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戦慄のイクタベーレ ~敗退せし者達の母国奪還の軌跡~  作者: ユウキ
第三章 プリンセス オブ セイランローヌ
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第五話 ライアーラ王リュスター

 マルストとの激戦の後、城が落ち着き取り戻した頃、ギュスターヴの姿がバルコニーにあった。


「ギュスターヴ様」


 と声を掛ける者がいたので、ギュスターヴは振り返る。


「ジャイロ殿か」


 彼の元にやって来たのはジャイロだ。そのジャイロもバルコニーに出て彼の隣に並ぶ。


「先程は部下をが失礼をした。我が騎士団にはバルマーラの捕虜になったまま帰らぬ者が多くてな」


 とギュスターヴ。


「いいえ無理もありません」

「そう言ってくれると有難い。そう言えばイクタベーレの先王ガイルバッハ殿は実に強い方でしたな。中央会議で一度お目にかかっただけだが、側にいるだけで身が引き締まる思いがしたものだ」


 中央会議とは聖王国ユグドラシル・ニーベで行われるこれから大陸の行く末を話し合う会議である。

 アルスの父ガイルバッハは武勇に長けていた。騎士王国と他の国に言われてるだけはあり王自身が伊達ではなかったのだ。


「アルス様はガイルバッハ様とは違います……」


 と言うとジャイロが遠くを眺め続ける。


「……私はアルス様は今までの誰とも違う、新しい時代の王になれる方だと思っております」


 ギュスターヴも同じく遠くを眺め出す。


「……確かに変わった王子だ」


 と言ってジャイロの方へ向き直す。


「敵将を潰して一気にケリ(・・)を付ける。あのお手並みは見事だった。あれがイクタベーレの戦い方なのか?」


 ジャイロはいいえと言いながら首を横に振り微笑む。それは誇らしそうに。


「あれがアルス様の戦い方(・・・・・・・・)なのです」

「うむ。最近挙兵したとは思えん程素晴らしかった」


 アルスの戦い方は、まるで詰将棋のをやるかのような戦い方なのだ。








 ライアーラと合流しこれからの戦いはギュスターヴが加わる。だがライアーラ城を手薄にするわけには行かない。

 残す兵達の士気を上げる為にそれなりの人物がいなければならない。ギュスターヴの父リュスター王は心労で臥せっているとは言え、そういう意味では是非ともいた方が良い。

 しかし、そのリュスター王はライアーラ城西にある離宮に囚われている。

 ギュスターヴと合流した後の安息も束の間。アルス達はリュスター王を救出に向かう。

 その前にアルスはラクームをライアーラ城の中庭に呼び出していた……。



「いきなり呼び出してすまない」


 とアルスが開口一番謝る。


「何ぞ用でっかぁ?武具なら手配しておいたねん。数日で届く筈やねん」


 毎度の事ながら眼を細くし揉み手をしている。


「あ、あ~そうなのか……それはありがとう」


 歯切れが悪い。ラクームが目をはっきり開ける。


「何や?神妙な様子でおりまんなぁ」


 言い終わると再び眼を細くした。


「ラクーム、すまないがこの軍を抜けてくれ」

「なんでやねん?急に何ゆーとりますん?」

「ラクーム、君は復讐の為に戦いたいと言ったね?」

「確かに言うたでぇ」

「一度は納得したが、やはり私は復讐の為に戦って欲しくない」

「そういうアンはんも昔、親父はんを殺されはったんやろ?」


 それを言われたアルスは、しばらく(うつむ)き、やがて顔を上げ、ゆっくり口を開いた。


「……そうだ。だが私は復讐の為に戦っていない。確かに昔の私はそうだった。でも今は大陸解放の為に戦っている」


 アルスは決意に満ちた真剣な眼差しをしている。ラクームは再びはっきり眼を開けそれを見た。


(良い眼やなぁ。ワテもこげな眼が出来れば、家族をうしのーですんだかもあらへんなぁ)


 また眼を細くし話始める。


「わーったでぇ。大将がダメと言ってはるんやぁ、軍をぬけなきゃあきまへんなぁ」

「すまない」


 アルスが頭を垂れる。


「えーてえーて。そやなアンはんが姫はん言ってはった通り、憎しみの連鎖はよかなかと。ワテもそれはわかるでぇ」

「これは、武具代だ。足りないかもしれないけど、せめて受け取って欲しい」


 50000G入った袋をラクームに手渡し去って行った。去り行く姿をラクームがはっきり眼を開けて見ていた。


(アンはんは真面目過ぎるでぇ。それじゃ見滅ぼすでっせぇ……)



 ・

 ・・

 ・・・



 ライアーラ王リュスター救出、正確にはライアーラ西の離宮奪還に向かう一行。アルス達が今、街道を馬で通っていた……。


「この行路一帯はマルスト軍が統治し、恐らくこの行路のどこかで待ち構えているだろう」


 とギュスターヴ。


「だが、マルスト軍はライアーラ城に攻めて来た時にその大半の戦力を使ってしまったのでは?」

「確かに数は少ないだろう。だが問題はカラミア王の娘、セイランローヌ王女の存在……彼女は大陸に並ぶ者のない強さを誇る」

「その話は聞いた事があるぜ。無敗女王(・・・・)と呼ばれるルーンナイトだろ?」


 とホリンが会話に入って来た。

 ルーンナイトとは剣も扱える魔導士。ちなみに剣が主体のゼフィロスは魔法剣士という職に属する。


「そうだ」


 ギュスターヴが肯定する。


「その者が西の離宮に配置されていると?」


 とアルス。


「可能性はある。彼女はライアーラ城に現れなかったからな」



 話を終えるとアルスは辺りを見渡す。そして右手の方に視線が止まる。廃墟となった砦があった。


「使われていない砦が多いようだね」


 アルスが何気無く言葉を発する。


「この行路は長い歴史を持ってるからな」


 応えるギュスターヴ。アルスはそれを聞き考え込みだす。


「如何なさいましたか?アルス様」


 ジャイロが声を掛ける。


「いや、何でもない」


 と言いつつも……。


(何だろ?嫌な予感がする……)


 アルスは胸騒ぎしてならなかった。



 ・

 ・・

 ・・・



 夜になる頃には西の離宮との間にある町に到着していた。アルス達はそこで一晩明かす。

 そして早朝にホリンを呼び出す。


「多分思い過ごしだと思うんだけど」

「OKアルス。行ってくるぜ!」


 ホリンは馬に乗り出す。


「すまない。リュウザンや何人か付けるよ」

「いや……そっちの戦力を裂くわけにはいかないだろ?俺一人で十分だ。じゃ!」


 言うやいなや馬を走らせ去って行った。





 ドドドドド……


 ホリンが馬をしばらく走らせると後ろからも馬の足音が聞こえてきた。ゼフィロスが馬で駆けて来たのだ。ゼフィロスはホリンに追い付き馬を並ばす。


「よっ!どうしたんだい?大将!」


 ニヤっと笑いおどけたようにホリンが話し掛けた。


「どうもしない。ただ気になる事があるだけだ」

「ほー」


 かくして二人はアルスが気になってる場所に向かう事になった……。

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