第二話 マルストの主力
数日が過ぎた夜、ライアーラ城の屋上でギュスターヴが見張りをしていたら、彼の読み通り大量のバードが北方より進軍して来た。
「な、なんだ?あの数はっ!?」
ただ大量と言っても限度がある。流石の彼も空を埋め尽くさん程の数とは思いもしなかった。
「バード部隊が攻めて来たぞーっ!弓兵部隊は向かい打てぇっ!それ以外の者も配置につけっ!」
ギュスターヴが全軍に呼び掛ける。
ディーネが使えるのは中級の回復魔法。しかしマナ消費が激しいので初級までに抑えている。その為、大怪我までは治せない。それに彼女が使うキュアは体内組織を活性化し治癒能力を爆発的に高めるものであって重ね掛けしても無駄なのだ。
従って彼女が直接患者の治療を行う。医療の事は多少齧ってる程度だが簡単な事なら彼女にもできる。
ギュスターヴはてっきり回復魔法を適当にかけるとさっさとソウテンでいなくなるか、彼女に与えられた部屋に引き籠る等すると思っていた。
勿論それだけでも十分有難いのだが、彼や兵達の予想に反して献身的に看病し出したのだ。
「ディーネ王女、宜しいでしょうか?」
怪我人を見てたディーネに声をかける兵。
「何っ!?」
毎度の事ながら目尻が吊り上がっている。
「敵の大軍が攻めて参りました。侵入されるのも時間の問題です!ここは一先ずお退きください」
「ギュスターヴ王子は?」
「ギュスターヴ様が何か?」
「だからギュスターヴ王子は何してんのよっ!?」
「ギュスターヴ様は騎士団を率いて戦っておられます」
「じゃあ私だけ逃げるわけにはいかないでしょう!?」
口は悪いがその間ずっと手が動いており兵達の治療を行っていた。
「し、しかしディーネ王女!危険です」
「私はあの日、ユグドラシルにいたの……」
ディーネの手が止まり、目尻を下がり哀しそうな瞳に変わる。
「聖王国ユグドラシルが陥落した日、敵が侵攻して来たと知らせが来た時、私は言われるがまま転移魔法でタルミッタに逃げました。だけどその後、陥落したと聞いてどうして私は何もできなかったのだろうと嘆く事しかできませんでした」
口調も変わる。ディーネには四つの顔がある。ツンツンなディーネ、デレデレなディーネ、素のディーネ。最も素のディーネは今では、ほとんど見れない。サラがそれを引き出したがそれは七年ぶりなのかも知れない。そして最後の顔が王女としてのディーネ。今のディーネは王女としてのディーネだ。
「ディーネ王女……」
「勿論あの時、私一人いたからと言って何かできたとは思えません。私の拙い回復魔法では役に立てなかったでしょう。でも今は違う。私にもできる事がある筈です」
「そのようにお考えでしたら、尚更お退きください」
「いいえ。今度こそ私は逃げません」
ディーネは首を横に振る。
「ディーネ王女、退くという事は逃げる事ではございません!……生き延びる事です。ディーネ王女の献身的な行いを見ればお優しい方だと深く理解しました。一度退き、また皆の為に治療をして頂きたいのです」
詭弁だ。ディーネは自分を逃がす為にそんな事を言ったのだとわかった。でもだからと言って実際何かできるわけではなく自分が無力なのは良くわかっている。
「……わかりました。しかし今の私はマナがほとんどありません。転移魔法は使えませんよ?」
よって従う事にした。
「存じております。ディーネ王女が治療の為に魔法を沢山使われていましたから……では私が道中護衛致しますので行きましょう」
「ところで私は、まだロッカ様にお会いしていませんが、この城にいらっしゃるのですよね?大丈夫なのですか?私より優先すべきでは?」
「ご安心ください。ロッカ王女はこの城にいらっしゃいません」
「えっ!?」
「ギュスターヴ様の策です。仮にこの城が陥ちるようのな事があっても良いようにと」
「そうですか……じゃあさっさと行くわよ」
とまたいつものディーネに戻ってしまう。
前日の事である。
アルス達は日が暮れたので近くの村で宿を取ろうと立ち寄る。その村に入ると一人の少女が頭を垂れていた。
「アルス王太子一行とお見受け致します。宜しければこれからの道中ご一緒させて頂けませんか?」
「君は……?」
アルスと初対面で名前を呼ばれる際は大抵“アルスエード”と呼ばれる。しかし彼女はアルスと呼んだ。従って彼女は自分の知る人物だろうと予想出来た。
「お久しぶりです。アルス様。私の事を覚えておいででしょうか?」
少女が頭を上げる。歳の頃は十代中盤、髪はディーネと同じく水色で腰のあたりまである長い髪を首の後ろで結んでいた。
「えっ!?どうして貴女が此処に?」
やはりアルスの知る人物だった……。
翌日、日が暮れたので野営をしようと考えていた。
「おいアルス!あれを見ろ」
北方を指さすホリン。この一言で休むどころではなくなる。
「なんだあれは?」
北方の方角で何かが蠢く。一同それを見て、なんだろうと思案し出す。しかしただ一人はっきり見えていた。
「バードだなあれは」
視力の良いサラである。
「見えるのか?」
とホリン。
「ああ…なんとか」
「あれがバード?なんて数なんでしょうか?」
とジャイロ。空を埋め尽くさんばかりの物凄い数だった。
「ホリン、バードとは!?」
とアルスが聞く。
「巨大な鳥と共に戦う奴らだよ。マルストの主力だ」
「なんだって!?」
「場所から言って、ライアーラ城を攻めに向かってるって所だな」
「皆!ライアーラ城に急行するぞっ!!」
「「「「はっ!」」」」
イクタベーレ騎士団の面々とリビティナが頷き馬を全速力で走らせだす。その後ろにホリン、サラ、ゼフィロスが続く。そして遅れてラクームが馬車を引き、荷台に武具と水色髪の少女が乗っていた。今は結んでいた髪を解いてる。
(あの中にミクはいないでくれよ)
と胸中呟くのはサラだ。
(ギュスターヴ様…どうか持ち堪たえてください)
本来の所属がライアーラであるリビティナがギュスターヴを案じる。
他の者もそれぞれの想いを胸に馬が瞑れてしまうのではないかと思うスピードで、ただただひたすらライアーラ城に向かう……。
もうお気づきの方もいらっしゃると思いますがアルスの姉を除き、仲間になるキャラは歳をはっきり記載しております
ただある2人だけはとある理由から記載しておりません




