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戦慄のイクタベーレ ~敗退せし者達の母国奪還の軌跡~  作者: ユウキ
第七章 光の超魔法ゼクト
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第一話 魔導都市ガンダーラ

 私、決めてたんだ。


 あの日から。



 お母様が殺されたあの日から……。




 このお母様から受け継いだゼクトで、ザーゼヴを絶対ぶっ殺してやるんだって―――。








 ◇◆◇◆◇◆


挿絵(By みてみん)


 此処は魔導都市ガンダーラ……ユグドラシル領に属し、聖王国ユグドラシル・ニーベから北にある。大抵の者は此処で魔導を学び習得していく。

 サラ、ゼフィロス、イスカ、ラクームは此処で魔法を覚えた。またラクームの生まれ故郷である。

 現在、この場所は暗黒大魔導士ザーゼヴが仕切ってた。よって此処にいる魔導士は皆、ザーゼヴの配下となっている。

 そして、そのザーゼヴが星剣ベーレシオンを所持している可能性があり、この場所にアルス達は訪れていた。


 今回の相手は全て魔導士というわけで、一筋縄ではいかないと判断したアルスは、部隊を小人数の精鋭部隊にした。

 メンバーはジャイロ、ホリン、ゼフィロス、ラクーム、ジェリド、セイラ、イスカ、ユーリなのだが、サラはディーネとロッカ護衛の為にいないのは当然として、こういった小人数部隊となると必ずいる筈のソラの姿がいなかった。

 今は都市から少し離れたとこにアルス達が陣を構えてテントを張り作戦会議が行われている。


「ラクーム、ガンダーラの地理やザーゼヴの居場所を教えてくれ」


 アルスがラクームに視線を向ける。


「街道は五芒星を描くよう作られてとる。ほんでザーゼヴは中央の大聖道におる筈でっせぇ」

「戦力は?」

「数は大した事あらへんが、ザーゼヴの力により魔力が強化されはなって、厄介でっせぇ」

「こっちも魔導士部隊を率いているとはいえ、それ以外は俺を含め、魔導士を相手にした経験が乏しい……こりゃあ。ちっと厳しいぞ」


 ホリンがボヤく。


「ベーレシオンはザーゼヴが持っている可能性がある。今回の作戦の第一目標はそれを取り返す事だ。その為にザーゼヴとその魔導軍との衝突は避けられない」

「で、お前ベーレシオンを取り返しても、それを扱えるのか?」

「ホリン殿!その話は……」


 ジャイロが止めるが……。


「聞けばガイルバッハ王さえ使えこなせなかったらしいじゃねぇか」


 構わずホリンは続けた。

 アルスの脳裏に父が目の前で散った光景が蘇り、表情が苦しくなる。


「……使いこなす……使いこなしてみせる!必ずっ!!」


 俯き静かに応えた。


「ま、なんにしても、ベーレシオンを取り返すのは明日だな。今日は準備を整えよう!」


 ジェリドは気負いした空気を一変させた。


「ああそうだな…速く準備を整え明日に備えよう!」








 ・・・・・・・


 アルス達が陣を構えているテントの一つの中で魔導書に埋もれたイスカの姿があった。

 彼は椅子に腰を掛け、大量に山積みになった魔導書に囲まれ、その一つ一つに目を通せば、放り投げている。


「あ~あ…これからの戦い炎系だけじゃ辛いからなぁ~。セイラみたいに全攻撃基本属性が使えればなぁ。でも俺様にはどうも氷系が扱える気がしないんだよなぁ」


 魔導書を眺めながらボヤく。

 ふとテントの外を見ると何処かに向かおうとしてるユーリの姿が眼に入った。


「ん?あの女、何やってんだぁ?」


 彼女は一人街の方に向かう……だが、顔付きは怒りと憎悪に満ちた近寄り難い感じだ。


(……此処にザーゼヴが)

「てめぇ何処行くんだ?」

「えっ!?え…え?」


 後ろからイスカに声を掛けられ、慌てた様子で振り返った。


「いっ…いつからいたのよ?」

「いつからってさっきから。てめぇがあまりにも怖い顔してたから、声かけそびれたんだけど」

「サイテーっ!人の後をつけるなんてっ!!貴方はストーカーだったのね」

「す、ストーカーっ!?はん!誰がてめぇみたいな色気のない女の尻を追い掛けないといけない?鏡見て言え」

「なんですってぇっ!!……此処が敵地じゃなかったら衛兵呼んでたのに。命拾いしたわね」


 顔を真っ赤にして怒り出すユーリ。だが先程の憎悪に満ちたものはない。


「んな事は良いから、その敵地の街の方へ行ってしまいそうだったからよぉ」

「勝手に決めないでよ!」


 顔をますます真っ赤にしたまま怒鳴る。

 ただ真っ赤だが何かを隠すように必死になっている感じだ。


「だがそのまま進み俺様達がいる事が敵に知れたら計画が台無しになるじゃねぇかっ!!」

「バカね。敵はもうとっくに知ってるわよ」

「それはそうだろうが……」

「でしょ?だったらこっちも偵察♪」


 ニコっと笑うユーリ。


「やっぱ街へ行く気じゃねぇかっ!てめぇ」

「あっ!」


 暴露してしまったユーリ。しばし固まってしまう。


「はい帰るよっ!!」


 イスカは彼女の腕を掴み無理矢理引っ張った。


「いや、触らないで。このえっちスケベ変態」

「……ならそのえっちスケベ変態な事をするぞっ!」


 ユーリの腕を離して両手でユーリの胸に向かって指をわしゃわしゃ動かす。


「ひっ……せ、セイランローヌ王女に言いつけるわよっ!」


 胸を隠すように腕を組みイスカは睨み付ける。


「言いたければ勝手に言えっ!」

「くぅぅ……私が悪かったわよ。お願い止めて」

「安心しろ。お前の貧相なのに俺様は興味ねぇ」


 そう言ってイスカは手を降ろした。


「なんですってーっ!!」


 再びユーリが激怒。


「はいはい。お怒りは帰ってからね」


 イスカは踵を返す。


「ちょ、ちょっとぉ魔導士を相手にするんだもん。私達は良いけどアルスエード様なんかはかなり危険になるのよ……魔法のダメージをそのまま受けちゃうんだから」


 魔導士には魔法に対する耐性ががある。


「だが勝手に動くじゃねぇよっ!」


 イスカは振り返らず言う。


「だ、だからぁ!此処でマジックパウダーが手に入るでしょう?それを手に入れてくんのよっ!!」


 ユーリが捲し立てる。これでは何かを隠してると言ってるようなものだ。

 なおマジックパウダーとは、魔法に対する耐性を高める粉の事である。


「………」


 ピタッとイスカは止まる。


「皆、準備で忙しいから私が……」

「わかった」


 ユーリの言葉を遮って振り返た。


「そん代わり俺様も行くぜ」

「え、ええー!?」


 相当嫌そうにしている態度だ。


「ガンダーラの地理は俺様のが詳しいし。構わんだろ?」

「は~……好きにしなさい」


 溜息を溢ししぶしぶ了承した。








 ・・・・・・・


「先程からイスカとユーリの姿が見当たりません」


 アルス達が陣を構えるテントでは、ジャイロがアルスに報告を行なっていた。彼等がいなくなった事に気付いたのだ。


「イスカとユーリが?」


 下を向き考え込み出す。


「逢い引き……か?」


 剣の手入れをしていたホリンが横から軽口を叩く。


「イスカは時と場所を考えぬ愚者ではない」


 セイラが応える。口調は穏やかだが鷹ような眼は鋭くなりホリンを睨み付けた。


「流石は幼馴染だな。良くわかっている。で、当人達は何処へ行ったんだろうね?」


 雰囲気が悪くなったので、咄嗟にジェリドも口を挟む。彼はこういう機転が利くのだ。


「はっ!?」


 アルスが何かに気付き顔を上げる。


「ん?心当たりがあんのか?」


 とホリン。


「いや、ただの思い過ごしだ(ま、まさかユーリ……)」

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