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戦慄のイクタベーレ ~敗退せし者達の母国奪還の軌跡~  作者: ユウキ
第三章 プリンセス オブ セイランローヌ
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第四話 アルスの戦い方

 アルス達がライアーラに到着する数時間前。


「私は裏口からライアーラ城に入る。サラには援護して貰いたい」


 一同はライアーラ城の手前で止まり作戦会議しており、アルスが策を巡らしていた。


「別に構わぬが、何故私なのだ?」

「私の予想ではディーネは此処から避難する。彼女はきっと君に会いたいだろうからね」

「なるほど、承知した」


 続けてアルスはゼフィロスに視線を向けた。


「ゼフィロスには敵将を打ち取って貰いたい。ラクームの予想した場所に要ればの話だけどね」


 ゼフィロスは無言でコクリと頷く。


「他の面々はジャイロの指揮の元、正面から突入。おそらくギュスターヴ王子が前線で指揮を取っておられる。援護を頼む」

「「「「はっ!」」」」

「OK」


 ホリンだけ太々しい。


「それと本当に前線に出られるのですか?ロッカ様」

「ええ。(わたくし)が直接兵達を鼓舞致しますわ」

「わかりました。ではリュウザンとソラはロッカ様の護衛。指一本触れさせてはダメだからね」

「「はっ!」」

「当然お前等も姫さんが奇麗だからって指一本触れるなよ」


 嫌らしい笑みを浮かべるホリン。


「それは状況による。ヤバくなったら抱えてでも逃げる事になるだろうし」

「だな」


 リュウザンが冷静に返し、ソラがそれに同意。


「……あのアルス様、この方は大丈夫なのですか?」


 ロッカが嫌そうに汚物を前にしてるかのように横目でホリンを見た。


「あー……うん、たぶん」


 アルスが目を反らす。


「たぶんじゃねぇーだろ!それはともかく、んじゃおっぱじめよーぜっ!」


 お決まりのホリンのこの言葉で開戦。







 _______


「ライアーラの(ごと)きに何を手間取っている?さっさと始末せぬかっ!!」


 敵将のガルディアが怒鳴る。


「それがどうやらイクタベーレの反乱軍が合流した模様です」


 兵が(ひざまず)き報告する。


「何だと?バカなっ!ここに来るまでのルートはあらかた抑えた筈だ。それを抜けてきたのかっ!?」

「地理に通じた者が抜け道を教えたのでは?」

「誰だ?そんな事をした奴は!」

「ワテや」


 と突如現れたのは、ラクームだ。相変わらず目を細く商人らしい揉み手をしている。


「貴様ラクーム!裏切ったのか!?」

「裏切る?アンはんは可笑しな事言いはりますなぁ。ワテは商人やで?武器をアンはん等に売りぃはしたが味方になった覚えはあらへんでぇ」

「くぅのぉ!やってしまえっ!!」


 ガルディアが顔を真っ赤にし兵達に命令した。

 実はラクームは情報を集める為にマルストに武器を売っていた。そこで得た情報をアルスに伝えマルストが待ち構えていないルートを通って来たのだ。



『水の流れに乗りし精霊よ、我を守護する祝福を与えよ!』



 ラクームが魔法の詠唱した。


「お、お前!魔法が使えたのかっ!?」

「はて?いつワテが使えへんと言うたでぇ?」

「くぅのぉぉぉ」


 ガルディアがもう血管が切れそうな勢いだ。対するラクームは両掌を前に突き出し……。


『プロテクションシェル!』


 シュインっ!


 水系中級防御魔法(プロテクトシェル)を唱えた。彼の周りにバリアが張られる。


「くっ!これ以上先に進めない」


 ラクームの前まで後一歩のところで、バリアに遮られた。


「なぁぁにやってるんだーっ!!」

「ダメです!進めません」


 ラクームの周りで敵兵が6人程、剣で斬り、槍で突きと右往左往する。ガルディアは怒りで我を忘れ護衛を残し忘れていた。


 プシュプシュプシュプシュプシュプッシューンっ!!


 そこへゼフィロスが現れ6人の敵を一瞬で斬り裂く。ラクームは挑発し引き寄せるから、其の後、処理した方が楽では?と言いだしたので、後からゼフィロスが現れたのだ。


「ほえ~なんともええ剣捌きやね」


 ラクームが感心した。


「こぉぉなれば、このライアーラ方面司令官ガル……」


 プシューンっ!


「悪い。隙だらけだったものでな」


 最後まで言わせて貰えずゼフィロスの剣先が左から右に走り、腹部を斬られる。


「ぐはっ!」


 バタンっ!


 それを見ていたラクームはあまりにも一瞬の事で眼を疑い固まっていた。


「で、お前はいつまでそのバリアを張ってる」


「あ!ほんまや。すっかり忘れてもうてたわ」


 シュ~ン!


 バリアを解除する。

 こうして敵将を打ち倒す。その知らせはライアーラ城の屋上にいたアルスの元に届く。万事作戦通り進んでいた。


「マルストの騎士達に告げるっ!!諸君等を指揮するガルディアは既に倒れた!」


 浪々たるアルスの声が戦場に響く。


「な、なに?」

「ガルディア様が!?」


 マルスト軍に動揺が走る。


「これ以上の戦いは無意味だ。速やかに武器を捨てて投降しろ!それでもなお戦い続ける者には対しては……」


 アルスは右腕を左の方に持ってきて……。


「聖王国ユグドラシルの名の元に容赦なく叩き潰すっ!!」


 一気に右に振った。

 こうしてマルスト軍は次々に武器を捨て始めた。まあ逃げ出すバードもいたが。

 それを城下から見ていたギュスターヴが……。


「見事っ!」


 と言い放った。


「お見事なお手並みでしたわ。アルス様」


 とロッカが後ろから声を掛ける。


「いえ、ユグドラシルの名を使う事を許可して頂いたからです。それよりロッカ様は大丈夫なのですか?報告は来ています。上級魔法に詠唱破棄の中級魔法と無理はされたのでは?」


 ロッカは扇子を取り出しそれを広げる。その扇子は細工された小さなブルートパーズがいくつも散りばめられていて美しい扇子だった。

 宝石は微々たるものの魔法の威力を高め、使用マナも軽減する。まあないよりは持ってた方が良いって程度だが。

 ちなみにサラはダイヤモンドを職人に頼みサンダーランスに埋め込んで貰っている。ディーネの方は海賊に没収され持っていない。

 ロッカはその扇子を口元に当てる。


「ふふふ……大した事ではございませんわ」


 仕草といい、十代中盤あたりの少女には到底思えない。


「そうですか。ですがご無理だけはなさらないでください。ロッカ様は私と似たような歳でお若いのですから」

「あら、アルス様!レディに対して歳の話をするのは如何な物でしょうか?」

「それは失礼しました」


 頭を垂れる。


「ふふふ……冗談です。こうしてアルス様とお話しするのは3年ぶりですので興が乗ってしました」

「そうですね。3年立ちます」

「では戯れはここまでで……少々無理をしましたわ。ですが(わたくし)自ら鼓舞すると言ったのですから、その責任は取ります。まあ確かに(わたくし)の望んだ機会だったので、はりきってしまった事は否めませんわ。ですがご安心を。今日一日ゆっくり休めば問題ありません」

「それを聞いて安心しました」


 ロッカは扇子を畳むとアルスが立っている横に移動し城下を見下ろす。


「さあ皆様、勝鬨(かちどき)をあげましょう。勿論マルストの人達に目を配りながらですよ?ライアーラの勇姿しかと見せて頂きました。我らの勝利ですっ!」


 朗々たる声音で言い放ち、最後に扇子を突き出した。



 ・

 ・・

 ・・・



 その後、ギュスターヴ、ディーネ、リビティナ、数人のライアーラの兵、それにゼフィロスとホリン以外のイクタベーレ全軍が王間に集う。それ以外の兵達は、マルスト軍を一人一人牢屋に入れていた。

 王座にはロッカが腰を掛け、その目の前でアルスが跪き、その後ろにイクタベーレの面々が跪いていた。ちなみにホリンとゼフィロスはサボりだ。

 ギュスターヴやライアーラ騎士団の面々とディーネはそれぞれ左右に並ぶ。

 ちなみにロッカはみずぼらしい平民の服装ではなく白を基調としたドレスに着替えている。



「アルス様、今更ながらようこそおいでくださいました。ユグドラシルの王位継承者としてイクタベーレの勇士達を歓迎致します」


 とロッカが話始める。


「アルス様、左腕を出してください」

「はい」


 ロッカは立ち上がり、アルスの左腕に腕輪を嵌めると再び王座に座り直す。


「これは……」

「それはルンゲンの腕輪と申します。今は無き古代の技術で作られているので複製は不可能でしょう。それに右手で触れてみてください」

「はい……うわぁ」


 なんともマヌケな声を上げる。それも仕方ない。アルスが右手で左手に嵌められた腕輪を触った瞬間、光が上空に上がり、アルスの頭の上くらいの位置に紋章が投影された。

 大樹に輪っかが付いたなんとも簡素な紋章だが、これは立派な聖王国ユグドラシルの国旗だ。


「これは……ユグドラシルの国旗?」

「そうです。これからの貴方の行動は全て聖王国ユグドラシルの名の元に承認された事になります。これからの戦いに必要になるかもしれません」

「これを私に?」

「これはこれからのアルス様への期待を込めてでございます。それとは別に此度の恩賞を与えたいと思います。この状況化で出来る事は少ないですが、(わたくし)に可能な事なら何でも仰ってください」

「では一つお願いがございます。此度、投降したマルスト軍に治療と食料の供給。ユグドラシルの慈悲を持って接してくれないでしょうか?」

「はぁ?」


 と先に声を漏らしたのはギュスターヴだ。しかし自分が意見して良い場面ではないので直ぐに口を(つぐ)んだ。


「お言葉ですがアルスエード王子!」


 しかしライアーラの兵は言葉を発する。アルスはその兵に視線を向けた。


「失礼ながら王子は、彼等が捕虜に対してどのような扱いをしているか、ご存知ないから、そのような事を仰られるのです」

「止めろっ!」


 ギュスターヴの制止の言葉を掛けるが尚も続ける。


「彼等は捕虜を騎士として扱わず、男は過酷な労働に留置、女は慰み者にされ屈辱しか与えず。そして……」


 ヒューン……ブス。


 兵の頬を矢が掠り、矢はそのまま壁に刺さる。そこでようやく言葉を止めた。矢を放ったのリビティナだ。


「ギュスターヴ様は止めろと仰られました。なのに貴方はまだ続けるのですか?」

「くっ!」


 兵は苦虫を噛み潰したような顔をした。


「……それにアルス様は十分存じてます。その上で申し上げておられるのです」

「それなら尚更……」

「好い加減にしないかっ!」


 再び口を開き出したのでギュスターヴの怒鳴った。


「はっ!失礼しました」


 その兵に視線を向けてたアルスは口を開く。


「戦いは憎しみの連鎖、それを広げるだけ。それではバルマーラとなんら変わらない」


 そしてロッカの方へ向き直した。


「我々の目的は単に勝つのみではない筈。ユグドラシル再興は勝つ事以上の事も必要だと思います」


 と繋げた。


「騒いでおいででしたが、(わたくし)が先程何をし、何を申したのかお忘れ?」


 周りを見渡す。


(わたくし)はルンゲンの腕輪をアルス様にお渡しし、その行動は聖王国ユグドラシルの名の元に承認される、と申しました。つまり皆様には議論の余地はございません」


 きっぱり切り捨て、アルスに向き直した。


「アルス様、出来る事は正直少ないですが、やれる範囲で行うと約束致しましょう」

「ありがとうございます」


 頭を垂れる。



 話が一段落したとこでロッカは王座から立ち上がる。


「ユグドラシルとライアーラ、そしてイクタベーレ。小さな力ですが、この連合は大きな奔流(ほんりゅう)となって大陸を真の解放へと導かん事を願い……そして信じます」


そう締め括った……。

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