第四話 弓兵は最後まで戦場に残り、味方を支援しなければならない
キリが良いので短いです
首都ニーベのとある民家で、リュウザンが窓の外をチラ見しながら眉間に皺が出来ていた。
「どうした?リュウザン」
それに気付き声を掛けるアルス。
「王子、此処は早々に引き払った方が良いでしょう」
「ザーズの爪か?」
「おそらく」
窓の外では、ザーズの爪の者達がぞろぞろ集まって此方を監視していた。
「でも何故?どうして此処が?」
疑問視するリビティナ。
「すまない私だ。私がユーリを救出する際にやり合った」
「後を付けられたのですね。それでどうします?」
とリュウザン。
「此処で戦うわけには行かない。引くしかない。裏手から行くぞ」
アルスの指示で裏手から逃げる事になる。しかし裏にもザーズの爪が回り込んでいた
ギーンっ!!
いきなり剣で斬り掛かられ直ぐ様ソラは抜刀しそれを防ぐ。
プシューンっ!
ソラが抑えたザーズの爪をリュウザンが斬り裂いた。
「どうせバレるんだったら、ちゃんとした剣を持ち込むんだったぜ」
ボヤきながらも次の相手と応戦。下手に良い剣を持ってると検問で足止めされる事を考え彼等はあまり品の良くない武器を持っていた。
「ラクームとサラはロッカ様とディーネの護衛を。リュウザン、ソラ戦闘は極力避けろ!包囲されては元も子もない。リビティナは私の傍で皆の援護を」
全体に指示を飛ばすアルス。しかしその間にもぞろぞろ集まって囲まれてしまった。
「イクタベーレの王子にロッカ姫様か……こいつはツイてるぜ」
ザーズの爪の一人が舌なめずりをしながらいやらしい笑みを浮かべる。
「やばい!」
そう言ってアルスはロッカに元に駆け寄り、それに合わせ皆ロッカを囲むように布陣。
「とっ捕まえろっ!!」
「「「「「「「「「「おーっ!!」」」」」」」」」」
こうなった場合の為にイスカもこのメンバーに加え魔法による一掃を考えていたが現在はいない。
魔法と扱えるのはサラとラクームもいるが、サラはロッカとディーネの護衛の為に加えている……つまり後方に下がっているので、下手に乱用するべ味方を巻き込んでしまう。
ラクームは得意魔法は水系で支援向けなのだ。ロッカはこの後が本番なので論外。元々マナが少ないので魔法を使うわけには行かないのだ。
加えて武器も大した物を持ち込めず、最悪の事態に陥ったと言えよう。
だがその時だ!
ヒューンヒューンヒューンヒューンヒューンヒューン……ブスブスブスブスブスブスブスブスっ!
「「「「「「「「「「がはっ!」」」」」」」」」」
突如、無数の矢が飛んで来て囲んでいたザーズの爪達に突き刺さった。
「なるほどな。陽動部隊が外で派手に眼を引き付けてるうちにイクタベーレの王子一行は既にニーベに到着なさっていたという訳か」
矢を放った者が感心の声をあげる。
「ジェリド?貴方はユグドラシル騎士団のジェリドでございますか?」
ロッカの声が弾む。
現れたのはジェリドである。ちゃっかりザーズの爪から奪った弓を使っていた。
ジェリドは右手を拳にし左胸にあて頭を垂れる。
「ロッカ様お久しぶりでございます」
「ああ、貴方も無事で良かった」
自分を助ける為に壊滅したと思ってたユグドラシル騎士団の生き残りがいた事に涙する。
「まさかと思ってザーズの爪の奴等を付けて来たんだが、正解だったみたいだな……君がイクタベーレのアルスエード王子だね?」
ジェリドの視線がロッカからアルスに移る。
「ああ……君が凄腕の弓騎士ジェリドなんだね」
「そんな大層なもんじゃねぇ……身分を隠してご来訪か。古典的な策だが、まぁ良いだろう……ん?」
追手が来てる事に気付く。遠くから他のザーズの爪が何人も迫って来ていた。
「あまり時間がないようだな。奴等が来ちまう。逃げ延びる先は決めてるのかい?」
「ああ」
「急ぎな。ロッカ様を頼んだぜ」
「君は?」
「誰かが奴等を足止めしとかなきゃな、奴等も相手がいないと寂しいだろうさ」
と言ってジェリドは弓を構える。
「しかし……」
「行けよ。此処にいても邪魔なんだよ」
「わかった。ジェリドもう一度会えるね?」
「わかってる。後で必ず見つけ出して合流するさ」
「アルス様……」
其処でリビティナがアルスに声を掛ける。アルスは皆まで言わなくてもわかると言わんばかりにコクリと首を縦に振った。
そしてアルス達がその場を後にする。
「変わった王子だな……ん?お前さんは?」
しかしリビティナだけは残っていた。
「ライアーラ騎士団のリビティナです」
と言ってジェリドに並び弓を構える。
「……リビティナ?早く行かないと遅れちまうぜ」
「自分も足止めをやります。それに自分がいた方が合流しやすいと思います」
視線だけジェリドに向け応えると弦を引く。
「………」
ジェリドは何も言わず弓を降ろし彼女を見る。
「大丈夫です。自分も弓兵ですから」
弦を離す。
ヒューン……ブスっ!
遠くにいたザーズの爪に矢が刺さり倒れた。リビティナは次の相手に狙いを定める。
「“弓兵は最後まで戦場に残り、味方を支援しなければならない”」
ヒューン……ブスっ!
次に狙ったザーズの爪にも矢が刺さり倒れた。
「どっかで聞いた言葉だな」
リビティナは弓を降ろしジェリドと向かい合う。
「貴方の言葉ですよジェリドさん。ユグドラシルの弓騎士ジェリドは我ら弓兵の尊敬の的でした」
「よせ!人の尊敬を喜べる程、老いちゃいないぜ。まあ良い好きにしな」
「はいっ!」
リビティナの声が弾む。彼女は満面な笑みを浮かべた。
彼女が笑う事は滅多にない。前にバルバルディ要塞でアルスに笑みを見せたが、あれはアルスを安心させる為の作り笑い。
心からの笑顔なんて彼女の14年の人生においても数える程しかないだろう。そんな彼女が自然に笑みを溢させたジェリドの存在が大きいのだ。
それもその筈、彼はユグドラシル大陸一、二を争う程の弓騎士。彼女や彼女と同じ弓兵に取って憧れの存在なのだから……。
番外編でホリンとゼフィロスの出逢いの物語を此方で描こうとしましたが、章管理がめんどくさくなるので別で描きました
もし宜しければ戦慄シリーズ≪紅き月の下で≫も宜しくお願い致します




