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戦慄のイクタベーレ ~敗退せし者達の母国奪還の軌跡~  作者: ユウキ
第六章 麗豹の忠誠
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第一話 大陸の未来はこの俺が決める

 ディーネ王女がご存じの、俺の死に場所(・・・・)でございます。


 俺はソラより先にくたばらないと決めてるんだ。



 ご自分の行かれる道を信じてください。


 これからもずっと……。




 俺の掛け替えのない主君なんだ。


 その邪魔をする奴は殺すしかないっ!


 どんな事があってもなっ!!







 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「反乱軍が東の森より姿を現したとの報告がありました」


 ニーベ宮殿でラージス指揮官に報告が行われていた。


「で、数は?」

「まだわかりません」

「東の森か……よし!ジョーゼンの派遣軍にも通達!全軍を持って迎撃にあたれとな」

「全軍ですか?」

「そうだ!その為の派遣軍の筈だ!バルマーラに仇名す輩共を見事に潰して貰おう……そういえばマルスト殿はどうした?」

「それが今朝から姿が見えません……どちらかにお出掛けになられたようです」

「のんきなもんだな」







 ・・・・・・・


 東の森の外側ではライアーラの騎馬隊がずらり並んで前面に出していた。森の内側で指揮を取っているのは、リュウザンとソラだ。


「良い天気だなぁ……」


 ソラは空を見上げ話始めた。


「……本当にこれで敵がくんのかな」

「出て来て貰わねば困るさ……せっかく陣をはって待っているんだ相手に無視されて笑い者だ」


 木に寄りかかり腕を組み、応えるリュウザン。


「確に……アルス様達は大丈夫かな?俺も向こうの部隊にいたかったな」


 ソラがボヤく。


「ふん…王子は大丈夫さ。あの人は強い方だ!自分の弱さを見つめる事ができるくらいな」


 リュウザンはすました態度で応えた。


「どうしたんだぁ?リュウザン」

「ふん!」


 とその時である。


 ドーンっ!!


 轟音が聞こえてきた。


「何だ!?」


 とソラ。


「敵のシューターです」


 ライアーラ騎士から報告が入る。


「どうやら笑い者にならずに済んだらしいな」


 とリュウザン。


「ソラ隊長!リュウザン隊長!如何なさいますか?」


「予定通りだ!後方に下がれ」


 ソラが指示を飛ばす。


「はっ!了解しました!!ご武運を」


 こうしてライアーラの騎馬隊は撤退して行った。


「しかしシューターか……嫌な事を思い出しちまうぜ」


 リュウザンが呟く。

 なおシューターとは別名ロングアーチと呼ばれ、遠くの敵に矢、石、火気などを飛ばす移動砲台みたいなものだ。


「二年前のイクタベーレ敗北の……」


 とソラが続く。

 二人の表情は暗くなっていった。


「ああ…シャルスが背後にシューター部隊を潜ませて裏切った……」


 そう同盟国シャルスの裏切り際にシューターで、イクタベーレ軍の陣を乱されたのだ……。








 ・・・・・・・


 東の森でリュウザン達が戦ってるとこを一望できる南東の丘にマルスト214世の姿があった。


「なるほどな。騎馬部隊をニーベ周辺から引き離す策か……面白くないが良い策だ」


 どうやら高見の見物っという感じである。


「イクタベーレのガキめ……しかし、こうも簡単に乗せられるとはな……ん?」


 その時、マルスト214世の視界に何かが入る。


「ふん…コリンか。奴も来ていたのか。だが奴も高見の見物とは一体何を考えているのだ?」


 マルスト214世の視界に入ったの優雅に白き翼を広げ、美しく空を駆けるコリンの天馬だった。








 ・・・・・・・


 ドーンっ!!


 南の方でシューターの轟音が馬で移動していたアルス達にも届いた。


「どうやら上手くいったようですね」


 リビティナが安堵する。


「そうだね…ここまでは」


 アルスは笑みを浮かべ返す。


「後は此方がニーベ周辺に残る軍隊を叩く番だ」


 とホリン。


「ああ!(確にそうだ…でもこの胸騒ぎはなんだろう……)」


 アイルはジョーゼンの視線を感じて仕方なかった。


「おやおや…先陣をきるつもりだな、無敗女王さんよ」


 ホリンが空を眺め呟く。

 空ではウィングの魔法をかけて、その女性ならではの細身の身体を真っ直ぐ大地に向け、両手を広げ華麗に舞い先行するセイラの姿があった。

 彼女は先行すると先程、マルスト214世がいた丘に降り立つ。


「点在する三つのシューター部隊か。さて、どれから潰すか……」


 彼女は敵の陣の配置を見ながら策を考え始める。


「相変わらず慎重だな」


 いきなり後ろから聞き覚えのあり、それでいてもっとも聞きたくなかった声が響いてきた。


「どんな戦いでも、悪魔のごとき細心さで臨み、鬼神のごとき大胆さで事を運ぶ。ふふふ……変わらんなお前は……」


 不適な笑みを浮かべ、一歩一歩近付いて来る。彼女は恐る恐る後ろに振り返った。


「随分久しぶりだな。セイラ」

「……父上!」

「ふふふ……(ふもと)ではアルスエードのガキが奇策を巡らしているようじゃないか」


 不適な笑みを浮かべたマルスト214世が話始める。


「悪くないな。現にラージスは、それに気付かず踊らされているからな。流石はお前が見込んだ男だけあるなセイラよ」

「父上!もう一度、思い直しては頂けぬか?私はアルス王子の進む道に大陸の未来が拓かれると思っております。ですが王子はまだモロい。自分の弱さを使命感で隠していますが、あまりにもモロ過ぎるのでございます……ですから父上の力を貸してください。そうすればきっと……」


 セイラは父に深々と頭を垂れた。本当は屈辱的ではある。セイラに取って父とは幼少の頃からそりが悪い。それでも頭を垂れたのだ。


「馬鹿な事を言うなセイラ!大陸の未来だと?そんな奴に何ができるというのか……」


 しかし一蹴されてしまう。

 更に不適な笑みが消え物凄い気迫のある眼付に変わる。


「大陸の未来はこの俺が決める!邪魔するなっ!!」


 その表情、その力強い野心に燃える言葉にセイラは気圧され、何も返せなくなってしまう。

 そんな彼女の左肩にマルスト214世が右手をポンと置く。


「イスカと共に消えろ!さすれば見逃す……さまなくば……」


 耳元で囁き先程と同じ不適な笑みを浮かべ去ろうした。


「……父上!」


 途中で一つ忘れていたと言わんばかりに振り返り……。


「そういえば、ニーベ宮殿に捕虜となったユグドラシル騎士がいる。確か見せしめに処刑するらしいぞ!」


 と言って去って行った。

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