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戦慄のイクタベーレ ~敗退せし者達の母国奪還の軌跡~  作者: ユウキ
第五章 聖王国ユグドラシル
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第五話 生き残りは三人

「陽動はこんなもんで良いだろう。アルス殿も準備が整った筈だしな」


 首都ニーベの東側の山間ルートで、あらかた陽動を済ましたギュスターヴが呟く。

 此処は山脈だけありニーベ宮殿が一望できた。その宮殿から眼を離せないゼフィロス。


「よー。どうした大将?」


 それに気付き声を掛けたのはホリンだ。


「……いや、ただあの宮殿に何か得体の知れない影を感じる」

「そうか?俺は何も感じないけどな。だがバルマーラのありったけの軍備を集結してるんだ。嫌な予感くらいはするがな」


 二人が話してると、上空に赤い鳥が羽ばたき、ニーベ宮殿に向かって行った。


「な、なんだ!?あれは」


 これに気付いたギュスターヴの声い反応してホリンも上空を見上げた。


「赤いバード!?ま、まさかマルスト214世自ら来たのか?」

「それは流石にあるまい」


 ギュスターヴはそう言うが、実際にマルスト214世ご当人だったりもする。


「だよな?こんなとこに来ないよな。それよりそのマルストの姫さんである無敗女王がそろそろアルスのとこに着く頃だ。また忙しくなるぜ」

「ああ」


 ホリンがそう言いギュスターヴが頷き二人はその場を後にし、他の兵達もそれに続く。

 しかし、ゼフィロスだけは宮殿が気になり歩きながら、いつまでも宮殿の方へ視線を向けて、宮殿が見えなくなるまで視線を外さなかった……。







 ・・・・・・・


 ニーベ宮殿の客間にある一際豪華な椅子に腰掛けるマルスト214世の姿がある、彼は宮殿に到着すると此処に案内された。


「マルスト殿、良くぞ来られました。急な事とてもてなしもできぬが、ごゆりとおくつろぎください」


 この宮殿の指揮官らしき男が、客間に入って来るなり敬しく頭を下げながら話す。


「そうしたいが、そうもいかない。ところでどうなんだ?此処の守備は?」


 マルスト214世は腕を組みながら話す。口元は常に薄ら笑いを浮かべ、さも自分が最強と言わんばかりオーラを(かも)し出してるかのように、凄まじい威圧感が感じられた。


「問題ありませぬ。このニーベは大陸屈指の鉄壁の守りを誇ります。このニーベに近寄る者は、己が愚かさを噛みしめながら散って行くでしょう」

「ほー。大した自信だ。ではイクタベーレのガキ共の進軍も此処で止めてくれるのだな?」

「そんな者等、問題なりません」

「それは楽しみだ。期待させて貰うぜ」


 ガチャっ!


 ふいに客間の扉が開く。突然フードを被った者が部屋に入って来た。

 その者は禍々しいさが周りにもわかるような杖を持っている。またフードの奥からチラチラと赤く光る瞳を覗かせていた。

 もしかしたら、ゼフィロスが言っていた得体の知れない陰とは、この者なのかもしれない……。


「マルスト殿、ご紹介しましょう。バルマーラから派遣されて来た派遣軍のジョーゼン指揮官だ」


 とニーベの指揮官が説明した。


「此方がマルストの王、マルスト214世殿だ」


 次はマルスト214の紹介。


「ガディウス様に従ってるフリ(・・)をしている野心家か」


 ジョーゼンが嫌味を溢す。


「派遣軍には占い(・・)好きの雑草人間(・・・・)」がいるとは聞いていたが…お前か」


 マルスト214世は、顔色一つ変えず、嘲笑うかのように嫌味を返した。

 なお雑草人間とはバルマーラ地方に住む人型人間外生物の草人という種族で身体は植物で構成されている。


「ふふふ……気に障ったか?王よ。だが、占い(・・)とは面白いものでな。いろんな事が知れる。例えば……フリ(・・)のままなら良いが、牙を向いた瞬間から、罪人となり生涯良き部下に恵まれぬぞ」


 なんとも嫌味の応酬である。


「ほー」


 余裕の笑みを崩さないマルスト214世。


「部下に恵まれず、己一人で、その野心の果たしかね、心半ばにその命尽きる。それが其方の運命だ」


 より一層フードの奥の赤く光る眼がギラつく。


「これは面白い」


 それでも相手を見下すかのように嘲笑い続ける。


「だがまずはアルスエードとやらだ。あやつはわしが必ず切り刻む。ガディウス様に楯突く者をなっ!」


 ジョーゼンはフードから赤い眼を輝かせながら言い放つ。


「まあせいぜい頑張ってくれ」


 カラミア214世はそう言うと立ち上がり客室を出て行った。


(ククク……アルスエードのガキを貴様が始末した後は俺が貴様を殺す……)








 ・・・・・・・


 ザーズの爪から逃げ伸びたアルス達が身を隠している場所に、リビティナがジェリドを連れてやって来ていた……。


「ここは、王宮の貴族達がお忍びで来た別荘じゃないか。なるほどこれは盲点だったぜ」


 呟きながら別荘に入って来たジェリドにアルスが気付く。


「ジェリド良く来てくれた我々は……」

「すまないが王子。まずはロッカ様に会わせてくれ。今どちらに?」


 ジェリドはアルスの言葉遮った。


「奥で休まれている」

「そうか」


 と言って早足で奥の部屋に向かった。







 ・・・・・・・


 コンコンっ!


「ロッカ様?」

「その声はジェリドですか?どうぞ入ってください」

「失礼します」


 ジェリドはロッカがいる部屋に入ると椅子に腰掛けるロッカの前に立ち右手をお腹に添え頭を垂れた。


「ロッカ様、改めましてロッカ様のご無事を祝着至極に存じます」

「ああ~ジェリド。良く生き延びてくれました。あの戦火の中を」

「あの日……」


 話始めるとジェリドの表情が暗くなっていく。


「ニーベが陥ちた日、私は国王と王妃をお守りできませんでした。なのに、こうして私だけが生き残り、生き恥を晒しております」

「それでも貴方が生きていた事がどんな救いになるか……」


 ふいに立ち上がりジェリドに抱き着いた。


「ろ、ロッカ様っ!?」

「うぅぅぅ……」


 ロッカは泣き始める。普段は王女として気丈な振る舞いをしていても所詮は十代中盤の少女。涙がとめどなく溢れていた。


「失礼します」


 ジェリドは優しく彼女の頭を撫で、しばらくそうしていた。やがてロッカは離れ椅子に座り直す。


「失礼致しました。お恥ずかしいとこをお見せしましたわ」

「いえ……」

「でも貴方が生きていてくれた事、嬉しく存じているのは本当ですわ」

「勿体無きお言葉」


 ジェリドが軽く頭を垂れる。


「それに生き残っているのは私だけではございません」

「それは本当ですか?」

「はい……あの戦火の時、私とユアン隊長とエルクが捕縛されました」

「ではお二人も……?」

「いえ、ぬか喜びさせて申し訳ございません。楽観視できない状況です」

「詳しくお聞かせ頂けますか?」


 ロッカが顔を引き締める


「三年間幽閉されましたが、ロッカ様が決起されたという情報を掴み、二人は私だけを逃がしてくれました。なので私を逃がした事で二人がどうなったか……」

「そうですか……騎士達は皆、(わたくし)を逃がす為に懸命に戦ってくれました。ですからもしまだ生きてるのなら助け出したいですね」

「はい」

「ジェリド、また(わたくし)に力を貸して頂けませんか?」

「はい!私で宜しければ喜んで」


 ジェリドは右手を拳にして左胸に当て頭を垂れた。


「あ……」


 ロッカはそう呟いて扇子を取り出し口元に当てる。


「それと先程の醜態は内緒ですよ。ふふふ……」

「先程のロッカ様は、女性として一段と魅力的でしたよ。これを他の者に言うなど勿体無い」


 おどけて言った。


「……貴方は一体何人の女性を泣かせて来たのですか?」


 しかしロッカに睨まれる。こういう耐性は彼女にはないのかもしれない。


「ロッカ様以外に申した事はございません」

「そういう事にして差し上げます。お褒めに預かり光栄ですわ」


 と言っているが眼は疑心のあるものだった……。

ロッカを描いてるのは楽しいですが口調が難しいです

あまり知識がないので(汗)

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