第七話 聖王国ユグドラシル奪還
ドゴォォーンっ!
何処かにある砦では、激しい爆発による爆煙振り撒く。ジョーゼンの炎系最上級が猛威を奮っていた。
リュウザンは剣で防ぎ、致命傷を避けるが徐々にそのダメージを蓄積している。実際のところリュウザンが押されていた。
「フフフ……人間にしてはよくやる。殺すのが惜しくなる程だ」
「ふざけるなよっ!こんな薄汚い場所で、殺されるなんてのは、俺の予定にはないぜ……行くぜっ!!」
リュウザンが間合いを詰める。ジョーゼンは蔓が巻き付かれた巨大な腕を振るった。
「ふん。パターンはもう読めているぜっ!」
プシューン!!
巧みに躱し肩の付け根から斬り裂き、巨大な腕が落ちる。
「ぬう……っ!」
「これでおしまいだ」
ブスっ!
左胸辺りに剣を突き刺す。人間なら急所にあたる場所だ。
「ぐががががっ!!!」
断末魔の叫びとも言える雄叫びが、部屋中に響く。リュウザンの顔についにやったと言わんばかりのニヤけた。
『ファイゴル!!』
ドゴォォーンっ!
だが、終わっていなかった。左手に持った杖から炎系最上級魔法が発射。油断していたリュウザンは直撃をくらい吹き飛ばされた。
ドンっ!
壁に叩き付けられ、その壁にめり込んだ。
「がはっ!」
再び大量の血を口から吹き出す。
ガタガタ……。
リュウザンが激突した際に砕かれた壁が少しづつ崩れ落ちる。そしてバタンと虚しい音共にリュウザンがうつ伏せに倒れた。
服もボロボロで、甲冑などの防具は当の昔に弾け飛んでいた。彼方此方おびただしい出血で真っ赤に染まっている。なんとも無惨な姿だ。
それでもキッと睨み付ける瞳をして起き上がった。
「ちっ!心臓ってのはねぇのかよ……つくづくなんでもありの爺さんだぜ」
嘆くリュウザン。ジョーゼンは胸刺さった剣を左手で、杖を持ったままスーっと抜いた。そしてジョーゼンの前で剣が中に舞い……。
バリーン!!
鈍い音共に砕け散った。当然ながらリュウザンはマジかよと言わんばかりに愕然。
「さあ、頼みの剣は砕け散ったぞ。どうする?」
不適な笑みをしている。
(参ったぜ……こいつに勝てる気がしない……)
リュウザンは苦笑した。いや苦笑するしかできなかった。
・・・・・・・
ニーベ宮殿では、解放軍の奮闘により有利に戦況が運び城への侵入も果たしていた。
そしてサラによるアルスは無事だという吉報により、士気が爆発的に上がり奪還寸前までバルマーラを追い込んだ。
「まさかここまで追い詰められるとはな……」
指揮官のラージスが重々しく唸る。
「此処は一時引かれた方が……」
と敵兵。
「愚か者!わしを笑い者にする気か!?こうなったら、わし自ら一気に潰してくれるっ!!」
「ですが……」
「わしが逃げてどうなる?」
「その決意は見上げたものだ……バルマーラの指揮官は窮地になると自分だけ引くのが得意な奴ばかりかと思っていたがな」
「何奴!?」
ラージスと敵兵との会話に割り込んで目の前に現れたのはギュスターヴだ。遂に指揮官のとこまで詰め寄っていた。
「しかし、少し決意が遅かったようだな」
「むむむ……」
ラージスがたじろぐ。窮地を脱する策を、頭をフル回転させ考えるが、その時である。
ススススス……。
物凄い速さで迫る少年がいた。エルクである。彼の職はシーフ。足の速さは随一。
「風よ、力をっ!」
エルクが叫び手に持つ短剣を振るう。
その短剣から出現したカマイタチがラージスに迫る。この短剣は短剣フーリンと呼ばれる風の力を宿した短剣だ……正確には七大秘宝を模して作った紛い物。
「ぐっ!」
カマイタチにがラージスを囲み切り刻む。しかし服は裂けても、その下の皮膚には何の影響もなかった。
「命の恩人、ミンシア大司祭様の仇だっ!!」
「……異な事を……ミンシアをやったのはザーゼヴだぞ」
「バルマーラには代わりないっ!」
「それに魔導士たるわしにこんなチンケな風が効くか」
囲っていたカマイタチを吹き飛ばす。魔導士は当然ながら、魔法に対する抵抗が普通の人よりあるのだ。
「なにっ!?それなら直接……」
エルクは間合いを疾風のごとく速さで詰め直接を短剣をぶっ指そうとした。
『レイガ』
だがそれよりも早くラージスは氷系中級魔法を放ち、フーリンを持った右手を凍らした。そして、そのままエルクの首根っこ捕まえる。
「はははは……これで人質ができたわ」
「くっそー」
「前言撤回だな。そんなせせこましい策を用いるとは」
ギュスターヴが呆れた口調で発した。
「なんとでも言え!こいつの命が惜しかったら剣を捨てろ」
「……惜しくない、っと言ったら?」
「な、なんだとっ!?」
ラージスは驚くがギュスターヴはきっちり剣を捨てた。
「脅かせよって……」
しかしそれは後ろからとある気配を感じたからだ。ラージスはそれに気付かない。
「ふん甘いな貴様。その甘さが……」
ヒューン……ブスッ!
「ガハッ!」
ギュスターヴの後ろから飛んできた矢が右肩に突き刺った。だが、それだけでは終わらない。
ゴォォォ!……ブォォーンっ!!ドスッ!!
「うっ!」
矢は周囲の空気を取り込み、それを爆発させてラージスを吹き飛ばし壁に叩き付けた。
エルクも吹き飛んだが、右手が凍ったままでは、何もできないので、直ぐにその場を離れる。
ラージスを吹き飛ばしたのは伝説の秘宝の一つ風弓フージンだ。星々がが人に与えた七つの秘宝の内の一つである。
七大秘宝は基本的に弟子へと引き継ぐ。現所有者が認めた者にしか扱えない。もっとも七大秘宝には意思があるので現所有者が認めても扱えない事もある。または現所有者が死亡すると七大秘宝の意思だけで所有者が選ばれる。つまり誰が選ばれるかわからない。それ故ジェリドを迂闊に殺す事をしなかった。
この所有者が決っている為に誰も扱えない弓と、エルクが持っていた紛い物故に誰も使いこなせない短剣フーリンは、ニーベ宮殿の宝物庫に保管されていた彼等が愛用していた武器である。
「最近こんな役回りばかりだな」
矢を放ったジェリドがボヤき後ろに視線を送った。
「おのれぇーっ!!『星々よ、我が呼び掛けに答えよ……』」
ラージスが詠唱を行おうとする。上級魔法で一気に蹴りをつけようと考えているのだ。
タタタタタ……。
だが、それよりも速くジェリドの後ろから現れた影が、ラージスに詰め寄り、両手持ち用の大きな剣を首元に当てた。
「ぬぅ!!」
「動かないで!剣を持つのは久しぶりだから、手元が怪しいの」
「貴様……ユアンっ!!」
「其処までのようでございますわね。大人しく投降して頂けませんか?」
「ぬぅ……貴様はロッカ姫。前線まで出てくるとは」
ジェリドの後ろから更にもう一人。優雅に現れたロッカは扇子を懐から取り出し口元に当てる。
「あら此処は私の城ですよ?何か問題でも?」
「此処までか……」
「ならばもう一度申します。投降して頂けませんか?悪いようには致しません。ユリアン=ロッカ=ユグドラシルの名において保障致しますわ。それでも尚続けるのでしたら……私自ら裁きを下しますっ!」
扇子を突き出し、最後にロッカらしからぬ強い口調で言い放つ。
「……わかった。従おう」
こうして聖王国ユグドラシル・ニーベは無事に奪還された……。
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奪還された宮殿に、サラの肩を借りたアルスがやってきた。後ろからディーネが後を追っている。
「アルス王子!てめぇ無事だったか」
最初にアルスが来た事に気付き近寄って来たのはイスカだ。そして次々にアルスの元に仲間達が集まってきた。
「大丈夫か?アルス殿」
ギュスターヴが安否の声を掛ける。
「私は大丈夫だ。それより…リュ、リュウザンは?」
「此処にはいませんよ!あのバカどこほっつき歩いてんだか……」
ソラが呆れた口調で応えた。
「えっ!?……お願いだ!リュウザンを……リュウザン助けてくれっ!!」
訴えるようにアルスは叫んだ……。




