残されし者①
アルス一行は爆発した西の砦にリュウザン救出に向かっていた……。
爆発の為に炎上したが雨のお陰でほどなくして消化される。そして砦の瓦礫をどかすが、一向にリュウザンは見つからない。
「ダメだ!見つかんねぇ」
「こっちにもいない」
ライアーラ兵達が呟く。
そんな中ソラがアルスに真っ直ぐ向かってきた。ソラもアルスも瓦礫をどかしていた為に真っ黒だ。また二人共、塞ぎ込んでいる面持ちである。
そしてソラはアルスの掌に刀身がなくなった短剣をそっと置いた。
「っ!?」
アルスは驚きを隠せない様子でだ。無理も無い。この短剣はリュウザンの愛用の物だから。
「あいつは……立派にアルス様をお守り致しました……そう信じます」
そう言うと深々と頭を垂れてソラは去っていった。
そう言われたアルスはリュウザンの死を改めて悟ったかのように放心状態に陥ってしまった……。
リュウザン救出にホリンも加わっていたのだが、その場の空気が嫌気が刺し、ちっ!と舌打ち一つ鳴らし、その場を後にする。
そんな彼の元に見回りをしていたギュスターヴがやってきた。
「ザーズの爪とぶつけていた派遣軍が此方に戻ってきているらしい……どうする?」
「それは俺達で処理しよう。あいつらは今、それどころではないようだしな」
ホリンはアルスをチラッと見てから、ギュスターヴの方を見直して応えた。
「戦友の死か……だが甘過ぎるな。そんな事でこの先どうするつもりなのかアルス殿は」
ギュスターヴもアルスに一瞬視線を向けた。
「まあそう言うな。俺達だって覚えがないでもないだろ?そういうのはさ。それにああいうところがアルスの一番値打ちのある部分かもしれねぇしな」
「うむ。そうだな」
「なに正直言うとちょいと騒ぎ足りない気分なんだ!丁度良いぜ……ん?」
目の前にゼフィロスが……ホリンと視線が交わる。どうやらゼフィロスも同意見っといった感じだ。
「わかった……私も付き合おう」
ギュスターヴが苦笑を浮かべ応えた。次にホリンの視界に入ったのは木の影に隠れ塞ぎ込んでいるディーネだ。
「いろいろ自分の気持ちの整理もあるだろうがな、アルスの傍にいてやった方が良いんじゃないかい?お姫さん」
彼女は咄嗟に顔を上げ、既に去ろうとホリンの背中を見つめる。
「ホリン……」
「アルスの力になってやりな」
彼は最後にそう言い残した……。
・
・・
・・・
翌日、ニーベ奪還を祝う式典が行われた。しかし、アルスやディーネはそんな気分ではないの。ディーネはリュウザンを死に場所に飛ばしてしまった自責の念を抱え、アルスもまた命を賭けさせてしまった己の未熟差を呪っていた。
だがロッカは我が城を奪還してくれた皆に感謝の意を込めて式典を決行したのだ。
「皆さん、本当に良くやってくださいました」
式典の会場において会場で、朗々たる声音は響かせ皆に呼び掛けるのロッカ。しかしその表情には迷いがあった。感謝の意を込めて行ってるが、アルスに辛いものを強いてしまったからだ。それでも式典をしないと国民から英雄に対し非難の声があがるという理由もある。
会場ではロッカの前にアルスとギュスターヴを先頭に騎士達が跪いていた。
「アルス様、大陸の全て人々に代わりお礼を申し上げます」
「そんな……」
「アルス様にこれを……こんな物で、アルス様の行いに報いる事ができるとは思いませんが」
彼女はアルスに近付き勲章の授与を行った。
この式典に何人かの姿が見えないでいた。ソラは親友が死が尾を引いていそうなので当然として、ホリンとゼフィロスにジェリドもいない。まあ彼等は面倒だから席を外したといったところだろう。
しかし、ユグドラシル騎士団部隊長であるユアンやマルストの王女であるセイラの姿もない。
実はニーベ宮殿の裏庭にユアンがセイラを呼び出していたのだ。
「態々呼び出して申し訳ありません。ですがどうしてもニーベを出発する前はっきりさせておきたかった。私は貴女を同胞とは認めないっ!!」
ユアンの表情は険しく怒りを覚えていた。
「……貴女が率いるルーンナイツがどれだけの事をしたか……現に私の仲間の多くはその犠牲となって散った。それを今更同胞などと……他の誰もが認めてもこの私だけは認めないっ!!」
そう言うと背中に携われている大きな剣を抜いた。彼女の剣は大型で両手剣といったところだろう。とても女性に扱えるように思えない。しかし彼女は軽々片手で持っている。
決して筋肉質な身体ではなく、スリムでスラッとしている。ただ胸が大きいが。
また彼女が怒りを覚えているのは、ニーベ陥落の最後の一手をかけたのはセイラ率いるルーンナイツだったからだ。
「騎士として刃を持ってけじめをつけておきたい、さあ剣を抜いてください」
彼女は切っ先を真っ直ぐ前に突き出す。対するセイラは微動だにしない。
「どうしたのです?まさか無敗女王程の方が躊躇う事もないでしょう?それとも私では相手に不足ですか?」
「私はアルス王子にこの身を預けた者。無駄な戦いはしない」
と言うとセイラはユアンを背を向けに去ろうとした。
「セイラ殿っ!?」
ユアンは剣を突き出したまま叫んだ。
「とは言え……」
セイラは顔だけ振り返る。
「……其方の気持ちもわからんでもない。いつでも良い……私を殺したければ何処からでも来るが良い。存外簡単に殺れるかもしれぬぞ?」
薄ら笑みを残し去っていった。
「……セ…イランロー…ヌ……殿」
ユアンは剣を降ろす。
(ああ…私ではあの者には敵わない)
ユアンは度量の差で屈服してしまった。




