザーゼヴは逃げて行った。
ユーリはザーゼヴを退けた。だが彼女も緊張の糸が切れたのか、その場に尻餅を付いてしまう。
「ハァハァ……勝った…の?……えっ!?」
彼女は身構えた。目の前に再び五芒星魔法陣が出現したのだ。しかし中から現れたのセイラだった……。
「ハァハァ……セイ…ラン…ローヌ様?……何故此処に?」
「ラクームから聞いて駆け付けたのだ。無事か?」
「ハァハァ……ええ……私は…でも……」
言葉を濁し視線を後ろに向ける。イスカが倒れている方へと。
「なんて事だ……直ぐにディーネ王女の元へ……」
こうして二人は無事とは言い難いがセイラの転移魔法で帰還を果たした。
イスカ無残
なかなか活躍の場がないです(笑)
登場からかませ犬臭します




