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戦慄のイクタベーレ ~敗退せし者達の母国奪還の軌跡~  作者: ユウキ
第七章 光の超魔法ゼクト
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第二話 これは私の問題だから…

「お、お母様!ごめんなさい……私がもっと魔導の勉強をしていればお母様をソウテンで逃がす事ができたのに……」


 ユーリが泣きながら傷付いたミンシアに抱き付く。その向こうでザーゼヴが不気味に笑っていた。


「ククク……さあゼクトの魔導書を出しなさい」


 ザーゼヴが不気味な笑みを浮かべながらミンシアに魔法を唱える。魔法名破棄の風魔法がミンシアを切り刻む。それをユーリは見ている事しか出来ない。


「貴方には渡しません」


 気丈に振る舞うがミンシアはもうボロボロだった。衣服のほとんどが弾け飛び背中は剥き出しになっている。そして、その背中は風魔法で無残にもズタズタである。


「なら仕方ありません」


 邪悪でおぞましい眼でユーリを見た


「ま、まさか?娘は関係ありません」

「くくく……娘を守りたければ、さっさと出して貰いましょう」


 魔法名破棄の風魔法がユーリを襲う。


「キャー」


 威力から言って上級風魔法か、もしくはザーゼヴの魔力が高く中級がそれに匹敵する威力を持ってる。

 そんな物を易々と魔法名破棄するなんてザーゼヴは相当な魔導の使い手だ。


「さあ出してください」

「貴女は死なせないわ」


 ミンシアがユーリを庇う。もう瀕死だと言っても過言はないというのに。


「お……母様」


 ミンシアの右手がユーリの頬を優しく撫でる。


「貴女だけでも強く生きなさい」

「お母様は?」

「私はザーゼヴを食い止めます……ユーリ強く生きるのよ『ソウテン』」


 ユーリの前に五芒星の魔法陣が現れ、ユーリは其処に吸い込まれ出した。


「貴女にフレイヤ様の祝福があらん事を」






 お母様―――――。








 ―――――


(今でも鮮明に思い出す。お母様を……ザーゼヴが……)

「どうしたユーリ?恐い顔して」

「えっ!?……な、なんでもないわよ!それよ早くマジックパウダーがある場所まで行きましょう」

「ああ…わかってるよ(コイツ……一体何を抱えているんだ?)」


 イスカとユーリは既に街の中を歩いていた……。








 ・・・・・・・


 ガンダーラから南のかなり離れた所にアルス達を除く解放軍が拠点としていた。

 アルス達の少数部隊とは違い、此方は大部隊。その為無数のテントが点在されている。

 聖王国ユグドラシル奪還により数多くの者が軍へ志願した事により、以前より十倍、二十倍にも多い大部隊となっていた。


「あのユアン隊長。ガンダーラに向かったアルスエード王子達は大丈夫なんでしょうか?あんな少数で……」


 野営地で食事をしていた新兵が何気なく聞いていた。しかしその視線はユアンの胸にある。


「大丈夫よ。アルスエード様が連れて行ったのは、選り抜きの精鋭部隊。此処にいる部隊が束になっても敵わないわ。迅速が求められる戦いは少数精鋭で望むのが一番良いのよ」

「そんなですか……勉強になります」


 ユアンが喋る度に大きな胸が揺れるなんて勉強(・・)になりますなんて事を考え、ずっと視線が胸にあるのだがユアンは全く気にしていない。

 実は新兵にはユアンは人気があった。何でも良いので話し掛けては胸を注視。その為に新兵達は話題を必死に考える始末。ユアンがそれに気付きもう慣れてしまったのだ。


 コトッ!


 食事を終えた食器をテーブルに置き、その場を後にする者がいた。それは何故か精鋭部隊に選ばれなかったソラだ。

 彼の実力なら選ばれても可笑しくないし、アルスと初期から一緒にいたのだから尚更。

 そんな彼は未だにリュウザンの死を引きずっているのだろうか……常に近寄り難い、鋭い眼差しをしていた。言い代えれば荒んだ眼差しだ。


 彼は野営地から少し離れた草原に歩いていった。其処で不気味な気配を感じた。その不気味な気配は後ろからだったので直ぐ様振り返った。

 其処には魔導士のような姿をした少年いた。歳は見た目からいって12、3の子供である。

 志願した新兵の一人なのだろうか……この少年は、可愛いらしい瞳で、ソラを覗いていた。だが、その瞳の奥では殺戮に満ちた、深い闇を感じさせられるものだ。

 それに気付いたソラは少し警戒した。少年はソラを見上げながら、グルーっと彼の周り一周してから口を開く。


「イクタベーレ騎士団の英雄が居残りとは意外ですねソラさん。無論この居残り部隊を統制する為にアルスエード王子が残したのでしょうが……ですが本当にそれだけが理由でしょうか?」


 まるで全てを見透かしている態度だ。


「……誰だ?」


 ソラは少年を軽く睨み付けた。


「そんな警戒しないでくださいよ。ボクは貴方と話したいと思っていた者ですよ。」


 笑みを見せるが、どこか冷たいものを感じる。








 ・・・・・・・


「ねぇ?なんで魔法を覚えようと思ったの?」


 ユーリが歩きながら、ふいにイスカに話掛けて来た。


「ん?別に……ただあいつに付き合っただけだよ」

「あいつ?……セイランローヌ王女の事?」

「ああ…あいつ王族だし、ましては姫様だからな。王家のしがらみで無理矢理魔導教育を受けていたんだ」

「それで自分も一緒に魔導の勉強しようと思ったの?」

「まあな」

「へぇー意外に優しいだね」


 ユーリはイスカの前に回り込み、少しかがみ下から見上げるようにして笑み浮かべた。


「そ、そんなんじゃねぇよ!」


 顔を赤らめそっぽを向く。


「……あいつとは幼馴染だ。そのあいつが苦しいでるとこなんてみたくねぇ」

「ふ~ん。でも、セイランローヌ王女にも苦悩する事があるのも意外だね」


 イスカの隣に並び直しながら言った。


「あいつ人前に弱味を決して見せないからな……いつも黙って一人抱えて込んでいる」


 どこか寂しそうな面持ちを浮かべる。


「流石は幼馴染だね」

「うるせぇ!!……だがあいつは、家系の問題もあるがお前と同じで、英才教育……俺は此処の魔導学校だったから、実力に差が出たけどな」

「それって才能の無さを棚にあげてない?」


 ユーリは悪戯な笑みを浮かべ隣にいるイスカを肘でつつく。


「うるせぇよ……てめぇはどうなんだよ?ってこれは愚問か」

「えっ!?なんで?」

「お前もあいつと同じで、しがらみとかだろ?……お袋さんが大司祭だったしな」

「う~んでも、お母様は魔導を強制しなかったわ。現に私は小さい頃、あまり魔導に対して熱心じゃなかったし」

「ふ~ん。じゃあなんで、今は真面目に取り組んでだ?」


 イスカがこの言葉を言った瞬間ユーリの笑みは消え俯き黙り込んだ。


(ヤバッ!余計な事言ったかな)

「……未熟だったから」


 やがてユーリは小声でぽつり呟いた。


「え?」

「私が未熟だったばっかしに……お母様が……ザーゼヴに……くっ!」


 ユーリが唇を噛む。

 彼女の表情が険しいなりきつく眼を瞑る。


「(なるほど……そういう事か)……で、今回仇討ちしようって腹だな?」

「えっ!?」


 驚きに満ちた表情に変わり眼を見開いた。


「バーカ!バレバレだぜ」

「いつから気付いてたの?」

「最初から…お前、顔に書いてあったから。だが確信を持てたのは今だ」

「ならなんで無理矢理私を引き戻さなかったの?」

「戻したとこで、大人しく引き下がったか?また皆の眼を盗んだだろ?」

「まあね♪」


 悪戯な笑みを浮かべながら舌を出す。


「だから俺様がついて来てやったんだ」

「えっ!?」


 ユーリは頬を少し赤らめた。


「俺様の魔導の力は、てめぇには及ばないけど、いないよりマシだろ?」


 彼女は、イスカの目の前に回り込み、少しかがみ再び下から彼の顔を覗き込みながら後ろ歩きする。先程と違い満面な笑みを浮かべていた。


「な、なんだよ」

「ありがとう♪やっぱり貴方優しのね」


 イスカは顔を真っ赤にしだす。


「ち、ちげぇ!!こ、この前みたいな、誰かが傷付き荒んだ空気を眺めたくねぇだけだ」

「でもありがとう」

「そ、それより着いたぜ!此処だ。此処が俺様が魔導学校に通ってた時に利用していた住処だ」


 ユーリは振り返り後ろにあった建物を眺める。


「此処にマジックパウダーが?」

「ああ…一応隠してあるから見つかってなければ、まだある筈だ。ちょっと待ってろ。直ぐ取ってくる」

「うん」


 イスカは前方にあった建物の中に入っていった。


「イスカ……ありがとう……でもごめんね。これは私の問題だから……貴方を巻き込めないっ!」


ユーリは決意に満ちた……いや最初のと同じ怒りと憎悪に満ちた眼差しをして、その場を後にした……。

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