第四話 王女は英雄を拒絶
どうでも良いですが今日は私の誕生日です
また老けたなと思いますね。
ぶっちゃけ二十歳以降は歳を取りたくないですね(笑)
解放軍が構える野営地から、少し離れた森の中の地面に五芒星が描かれていた。描かれていると言っても、ただ手で描いただけである。
魔導士がソウテン等を使う際に魔法陣が現れるが、その魔法陣というのが五芒星だ。五芒星は魔導の力を増幅させる力がある。
よって自身の魔力に見合わない魔法を行使する際に描く。もっとも戦闘中となるとそんな余裕はないのだが。
また魔法の契約をする際にも五芒星を描く。今回はその両方の為に魔法陣を描いた。
この魔法陣の上に人がいる。一人はディーネであるが、彼女は俯いて涙を流し沈んでいた。そして、その彼女の両肩を抱き支えているサラ。
「大丈夫かディーネ?ソウテンは、自分以外を転移させると、かなりのマナを消費すると聞く」
努めて優しく声を掛ける。
ディーネはマナを大きく消費したが為に沈んでわけではない。勿論それなりに消費はしてる。新たな魔法を契約し他者を転送したのだから。
契約するだけでもマナを消費する。そして直ぐその後、ソウテンを唱えた。彼女のマナは残り少ない。しかしその程度の事で涙を流してるわけではない。
「……サラ」
「ん?」
「ほんとにこれで、良かったのかな?」
「………」
サラは何も応えない。いや軽々しく応えられないのだ。
「リュウザンはきっと……」
―――――
「で、何よ?こんなとこに呼び出してぇ!くだらない事だったら承知しないわよっ!!」
毎回のようにディーネの眼尻が吊り上がっていた。もっともアルスがいない焦燥感が余計にそうさせているのもある。
リュウザンはディーネを野営地の近くにある森の中へ呼び出していた。
「お願いがございます。私めをアルス王子のいる場所に転送して欲しいのです」
「は?」
まさに、は?である。そんな事自分が知るわけがないとディーネは感じていた。
「直ぐ近くかと思います。それほど負担にかからない筈でございます」
「何言ってるの?私はアルス様の居場所なんか知らないわよっ!」
「ディーネ王女はご存じの筈です。というより、ディーネ王女以外は無理がなのです」
「どういう意味?」
「ディーネ王女がご存知の俺の死に場所です。其処に王子がいらっしゃいます」
この突然の一言により、彼女の視界が真っ暗になってしまった。
「……あ…あ……」
一歩二歩とディーネが後退る。フラフラと身体が揺れ平衡感覚が無くなったような錯覚が起きる。
今にも崩れ落ちそうなくらいの衝撃がディーネに走る。何て言えば良いのか戸惑う。
「気付いてないと思ってましたか?私はソラと違って、女性の視線の意味くらい理解しているつもりでございます」
リュウザンは左眼を瞑りウインクした。
「未来予知をしてくださった時からディーネ王女は死に行く者を見ておりましたから。ずっと縁起でもない話だと思ってました」
ディーネの表情がどんどんこわばりイヤイヤするように首を横に振りやがて俯く。
「……が、今はそれが役に立ちます。逆転の発想でございます。私が未来予知でアルス王子がいる場所。其処が私が今行かなければならない場所です」
「……リュウザン」
ディーネ俯いたまま、何とか彼の名を絞りだす。正直何も考えたくない。当然の話だ。死に場所に転送してくれと言っているのだから。
「時間がない。頼むっ!」
彼女の顔を下から覗き込み一心に訴えた。
「でも…でも…そしたら…」
彼女は今にも泣きそうな勢いだ。
「大丈夫です。誰が好きこのんで、死にに行くもんですか。俺はソラより先にくたばらないと決めてるんだ」
リュウザンは、笑顔で応えた。
そしてこの会話をずっとサラは木陰から聞いていた。二人が気になり後を付けて来ていたのだ。
―――――
「本当にこれで……」
ディーネは俯き自分がやった事に悩み苦しむ。
「ディーネ、今は信じようリュウザンを」
ディーネの肩を抱いた腕に力が籠る。
「……サラ」
ディーネの左肩に置かれたサラの右手に自分の右手を添えた。
(ディーネにこんな重みを背負わせやがって……何かあったら、ただじゃおかないぞ。だからちゃんと帰って来いよ)
サラは胸中リュウザンを強くを案じた……。
・・・・・・・
「全軍突入です。雑魚に構う必要はございません。一気に中枢を突くのです」
朗々たる声音を発するロッカの指揮の元、奪還戦が再開された。アルスを欠いている今、小細工無しの全軍による力押しだ。
ドドドドドド……っ!
騎馬隊が真っ先にぶつかり合う。
戦争……それは哀しき因果とは良く言えたもの。アルスがいないが為に士気が低下。それでも今まで、この為にやってきたのだから、勇猛果敢に立ち向かう。
部隊の中央にいるロッカも少しでも士気をあげようと叫び続け、攻撃魔法も唱える。
『精霊達よ、御身に呼び掛ける。大地をも貫く爆雷となりて我に力を与えたまえ……ラライヤ』
「前進するのです!敵が我等に勝る所等ございません!ニーベを取り戻しましょう」
ロッカが扇子を振り降ろしたり、突き出したりと振り回す。当然ながら全軍に声が届く中央にで指揮を取る。
時に自ら攻撃魔法を使い、回復魔法を使う。ロッカは元々マナが少ないが、それでもあらん限りの力を尽くす。
声が届き、援護出来る場所。そして何より何処から攻撃が来ても彼女を守れる場所。中央は理にかなっていた。
ただ馬に乗れなのでギュスターヴと相乗り。彼が護衛し彼が馬を操る。難点を言えば指揮官として恰好が付かないとこだろう。
戦争では、やはりいくつもの血が吹き荒れる。一人、また一人、また一人と倒れていく者達。戦いの歴史はいつになっても潰えぬのだ……。
・・・・・・・
何処かにある砦では激しい戦闘が繰り広げられていた。対峙するは草人のジョーゼンと閃光の麗豹ことリュウザンである。その場にアルスもいるが剣を杖替わり立ち上がるのが精一杯。
ジョーゼンが巨大な腕を振るう。手に持つ剣で抑えるリュウザン。
「くっ!」
しかし抑えきれない。
ヒューン……ガンっ!!
「ぐはっ!」
リュウザンの身体は吹き飛ばされ壁に衝突し吐血。
「リュウザンっ!」
アルスは傍に行きたいが立ち上がってるだけで動く力は残っていない。
「……流石にやってくれるぜ」
リュウザンは吐血した血を左腕で拭う。
「どこまで救いようの奴らだ。アルスエードよ、イクタはその気になれば大陸を手に入れる事をできた。だがそれをイクタは望まなかった。奴が望んだのアルテミス王女ただ一人だった……が、それさえも叶わぬ程、人間は身勝手な存在。つまり例え、お前がガディウス様を倒し、再び大陸を“解放”したとこで、人間の本性は変わらない。其処までして取り戻す価値があると本当に信じられるのか?」
「信じられるさ。確かに人間は不完全で過ちを繰り返してるかもしれない。だけど、だからこそ本当に大切なものを求めて、もがき続ける事ができるんだっ!その想いが有る限り、私は信じる事ができる。やがてこの大陸に来るべき安らぎの時代を何人であっても、それを汚せはしないっ!!」
アルスの言葉一つ一つに力が籠る。リュウザンも、その言葉を聞き顔が綻んだ。
「愚かしい……そのガディウス様が人間に造られた存在だという事も知らぬクセにっ!」
「な、何っ!?ウソだっ!!」
衝撃の事実を知り動揺を隠せないアルス。
「冥土の土産に教えてやろう…ガディウス様は、当時の聖王国ユグドラシルの者達によって造られた。大陸を支配する為になっ!!」
「そんな事に騙されるかっ!!」
「信じたくなければ、それも良い。そして自分の国の失態を晒したくないが故に、王女は英雄を拒絶したのだ!なんとも身勝手な連中よ!」
「うるさいっ!!」
今まで信じれ来たものが根底から崩れる気がして思わず叫ぶ。それだけの衝撃をアルスに与えた……。




