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戦慄のイクタベーレ ~敗退せし者達の母国奪還の軌跡~  作者: ユウキ
第六章 麗豹の忠誠
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第二話 囚われの少年と女

ブックマークありがとうございます

下手糞なもので、ここまで来てやっとですよ(笑)

ここからキャラの掘り下げとか入り、私も筆が乗って来るとこなので、頑張って面白くしていきます

 ニーベ宮殿のとある一室に男と女の二人の姿があった。

 男……というのには若い。少年と言うべきか。少年の方は部屋の入口の片膝を付き扉に耳を当て、女の方は椅子に腰を掛け、少年を見守っていた。

 この部屋にベッドが三つ、椅子が三つ、そしてテーブルが一つ、それから水場、それだけしかない。

 実は彼等はジェリドと同じユグドラシル騎士団。ジェリドだけを逃がし彼等は捕まったままだ。


「エルク!どう?様子は」


 女が話掛ける。


「慌ただしい……奇襲か?」


 エルクと呼ばれた少年は扉に耳を当てながら応えた。

 歳は16。薄い緑の髪でかなり短く少し天然の入った頭だ。


「……おそらくロッカ様が解放軍を組織して帰ってきたのね」

「解放軍ですか?ユアン隊長」


 ユアン隊長と呼ばれた女は、聖王国ユグドラシルにあったいくつもの部隊の一部隊長だった。今ではユアンの部隊以外全滅した。もっともユアンの他にエルクとジェリドしかいないが。

 歳は24で、まだ若くやっかみもあったが、部隊長になれる程の実力がある。

 髪は青色で中分にしており耳にかかる程度と短い。しかも女性だというのにバラついてる。それもその筈、三年間幽閉されていたので髪など適当に切っていた。

 ユアンは立ち上がり胸に両手を添える。ちなみにかなり大きい。


「ええ……これで報われる。このユグドラシルの為に散っていった多くの仲間達が」


 安堵の吐息が零れた。

 エルクも立ち上がり、ユアンの方を向いた。


「ですが、安心でませんよ。こうなった以上、敵は我々を放っておく筈ががありません」

「構わない。此処で倒れる事になろうと悔いはないわ」

「相変わらず強いですね。しかし、ユアン隊長が亡くなれば、リオンさんが哀しむのではないですか?」

「……リオン」


 リオンという名を呟き、遠くを見つめるような眼をするが、直ぐにエルクに向き直した。


「そうね。貴方もティアさんって方が哀しむね」

「ティアか…生きてんのかな?……まあそういうわけですから慌てないで、じっと機を待ちましょう」

「そうよね。ジェリドを上手く逃がしたから、きっと彼が助けに来てくれる。そう信じましょう」

「あいつに助けられるのは癪ですが」


 エルク肩をすくめ苦笑する。


「ふふふ……皮肉屋なとこはあるけど私の部隊では一番機転が利いていたでしょう?」

「まあ……」

「だから少なくても上手くロッカ様と合流して力になってるわ」

「そして俺達は放置してると」

「もう……ほんと貴方はジェリドに対して素直になれないんだから」


 ユアンのクスクス笑う声が木霊した。







 ・・・・・・・


 ニーベの南に敵軍が陣を構えていた。リュウザン達が東で引き付けた敵軍は、バルマーラからの派遣軍だったが、此処にいる敵軍は元々ニーベに配備されていた兵達である。

 しかし、兵達は緊張感がない雰囲気をしていた。


「あ~あ。俺もあっち行きたかったな」

「だな、反乱軍なんて所詮は少数だからな。手柄を立てるには持ってこいだったのによ」


 どうやら東の森にリュウザン達が現れた事により、此方には来ないと思っているようだ。しかし、実は来ていた。


 ドゴォォン!……シュィィィンっ!!


「うわぁ!」

「何っ!?」

「何だっ!?」


 いきなり半径5mある巨大な光の球体が落ちて来て、光の円柱が(ほとばし)った。瞬く間に陣は乱れる。これは光の超魔法ゼクトによるものだ。

 そして、この状況を少し離れた岩の上に立ち、おでこに右手を添えて、眺めている者がいた。言うまでもなくゼクトを不意打ちでぶっ放したユーリだ。


「こんなとこかしら?」


 このユーリの手加減抜きのド派手なゼクトを使った事にアルスとリビティナが唖然。


「ち、ちょっと派手過ぎない?もっと慎重にやった方が……」


 リビティナが冷や汗をかきながら言った。


「何言ってるの?こういうのは最初のドツキ(・・・)が重要なんじゃない。ね?アルスエード様」

「ん?……まあね」


 とは応えているが顔は引き攣っている。


「とりあえず効果はあったみたいだぜ!ほら奴ら色めき立って向かってくる」


 しかしジェリドは平然としていた。


「よし皆!狙いはあくまでもニーベの奪還だ。シューター部隊の殲滅などの目先の戦闘にとらわれ過ぎないように」


 アルスは頭を切り替えて指示を出す。


「悪いが接近戦は管轄外だ。俺とリビティナは援護に回る!」


 ジェリドはリビティナと共に後方に下がった。


「それじゃ、ぼちぼちおっぱじめるぜっ!!」


 開戦の合図はやはりホリンだ。








 ・・・・・・・


 首都ニーベの東にある森から目立つように進軍し、囮になったリュウザンとソラが率いるライアーラ騎士団。

 しかしリュウザンとソラを残し騎士団は撤退してしまった。はっきり言って彼等だけでは無謀過ぎるように思える。

 相手はざっと見積もって100騎はいるのだ。そして、あと数百mというところで彼等の俄然に迫る。


 ドーンっ!!

 ドーンっ!!

 ドーンっ!!


 シューターによる激しい攻撃が続く中、馬に乗り、たくみにかわすリュウザン達。シューターの攻撃を避けるだけなら、大部隊より数人のが良いのだろう。

 だが、相手の騎馬兵が少しづつ、少しづつ此方に向かって来ていた。


「そろそろだな」


 リュウザンがシューターの攻撃を避けながら呟く。


「ああ……だけど本当に来るのか?」


 ソラも同じシューターを避けながら応える。


「さあ」

「さあってお前なぁ」

「来なかったら、退却すれば良いさ……もう半分成功したんだし」

「……まあな」


 その時である。


 ドドドドド……。


 西の方角から馬の足音が轟いた。


「やっと来たか」


 ソラの顔に笑みが溢れる。

 馬の足音と共に西から現れたのは、なんとザーズの爪だ。しかも先頭をきっているのはイスカ。


「よし!森に退くぞ」


 リュウザンが叫ぶとソラと一緒には森の中に入っていった。

 そして、ニーベ派遣軍とザーズの爪は同士打ちを始めた……。


「ハァハァ……」


 急いで駆け付けた為にイスカは疲れきっていた。


「お疲れさん」


 リュウザンが労う。


「しかし、良く誘い込んだな」


 ソラが感心した。


「どうやったんだ?」


 とリュウザンが聞く。


「ハァハァ……とりあえず俺様が奴らに捕まってやって、頭らしき奴の前に突き出された時にこう言ったんだ……俺様はただの魔導士。反乱軍とは関係無い。だが俺様の魔導の力を利用したかったらしく、脅され無理矢理コキ使われていたんだ。だからもし俺様を見逃してくれるなら、良い事を教えるぜ。奴らは敵の混乱を誘発させる為か、バルマーラ軍と同じ格好している。良かったら奴らが戦う戦場に案内するぜってな」

「よくそんな単純な手に引っかかったな」


 少し呆れた様子のソラ。


「奴ら度重なる失敗で判断力が鈍くなってんだよ」

「なるほどな」

「にしても、これを考えたアルス王子はかなりの詐欺師(・・・)だな」


 イスカはそう言うとソラはイスカを殴りたくなる衝動を抑え拳振るわせる。


「……せめて策士って言えよっ!!」


 この作戦は。まず目立つように東の森から進軍。敵を誘い込む。その間イスカはザーズの爪に捕まる為にニーベに戻っていた。

 ユーリを逃してしまった事、アルスの捕獲失敗、再度ユーリ捕獲…これも失敗。失敗続きのザーズの爪は焦りを感じ、そんなザーズの爪に単純だが的確な話術で誘い出し、バルマーラ兵達と同士打ちを狙ったのだ。

 しかしバルマーラ兵は軍人、ザーズの爪は盗賊上がりののごろつき、同士(・・)と呼ぶには難しいが、アルス捕獲をしようとした際に裏でジョーゼンがアルス達を監視して、それをザーズの爪に流した事から同士って言葉は相応しいのかもしれない。


 この一見変わった作戦だが、成功の二文字に終わり被害を出さずに済んだ事からアルスは相当、キレる事が伺える。前にも自ら囮という大胆な策をやってのけてたのだし。

 ただのこの作戦は、一つ大きな穴があった。それは、ジョーゼンがアルスを監視しているという事。この策をザーズの爪に流されたら無に帰すとこだった。

 しかし、運が良かったと言うべきか、ジョーゼンは次の行動に移ろうとしてた。とは言う物の実際はジョーゼンが監視している可能性も確りアルスは考えており、その場合はリュウザン達が撤退していただけだ。

 しかし作戦は順調に進み、焦りを感じたラージスは見せしめに捕虜となったユアンとエルクを処刑する事になった……。








 ・・・・・・・


 ニーベ宮殿の城壁を背にユアン達は立たされ、ユアン達に向かって、弓兵が八人並ぶ。それとその後ろに隊長らしき者がいる。

 なんとも残酷……二人相手に八人もいるのだ。


「遂に俺らも終わりですかね」


 城壁を背に両手を頭の後ろに添えたエルクが呟く。


「ごめんなさいね…シェリドだけではなく貴方も逃して、ティアさんに会わせてあげたかったんだけど……」


 ユアンも城壁を背に両手を頭の後ろに添えている。


「隊長こそ、リオンさんと再会したかったんでしょう?」

「ええ…でも彼ならわかってくれるわ」

「弓隊構え!」


 弓兵が一斉に構え始めた。


「射てーっ!!」

(リオン……ごめんなさい)


 ブスっ!!


 ユアンもエルクも終わったと思った。しかし、放たれた矢が刺さったのはユアン達ではなく、なんと敵弓兵だったのだ。


「誰だ!?」


 敵弓兵達は辺りを探し始めた。


「彼処だっ!」


 敵弓兵の一人が城壁の上を指差す。


「間一髪ってとこだな。もっとも解放軍の援護をほっといて、駆け付けたんだ。間に合って貰わねば立つ瀬がないがな」

「あれはジェリドかっ!?」


 エルクが驚きの声を上げる。

 城壁の上に立っていたのはジェリドだった。


「侵入者だやれーっ!」


 弓兵達は一斉にジェリドを狙い始める。


 ヒューンヒューンヒューン……。


 だが、彼は城壁という狭い場所で華麗に矢を躱す。


「無駄に射っているが、余程軍資金に恵まれているんだな。だが、それじゃ実戦の役に立たない……ぜ」


 ヒューン……ブスっ!!


 そして、ジェリドの方は確実に敵を射抜く。


「もっともこんな障害物も何にもない所で弓兵が射ち合うのも、ちと芸のない話だがな」

「ええい!何をしておるか!?たかが一人に!」

「いや二人だが?」


 上空より声がした。


「あれは……?」


 真っ先にユアンが上空で、太陽を背に此方に接近する人影を発見する。太陽の光ではっきり見えないが確かに人がいた。


『ラライヤ』


 ダン!ダン!……ダダダダっ!!


「うわぁぁ!」


 接近していた者は、空中から中級雷系魔法を詠唱破棄で唱え、極太の雷が落ちそれが縦横無尽に駆け一気に敵兵四人を薙ぎ払った。


「き、貴様は!?」


 残りの二人が腰に携えていた剣を抜く。ラライヤを放った者も着地と同時に剣を抜いた。


 プシュプシューンっ!!


 そして瞬く間に、残り二人を斬り裂いた。


「くっ!」


 指示を出してた隊長らしき者は一目散に逃げて行く。


「逃がさぬ……『ファーガ』」


「ぐぁぁぁ……っ!」


 それを炎系中級で焼き尽くした。


「見事なものだ。流石は“無敗女王セイランローヌ”」


 ジェリドはいつの間にか城壁から降りている。


「ジェリド、其方はアルス王子の援護をしていたのではないのか?」

「まあ昔の同胞の安否が気にかかったのさ。援護はリビティナに任せてきた」

「ジェリド……」


 エルクが歩み寄って来た。


「無事で何よりだエルク」

「お前に助けられるとはな」

「嫌なら良いんだぜ。お前だけ残して行っても」

「……それは勘弁かな」

「さあ急ぎなさい。援軍が来る前に逃げるのです」


 セイラはユアンに声を掛けた。


「貴女が無敗女王……でも何故!?」


 ユアンは驚きに満ちた表情を見せる。無理もない聖王国ユグドラシエルを最後に陥落させたのはセイラ率いるルーンナイツだったのだから。しかしセイラはそれに対し何も答えない。


「セイランローヌ王女も解放軍に入ったからさ」


 代わりにジェリドが答えた。


「ジェリド……しかし彼女は……」

「気持ちはわかるがユアン隊長、これはロッカ様も承知の上。今は抑えて」

「……ロッカ様が承知しているのなら今は抑えましょう」


 苦虫を噛み潰したような顔をするが、とりあえずは収めたようだ。

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