表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦慄のイクタベーレ ~敗退せし者達の母国奪還の軌跡~  作者: ユウキ
第四部 第十一章 ソラとリュウザン
121/152

第六話 コンビ復活

「本当にお前なのか……リュウザンっ!?」


 ソラは驚き上がり、眼を見開く。目の前に立つ男の存在がそうさせていた。

 彼…リュウザンはユグドラシル・ニーベにおいて、命賭して君主アルスを守り抜き、散っていった……その筈の彼がソラの目の前にいた。


「はて? 俺がわからないとは頭でも打ったのかい?」


 リュウザンが嫌みったらしく笑い、ソラの前に出る。


「ちぇ…この憎たらしさ。お前しかいなよな」


 ソラは、ハ~と溜息を付いた。


「おやおや…イクタベーレが誇る宮廷騎士の二人が揃ったわけですか……でも確か貴方はニーベで死んだ筈ではないのですか?」


 余裕寂々といった面持ちでクラヴィスがリュウザン達と対峙する。


「おや…知らなかったのか? 英雄ってのは何度でも蘇るものなのさ」


 リュウザンも負けじと余裕の笑みを見せ軽口を叩いた。


「なるほど…では早速ですが、また死んで頂きましょう」


 更に負けじとクラヴィスも余裕の笑みで返す。


「そいつは願い下げだ。あまり何度も死んでいると格好付かないいからな」

「そうですか……でも詰め甘いですよ。どうせ狙うなら……」


 右手の甲に刺さったリュウザンが投げたナイフを引き抜く。


()にすれば良かったのに」


 ボォ…ッ! 


 五本の指の上にある炎が強まった。リュウザンが投げたナイフにより、この五連ファイゴルの発射を一時的に止める事がで来たが、消滅したわけではないのだ。


「じゃ…これはお返しします」


 ビューン……カーンっ!! 


 クラヴィスがナイフを投げ付けて、それをリュウザンが手に持つ剣で弾く。


「これでおしまいです。アハハハハハハハハ……」


 今度こそ五連ファイゴルを発射される。ナイフは、隙を作る為の囮だったのだ。

 これにより、避ける余裕がリュウザンにはない。

 クラヴィスは確信していた。この五連ファイゴルなら二人共これで終わりだと……。

 それ故、嘲笑うかのような高笑いが響く。


「ハハハハ……何っ!?」


 だが、そうは上手くいかない。リュウザンは無造作に剣を構えているだけ。

 なのに炎が二手に別れる。刃先に当たった瞬間、炎が左右に別れたのだ。


「ば、馬鹿な! その剣は魔力を弾くというのか!?」


 クラヴィスが驚く。


「貴様相手に何も対策無しだと思ったか? 貴様の情報は、とある世話好きな老人から聞いているんでな」

「アハハハ……そう。でも、そっちこそ、そんな剣一つでボクに勝てると思っているのですか?」


 再び余裕綽々といった面持ちでリュウザンを嘲笑う。


「さぁな……おい!」


 リュウザンは天を仰ぐと、ソラがいる後ろに振り返った。


「まだ動けるな?」

「ったりめーだ」


 そう言ってソラは立ち上がった。


「ならこれを使え! お前用に調整(・・)してある」


 リュウザンは自分の剣をソラに手渡した。


「調整? ……どういう事だ? ……ぐっ! 何だこれはっ!?」


 刀身が落ちる。ソラが想像していたより、遥かに重かったのだ。それに何かが……身体の中の何かが吸われている感覚がある。


「話は後だ…前を見ろ!」


 ソラの腕を引っ張り、前に出す。


「行くぞ! ……昔、団長から一本取った戦法だ」

「えっ!? ……あ、ああ……(何なんだ!? この剣は?)」


 今一度、力を籠め刀身を持ち上げる。


「ご相談は終わりました? どっからでも良いですよ。来てください」


 クラヴィスが二人を嘲笑い悠然と立ち尽くす。


「行けっ!」


 リュウザンがソラの背を押す。


「おぅ! ……うりゃぁぁぁっ!!」


 ソラが気合の叫びともに一気に地を蹴り、駆け抜けた。


『ファイゴルっ!!』


 クラヴィスの手から飛び出た炎の獅子が大地を駆ける。これは一点集中型のものではなく、通常の炎系上級(ファイゴル)だ。


「ぅおおお……」


 だが、そんなものではソラは止められない。五連ファイゴルを弾いた、この剣の前には無意味。

 当然これも弾かれる。いや、弾かれるというより消滅した。


「馬鹿なっ!! 魔法が消滅する剣などある筈がない」


 クラヴィスが驚きのあまり後退る。


「言っただろう? …この剣はコイツ用に調整してあると」


 嘲笑うかのように語るリュウザン。

 つまり、この魔法を弾く剣はソラが使う事により、より強力にしてるのだ。

 いや正確にはソラの中にあるモノ(・・)を吸い上げて効力を上げていた。


(何なんだ? この剣?)


 胸中、剣に不審を感じているが、今はそれどころではないとも理解している。それ故、彼は止まらない。


「仕方ありませんね…ならっ!」


 再び余裕の笑みを見せたクラヴィスは、後ろに飛び距離を取る。

 重たい剣なのに、依然とソラの突進は止まらない。これが豪光の暴牛という異名を持つ彼の由縁である。


『ファイゴル…ファイゴル…ファイゴル…ファイゴル……』


 無数の炎の獅子が大地を駆けた。

 クラヴィスは通常の炎系上級(ファイゴル)を右手、左手と交互に連発し出したのだ。まるでサラが氷系初級(レイス)を連発するかように……。

 しかし、彼女はあくまで初級。クラヴィスは上級である。それも一点集中型より、制御は難しくないが、マナの消費が激しい方をだ。

 それなのに、クラヴィスは顔色一つ変えず放ち続ける。それに対しリュウザンは……。


「ば、バケモノかっ!?」


 と吐き捨てた。

 それでも、ソラはその悉くを消滅させ、クラヴィスに向けて突進し続けた。

 だが、やがて剣はファイゴルを消滅させられなくなり、リュウザンが使った時のように左右に散発し始める。


 ピキピキ……っ! 


 そして、剣にヒビが入った。


「はっ!?」


 ソラが怯む。


「アハハハハハハハハ…………やはりそうなりましたか」


 クラヴィスが見透かしたかのように高笑いをし出す。


「そいつは長く保たない……ソラ! 一気にケリをつけろっ!!」


 リュウザンがソラに向け叫ぶ。


「おりゃぁぁぁ……っ!!」


 クラヴィスに距離を詰めたソラが剣を振り上げる。


「結構保ちましたね…その剣」


 しかし、クラヴィスは余裕寂々の笑みを見せ身構えていた。


「はっ!!」

「な、何っ!?」


 だが、彼は斬り掛からず、真上に飛んだ。クラヴィスはそっちに気を取られる。


 プシューンっ!! 


 その隙を付き、リュウザンが手に持つ(・・・・)剣で斬り付けた。

 彼はソラに後ろに付き、クラヴィスの視界から剥奪させた事による見事な一撃だ。


「くぅぅぅ……その剣はどっからっ!?」


 だがクラヴィスも簡単には殺られない。

 致命傷は避ける為に身体を右に反らし、左肩の傷だけで済んだ。

 またリュウザンは一振りしか剣を持っていなかった筈。それがクラヴィスを欺いていた。剣は一振り(・・・)しか無いと思い込んでいたのだ。


「そこっ!」


 上に飛んだソラはクラヴィスの後ろに回り込み、斬り掛かった。


「ちょうしにのるなぁぁッ!!」


 ドッゴォォンッ!! 


「うわぁぁっ!」


 ソラ自身何が起こったのわかっていないだろう……。

 わかっているのは自分が、今吹き飛ばされている事。

 クラヴィスは炎系最上級(一点集中型ファイゴル)を魔法名破棄でソラの持つ剣の鍔に叩き込んだのだ。刀身は魔法を弾くが鍔なら有効だと判断した。

 ソラ自身には致命傷にならなかったが、今ので剣に亀裂が走る。保っても、後一度程度しか魔法を弾けないだろう。


「きぃさぁまもだぁぁッ!!」


 血走った眼で振り返る。だが、其処にはリュウザンはいない。


「終りだ!」


 彼は真上にいた。


 ブスっ!! 


「がはっ! …ば、馬鹿なっ!?」


 クラヴィスの胸部目掛けて落下。見事に心臓部を貫いた。更にリュウザンは其処を抉る。


「ぎゃぁぁぁ……っ!!」


 クラヴィスの断末魔と言えるような叫びが辺りに響いた。


「だから調子に乗るなと言ってるだろうっ!!」


 クラヴィスは血走った瞳でリュウザンを睨み、彼の腹に手を添えた。


「な、何っ!?」


 彼が驚くのも無理無い。確かな手応えのある一撃。確り急所を捕らえていた。だというのに……。


 ドゴォォォーンっ!! 


 次の瞬間、爆発が起きていた。


「ぐはっ!」


 ゼロ距離からの炎系最上級(一点集中型ファイゴル)により、リュウザンが空中に叩き上げられる。


「これで終りだっ!」


 ゴロゴロ……っ! 


 空が煌めく。


 ズドォーンっ!! 


 リュウザンに向けて一気に雷が落ちた。


 ビリビリ……バリィーンっ!! 


 剣が砕け散る。


「ふ~間一髪だな」


 ソラが安堵の息を漏らす。今砕けた剣はソラがリュウザンより更に上に投げたものだ。


「鬱陶しい奴らだ」


 クラヴィスが吐き捨てる。


「はっ!」


 その後、着地したリュウザンはソラの元へ引く。


「これで、さっきの貸しはチャラな」


 ソラが嫌味を漏らす。


「馬鹿言え! 俺がせっかく調整した剣を粉々にしやがって…倍返しな」


 リュウザンは憎たらしい笑みを浮かべ、嫌味を返した。


「なにおー」


 負けじとソラが突っ掛かる。


「貴様らぁ…何処まで舐めてるだぁッ!!」


 そのやり取りに余計に腹を立てるクラヴィス。


「あいつキレているぞ」


 ソラがボソッと呟く。


「お前の顔が気に食わないとよ」


 こんな時でもリュウザンの口から、嫌味が漏れる。


「なにおーっ!」

「どうやら……ボクを本気で怒らしたようですね」


 いきなり、クラヴィスが静かに呟く。


「「っ!?」」


 その態度にリュウザンとソラの背筋が凍る。嵐の前の静けさのような、恐怖を感じた。


「良いでしょう……ボクが最も魔力の溢れる姿に変わるとしましょう」


 そう言うと見る見る内に、クラヴィスの姿が変わり出す。特に身長が伸び、18歳くらいから25歳くらいの姿になった。


「ソラ……あれ何だ?」


 目の前の変化に理解出来なくてボソっとソラに訊く。


「アイツは肉体を若くする事で魔力を下げて遊んでるだよ普段」

「バカなのか? ソラと同じで」

「なにおーっ! 俺と同じにするな」


 こんな時でも軽口を叩き合ってる二人だ。


「だから好い加減にしろと言っているがわからないのか?」


 そのやりとりがクラヴィスの癇に触る。


「貴様等など……一瞬で消して上げます」

「おい! どうする?」


 ソラがリュウザンを突つく。


「さぁな……(参ったぜ…こんな所で、あの力を解放したくないんだがな)」


『○×●☆□◆……』


 クラヴィスが言葉にならない言葉を呟く。これは、シャルスで使われた大魔法の詠唱……邪に染まりし者のみ扱える大地系魔法(ガイアエンプレンス)だ。

 あの時とは違い、増幅魔法陣が無いとは言え、その威力は計り知れない……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ