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戦慄のイクタベーレ ~敗退せし者達の母国奪還の軌跡~  作者: ユウキ
第六章 麗豹の忠誠
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第三話 アルスエード絶体絶命

 気が付くとアルスは見知らぬ所に倒れていた。先程まで、ホリン達と共に奪還戦をやっていた筈なのに……。


「此処は……?」


 アルスはゆっくり立ち上がり、辺りを見回した。建物の中だという事はわかる。

 地面に魔法陣が描かれている事から魔導士が精神集中する為の部屋ではないかと推測できた。


「フフフ…少々荒っぽい招待ではあったが邪魔が入ると困るので」

「誰だ!?」

「ようこそアルスエード王子!ここはお前の死に場所だっ!!」







 ・・・・・・・


 解放軍の野営地に続々と仲間達が集まって来ていた。


「こっちは上手く行ったぜ!そっちはどうだ?ホリン」


 とソラ。


「う~ん……最悪だわな」

「何かあったのか?」

「アルスが戦いの最中、魔法陣が現れ消えたんだよ」


 そうホリン達は突如アルスが消えた事により、撤退を余儀なくされたのだ。


「馬鹿な!そんな筈ないだろっ!」

「見失ったんじゃないのか」


 リュウザンも口を挟んだ。

 二人共、驚きを隠せないでいる。


「それはない。確に俺の目の前で……あれは時空魔法の回収魔法リゲインだな。ってわけで、アルスがいなきゃ統制が取れねぇ。城攻めはの方は一時棚上げ状態だ」

「モタモタしてるとせっかく引き剥がした敵の部隊が戻ってくるぞ!しかもザーズの爪のおまけ付きでな」


 イスカも話に加わってきた。


「じゃあどうすんだよっ!?アルスほったらかしで進めちまうのかい?」


 ホリンが怒鳴る。

 冷静に話していたが目の前で消えてしまった事から、本当は誰より戸惑っていた。


「やりなさいよっ!」


 彼の問いに応えたのはディーネだった。

 一同は彼女を注目。


「やりなさいよっ!今やらないと後悔するのよ。あんた達はこの為に頑張ってきたじゃないのっ!?」


 相変わらず口が悪くツンツンしている。


「しかし、ディーネ姫さんよ……」

「アルス様なら絶対無事でいらっしゃいます。大丈夫です。今までだって……」


 気付くと彼女の表情に変わっていた。とても辛そうというか無理しているのが、はっきり伝わる。


「……それにアルス様ならそう指示します。だって……アルス様はその為に……」


 笑みを見せながら言う。だが、無理に作った笑顔だとわかりとて痛々しい。


「それに元々最終的に指揮を取るのは(わたくし)の役目。補佐してくれる筈だったアルス様がいらっしゃらないのは痛手ですが、此処は(わたくし)の城です。やり切って見せます」


 ロッカも話に加わり、気丈に振る舞う。


「……わかった。じゃあ改めて城攻め開始だっ!」


 ホリンが言うと全員準備に取りかかった。


「では、ロッカ姫さんあとの指揮を宜しく。俺も出来る限りの事はするから」

「承知致しましたわ。敵部隊を離れている隙に堂々と正面から、(わたくし)の城に帰りましょうか」


 何でもない事のように言ってのけるが、本当はロッカが一番聖王国ユグドラシル取り戻したいのだ。しかし士気に関わるので今まで成り行きを見守っていた。


「ディーネ王女、ご安心ください。王子は必ず私が見つけ出してご覧に入れます」


 朗らかな笑みで言うリュウザン。


「リュウザン……」

「ですから、少しお付き合いください」

「心当たりでも……」


 とソラ。


「此処は任したぞ」


 心当たりについて何も答えずリュウザンはディーネを連れて森の中に入っていった。







 ・・・・・・・


 見知らぬ所に飛ばされたアルスはピンチを迎えていた。対峙するのは人型人間外生物、草人のジョーゼンである。

 そして、ジョーゼンは一度アルス達の前に姿を現し、巨大な竜になり猛威を奮ったが、今回は狭い部屋である以上、そんな巨体になれないのは一目瞭然だ。

 しかし、その狭い部屋だからこそ、圧迫感があり緊迫した空気が流れる。また一度戦った時は仲間達が総攻撃しても無傷だった上に今回はアルス一人。当然ながらアルスは戸惑っていた。


「フフフ…この時を待ちわびたわ。この手でお前を八つ裂きにできる時をな……」


 そう言うとジョーゼンのフードから左腕が飛び出てきた。いや(つる)だ。その蔓が何十本も現れ、やがて絡みつき、巨人の腕とも言えるような大きな腕に変わった。

 アルスはそれだけで恐怖し後退る。やがて背が壁にくっつくほど追い込まれていた。


「フフフ…“英雄殿”にはいささか不本意な死に場所か?」


 蔓の腕が伸びてアルスを襲う。彼はとっさに首を右に曲げた。そしてガッ!という鈍い音と共に彼の左頬を擦りながら滑り後ろの壁に腕が突き刺さる。

 右に曲げたお陰で直撃しなかったわけではない。ジョーゼンが嬲り殺しにしようと遊んでいるのだ。


「しかし、それがお前の血の宿命。“英雄”イクタの死が決して幸せなものではなかったように……」


 なおもジョーゼンは悠長に上舌を並べる。


(イクタが幸せではなかった……?一体何の話だっ!?)


 アルスはキッ!とジョーゼンを睨みつけ胸中疑問を感じていた。


「知らぬのか?フフフ…勝手なものよ人間という奴は……都合の良い事ばかりを伝え説くものだ。二百年前ガディウス様を封じた後、人間共に祭り上げられた“英雄”イクタは実は良いように使われていた()に過ぎなかった。それ故、孤独な死を迎えたのだ」


 再び巨大な腕がアルスを襲う。


 ドンッ!


「がはっ!」


 腹に直撃し吐血してしまう。


 ドカドカドカドカドカドカドカっ!!


「ぐはっ!がはっ!」


 地面に足が付いておらず、巨大な腕で連打で殴られ続けた。身に着けてた甲冑は弾け飛びアルスの背にある壁は人型に抉れて行く。

 そして連打の巨大の拳が収まると、その腕を戻さずそのまま。アルスは巨大な腕と壁に挟まれたままサンドウィッチ状態にされる。


「フフフ…苦しいか?苦しむが良い。それがお前に相応しい死だ。そうだ知らなかっただろう。イクタは何故生涯妻を娶る事をしなかったか?それは、婚約していた当時のユグドラシル王女アルテミスにガディウス様を封じた瞬間、掌を返したように拒絶されたからだ。何故なら元々、アルテミスはイクタを手駒として利用していたに過ぎないからだ。それ故、イクタは人間を呪い、その思いがガディウス様の封印を弱めたのだっ!フフフ……」

「……黙れ!ゲホゲホっ……そんな事に騙されるものかっ!」


 とは言ってるものの知られざる歴史を聞かされ動揺が走っている。しかも連続で殴られ血を吐き続ける始末。

 巨大な腕に押さえ付けられて、身体に激痛が走りながらも、それでもアルスはジョーゼンを睨みつけた。


「フフフ……まあ良いわ!何も真実を知らずに死にたくばそうしてくれる!苦しみ抜いて死んでいくが良い!!」


 ジョーゼンは一旦腕を引く。それにより抑えがなくなったアルスは地面に落ちて這いつくばった。


「はぁはぁ……そんなものに、はぁはぁ……惑わされない」


 剣を杖替わりにして立ち上がる。

 ジョーゼンはトドメと言わんばかりに巨大な腕を引く。そして勢いを付けアルスを襲う。


 プシューン!!


「ガハッ!何だっ!?」


 その刹那、腕がアルスに届く前にジョーゼンの背中が斬られた。


「つくづく恐ろしい草人だな。だが我等が王子にこれ以上、傷付けさせないぜっ!!」

「……リュウザン!!」


 突如ジョーゼンの後ろに現れたのはリュウザンだ。剣を右手で持ち、刀身を右肩に抱えていた。その様、正に威風堂々。


「王子!遅くなりまして申し訳ございません。ですがもう心配要りません。後はこのリュウザンにお任せください」


 リュウザンはアルスに向かって頭を垂れた。


「貴様ァ!どうして此処がわかった?この砦一帯(・・・)は結界を張り巡らせている。そう易々と知れる筈がない」


 ジョーゼンは驚きの声を上げる。


「受付で聞いたのさ。綺麗なお姉さんが教えてくれたぜ」


 ジョーゼンを嘲笑い左手で天を仰いだ。


「戯言を……まあ良いアルスエード共々此処で果てるが良いわっ!」


 巨大な腕がリュウザンを襲う。だがリュウザンは手に持つ剣で防いだ。


「くっ!なかなかやりよるなっ!!」

「お前が大した事ないんだろ?」


 再び嘲笑って見せた。


「ぬう……ナメた事をっ!!」

「ナメた事はどっちだっ!?王子を傷付けた償い、きちんとつけて貰うぜっ!!」


 笑みがピタリと止まる。リュウザンの瞳の奥では深い怒りが渦巻いており、声音にも激しい怒気が孕んでいた……。

キリの良さを考えしばらく短いです

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