第六話 ロッカの逆鱗
アルス達がいる別荘の中で、一番広い部屋に皆集まり会議を始めようとしていた……。
その部屋にロッカとジェリドも姿を現す。
「ディーネ様、遅れましたがお久しぶりです」
「ジェリド先程は助けて頂きありがとうございます」
「ん?」
訝しげにジェリドは首を傾げる。
「何?」
「いえ……申し訳ございません。より一層お美しくなられたので一瞬ディーネ様と気付かなかっただけです」
「やーねぇ。ジェリドたっら~」
いつものデレデレである。
「あらぁ先程の言葉は何処へ行かれたのですか?」
ロッカが微笑みながら軽くジェリドを睨んだ。
「あ、いえディーネ様ですよ?」
本人に聞こえないように声を潜める。
「ふふふ……冗談です。ディーネですからね」
扇子で口元を隠し笑っているが眼が笑っていない。それにジェリドが冷や汗を流す。
「こそこそ何っ!?」
いつものツンツンになり、ディーネの目尻が吊り上がる。
「いえ……それとサラも。さっきは声掛ける余裕なかったけど久しぶりだな」
ロッカとディーネが今の話題から他に行くようにそそくさとサラに声を掛けた。
「ああ久しいな」
「なに?サラ知り合い?」
「お知り合いなのでございますか?」
それにディーネとロッカが反応する。
「はい…昔共に冒険をしました」
「そうなんだ」
「そうでございましたか。いずれそのお話じっくりお聞かせ願えませんか?」
「はいロッカ王女。いずれ……」
「にしてもお前が解放軍に加わったのか?」
「ああ。こんな冒険他にないからな」
「お前らしいな」
ジュリドが苦笑した。
「サラはね。私の命の恩人なんだ」
「それはお互い様だ」
「どうもディーネ様の雰囲気が前と変わったと思えば、お前のお陰だったのか……」
先程ジェリドが訝しげにディーネを見ていたのは直ぐにツンツンが出なかったからだ。
「それにお前も変わったなサラ」
「そうか?」
ジュリドの言葉にサラは首を傾げる。
だが実際にサラは変わりつつあった。それに直ぐ気付くジェリドの洞察力はかなりのものと言えよう。
リビティナが言っていたジェリドの“弓兵は最後まで戦場に残り、味方を支援しなければならない”という言葉は彼だからこそ言えたのかもしれない。
洞察力がなければ支援なんて、できないのだから。
「今のお前は“氷の女神”と呼ばれていたお前とは思えないぞ」
「氷の女神って?」
「私も気になります」
ディーネとロッカがジェリドに視線を向ける。
「昔、共に旅をしていた時、何をやっても笑う事もなくいつもクールで。しかも戦闘は恐ろしく強く、得意魔法は氷系でしたから、そう呼んでいたのです」
「確かにサラってそんな感じよね」
「ディーネまで止めてくれ。女神とか私には似つかわしくない」
「えっ!?そっち?」
「前もそうでしたよ。昔に何かあったあらしく心を氷で閉ざしているようで、氷とか冷血とか、そっちの方は本人も気にしなかったんです。まあ結局昔に何があったのか教えてくれませんでしたけどね」
「そうなのサラ?」
「気にするな」
サラはディーネにそう言うとジェリドの方へ向きにんまり笑う。ジェリドの背筋が凍り付く。滅多に笑わない、いや昔一緒に旅をしていた時、ほとんど笑わなかったサラがにんまりしているからだ。
「“お前が欲しい”」
「ちょ……お、お前それを今言う!?」
「何それ?」
ジェリドが焦りディーネはきょとんとする。
「お返しだ。だがそんな焦る事か?」
ジェリドは恐る恐るロッカの方へ視線を向ける。ロッカの眼はまるで汚物を見るかのようになっていた。
「やはりジェリドは女性を泣かせて来たのですね」
「い、いやロッカ様!断じて違います」
「“ロッカ様以外に申した事はございません”」
ロッカの眼が冷め切っており先程ジェリドが口にした言葉をそのまま言った。
「サラどうにかしてくれ」
「知らぬ」
してやったりと言った面持ちでそっぽ向く。
『ライっ!』
ズドォォーン
「ぎゃあ」
ロッカが扇子を振り下ろしながら雷系初級を唱えジェリドに直撃させた。ジェリドは当然伏してしまう。
「「えっ!?」」
流石にこれにはディーネとサラが驚きのあまり固まってしまう。
「ろ、ロッカ様っ!?」
同じ部屋にいたアルスが驚きの声を上げ、彼や他の者も駆け寄ってくる。
『慈悲深き精霊達よ、彼の者を癒す力を…キュア!』
あまりにもジェリドが哀れだったので硬直が解けたディーネは回復系初級をかけてあげた。
「それでロッカ様、これは一体?」
「不潔な殿方を成敗しただけでございますわ」
「ふ、不潔?」
「ですがロッカ様やり過ぎですよ」
とディーネ。そのディーネの言葉でサラは、はっ!と我に返り口を開く。
「ロッカ王女が何に怒っているか存じませんが。彼が言ったあの言葉は男女の機微によるものではございませんよ?」
「えっ!?」
「私とジェリドは一時期共に冒険をしてただけで、それ以上でもそれ以下でもございません。勿論私が泣かされた等ありませんでした」
そしてジェリドはディーネの回復系初級魔法が効き、立ち上がった。
「ディーネ様ありがとうございます」
「そう……なのですか?ジェリド」
ロッカが恐る恐る聞く。
「はい。私はサラの力が欲しいと言っただけです」
「…………」
ロッカはやらかしてしまったとバツの悪そうな顔をし、直ぐに扇子を口元に当てる。
「ふふふ……それは失礼致しました」
視線は泳いでいた。
「いえ私がサラの触れられたくない事を口にしたのが失敗でした」
「えっと、じゃあ会議を始めようか」
アルスが空気を変えよう無理に笑みを作り、さっさと会議を始めようと思い至る。
「まずは囮になってくれている部隊の合流する。全てはそれからだが……ニーベを奪還するっ!」
そして力強く発した。
「武具の調達はできとるでぇ」
とラクーム。
「助かる。正直ラクームがいなかったら先にニーベに入り準備を整えるなんてしなかったからな」
「だが、気になるな……」
次に口を開いたのはサラだ。
「ザーズの爪は、いくらアルス王子の後を付けたとは言え、短時間に大人数が集まれるとは思えない。何かに監視されているような得体に知れないようなのを感じる」
流石はクールなサラと言うべきか、冷静に分析していた。
「この中に内通者がいるんじゃないか?」
とジェリド。
「その可能性も否定できないが、それよりも……」
アルスはそこまで言うと考え込んでしまう。
(それよりも、もっと邪悪な者が……サラの言う通り誰かが我々を監視している)
ガチャ!
其処に扉を開けてセイラが入ってきた。
「セイラ王女!良く此処がわかりましたね」
アルスが笑顔を溢す。
「約束の場所はザーズの爪が取り囲んでいた。だからこっちだろうと思った」
「これは驚きだ!マルストの無敗女王セイランローヌ王女か。こんな方までいるとは……」
セイラはジェリドに視線を向ける。
「此方はユグドラシル騎士団のジェリド。弓騎士だ」
アルスがジェリドの説明した。
「よろしくな」
「こちらこそ」
「……とは言ったものの宜しいのですか?」
ジェリドはロッカに視線を向ける。ユグドラシル・ニーベを陥落させたのはセイラ率いるルーンナイツだったからだ。
「ええ。彼女は母国を裏切ってまで解放軍に加わってくださいましたから。それにアルス様……左腕を」
「はい」
アルスが左腕を挙げると腕輪がキラリと光る。
「それはルンゲンの腕輪……」
「アルス様がお決めになられたのです。完全にわだかまり無くとは行きませんが私に依存はございませんわ」
「わかりました。ロッカ様がそう仰るのでしたら私も問題ありません」
「それでセイラ王女、状況は?」
ジェリドが納得したとこでアルスがセイラに話しを振る。実は彼女は偵察を行っていたのだ。
そして彼女は、机に置かれたニーベ周辺の地図に指を差しながら状況を説明しだした。
「問題はたぶん此処だ!シューターや騎士団を前面に立てているが、何か怪しげな雰囲気があった。背後に何者か油断ならない存在が感じられた」
「そういや俺がニーベ王宮を脱出する時、バルマーラ帝国から直々に此処に指揮官を派遣したという話を聞いたな」
とジェリド。
「バルマーラから?……それは一体?」
「おそらくそれは“人型人間外生物”でっせぇ」
アルスの疑問に答えたのはラクームだ。
「人型人間外生物っ!?」
「そうやでぇ。ザーズに入りはなってから、ずっと邪悪な視線を感じとった。それは常に王子に向けられてとった。代々魔導士の家系であるワテにはわかる。あれは人型人間外生物でっせぇ」
ゼフィロスとサラとセイラは怪しい影が存在する事に薄々気付くが、ラクームはそれが人型人間外生物って所まで看破した。
魔導士と言うのは普段から不確かな存在の精霊と交信しているだけあって、そういうのに敏感なのだ。実際にゼフィロスとサラとセイラは魔法を扱える。
そしてラクームは、家系が代々魔導士なので、その不確かな存在等を察知する能力は他の魔導士より優れているのかもしれない。
「だが、案じていても仕方無い!とにかく今はやるしかない」
アルスが静かに言い放つ。
「そやな」
「まずはホリン達と合流する……合流ポイントへ行こう」
「正直言って早計過ぎると思うが……まあでも良いだろう。お供するぜ」
こうして解放軍にジェリドも加わった……。
数人で歓談(とは言えないですが)をしてる描写って難しいですね
誰が喋ってるとかわかりづらくなりそうです
かと言って『と〇〇が言った』といちいち描いていたらテンポが悪いですし
一応口調でわかるようにはしていますが、わかりづらかったら申し訳ございません
それにしてもジェリドは哀れにしてしまいました
ロッカを描いているとつい走ってしまいます(笑)
ジェリドも本気で言ったのはロッカだけで、ディーネはご機嫌取り、サラはただの言い回し。
それなのに雷を食らってしまいした




