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戦慄のイクタベーレ ~敗退せし者達の母国奪還の軌跡~  作者: ユウキ
第五章 聖王国ユグドラシル
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第八話 無敗女王vs草人

「くっ!これではラチがあきませんね」


 ジャイロが目の前の脅威をを見上げながら呟く。


 彼やホリンやゼフィロス、そしてギュスターヴは、森の木々に隠れて見上げていた。他のライアーラ騎士は後方下げていたので、彼等しかいない。


「ちょいとヤバい相手だな。近寄れねぇし、もう剣も限界だしな」


 ホリンがボヤく。

 ゼフィロスは血で染めたような紅い特殊な剣を使用しているので耐久度は高いが、他の者はそうではない。


「ん?……あれは無敗女王か?……あいつ飛べたのか」


 ホリンが上空から飛行魔法でやって来たセイラに気付く。

 しあし、セイラは目の前の脅威に気付くと上空で停止し戸惑う。


「ドラゴンっ!?」


 大陸最強の生物であるドラゴンとなれば、一人では厳しいと感じた。

 その戸惑うセイラをよそに目の前の脅威は腕を振り上げる。


「くっ!」


 セイラは振り落として来た腕を躱す。


「これは……」


 その腕を見て気付く。本物のドラゴンではないと。人間の二十倍は、あると思われる巨大だが()のドラゴンだ。

 体全体緑色で(つる)が巻き付いたようなドラゴンだ。また所々に葉っぱがはえていた。

 人型人間外生物がいるとは、聞いていたが、まさかこんなに巨大だったとは夢にも思わなかったが、本物のドラゴンではないとわかり戸惑いはなくなった。


『アクアスラーク』


 戸惑いが無くなれば、攻撃は手は早かった。水系中級(アクアスラーク)を唱える。

 セイラの右手から大量の水が放出された。しかも彼女は中級を詠晶破棄で唱えたにも関わらず、顔色一つ変えない。

 またラクームは、水系初級(アクアシュート)ですら両手から放出していたのに、彼女は片手だ。とてつもない魔力とそれを扱うセンスに長けている。


「グァァァーン!」


 その放出された水が草竜の右の眼玉に直撃。たかが水だが眼玉に物凄い水圧がかかり、草竜は絶叫した。

 しかし、彼女の攻撃はこれだけではない。彼女が放出し続けている手は右手(・・)だ。つまり左手()空いている(、フリー)


『レイガ!!』


 左手から氷系中級(レイガ)を放った。しかも、また詠晶破棄。

 それだけではない。彼女は右手で水系、左手で氷系、連続魔法を唱えたのだ。

 こんな荒技を披露できるのは、魔導士の上位の攻撃に特化した大魔導士と言われる者だけ。

 またその大魔導士でも中級魔法の詠晶破棄での連続魔法ができるの極稀である。彼女はそれを顔色一つ変えずやってのけた。もっと言えば彼女は飛行魔法(ウィング)を制御しつやってのけている。三連続魔法だ。

 そして、左手から放出された氷が草竜の眼に当たる瞬間、水の放出を止める。何故なら氷が水で溶けてしまうからだ。


 ピキピキ……。


 大気中水分を凍らす。最初に水系を使ったのは、この為だった。

 これにより氷系魔法の効果を増大させ、草竜の右眼を中心に首から上を凍らせる。セイラは魔法に対するセンスだけではなく、どうすれば効果的か瞬時に理解できる頭脳もあった。巨大でも抜群に効力を発揮している。

 そして彼女は左腰に携えている剣を抜いた。


「はぁぁぁ……っ!」


 プシューン!!


「グァァァーンっ!」


 草竜の首を斬り裂く。剣も確り扱える。油断無く次々に攻められるのが無敗女王と呼ばれる由縁なのかもしれない。


「ははは……流石は無敗女王だぜ」


 ホリンが感心し笑みを溢す。

 そしてゼフィロスが剣を構え、草竜に歩み寄る。


「いっちょ行くか!」


 ホリンがそれに続き、ギュスターヴとジャイロが続いた。


「「「「はぁぁぁ……っ!」」」」


 それぞれ四方向から一斉に足元を斬り裂く。


「グァァァーンっ!!」


 草竜のその巨体が崩れ落ちる。


 ドーンッ!!


 しかし、これだけでは終わらなかった。草竜は口を大きく開ける。


「ゴォォォ……っ!」


 口から漏れ出た熱気で凍っていた顔の氷が溶け出す。だが流石に直撃を受けた右眼は無事ではない。


「ヤバい!アレがくるっ!」


 ホリンが叫ぶ。草竜の喉に炎が溜まる、火球を吐き出す気だ。ライアーラ騎士の負傷、燃え盛れた木々、これらはこれが原因だった。

 誰もがまずいと思ったその刹那。


 ヒューン……ブスッ!!


 草竜の左眼に矢が刺さった。

 ホリン達は矢が飛んできた方を見る。矢を放ったのはジェリドだ。


「これはこれは、こんな所で大陸に名を響かせた英傑達の剣技が繰り広げられているとは、願わくば最初から見せて頂きたかったものだな」


 余裕の笑みを見せるジェリド。


「誰だ!お前さん?」


 ホリンが疑問の眼差しを向けるとジェリドの後ろからアルスが現れる。


「遅れてすまない!大丈夫か?」

「見ての通りさ。剣もまともに使えねぇ有様だよ」

「すまなかったホリン」


 そうして皆、再び草竜と対峙しようと向き直すが……其処には巨大な草竜の陰も形もなかった。


「ふふふ……」


 代わりに草竜がいた場所から不気味な笑い声が聞こえて来る。其処にジョーゼンがいた。草竜の正体はジョーゼンだったのだ。

 また不思議な事にジョーゼンには傷一つなかった。凍った右眼も斬られた首や足も、そして射抜かれた左眼も全て無い。


「ふふふ……遅かったなアルスエード王子!ガディウス様に逆らう者よ、あまりに遅いので退屈しのぎに少々楽しませて貰ったわ」

「何っ!?」

「安心するが良いアルスエード王子!今は殺さぬ。貴様に取っておきの死をくれてやる」


『ファーガっ!ラライヤっ!』


 セイラが炎系中級(ファーガ)雷系中級(ラライヤ)の連続魔法を唱える。

 やはり油断なく攻める。極太の雷がジョーゼンを直撃しジョーゼンは燃え盛る。しかも雷を加えた事で炎の勢いが強く過剰攻撃に思えた。


「ぐぁぁぁ……っ!」

「ちっ!」


 セイラが舌打ち。効果がない事がわかったからだ。


「ふふふ……流石はマルストの王女。わしに効いてないのが直ぐにわかったか」

「ならっ!」


 ヒューン……プシューンっ!


 上空から地面へ落ちる加速も利用し首を斬り裂く。


「やったかっ!」


 とアルス。

 巨大だった草竜とは違いあっさり首が飛ぶ。しかし斬られた首元から蔦が伸び飛んだ首と繋がり、そのまま引き寄せ胴体にくっついた。


「「「「「「なにっ!?」」」」」」


 流石にこれには一同驚く。


「ふふふ……効かぬわ。ではなアルスエード王子よ」


 そう言うとジョーゼンは転移魔法(ソウテン)を唱え五芒星の魔法陣が現れ、其処に吸い込まれるように消えていなくなった……。

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