第六話 コンビ復活
「本当にお前なのか……リュウザンっ!?」
ソラは驚き上がり、眼を見開く。目の前に立つ男の存在がそうさせていた。
彼…リュウザンはユグドラシル・ニーベにおいて、命賭して君主アルスを守り抜き、散っていった……その筈の彼がソラの目の前にいた。
「はて? 俺がわからないとは頭でも打ったのかい?」
リュウザンが嫌みったらしく笑い、ソラの前に出る。
「ちぇ…この憎たらしさ。お前しかいなよな」
ソラは、ハ~と溜息を付いた。
「おやおや…イクタベーレが誇る宮廷騎士の二人が揃ったわけですか……でも確か貴方はニーベで死んだ筈ではないのですか?」
余裕寂々といった面持ちでクラヴィスがリュウザン達と対峙する。
「おや…知らなかったのか? 英雄ってのは何度でも蘇るものなのさ」
リュウザンも負けじと余裕の笑みを見せ軽口を叩いた。
「なるほど…では早速ですが、また死んで頂きましょう」
更に負けじとクラヴィスも余裕の笑みで返す。
「そいつは願い下げだ。あまり何度も死んでいると格好付かないいからな」
「そうですか……でも詰め甘いですよ。どうせ狙うなら……」
右手の甲に刺さったリュウザンが投げたナイフを引き抜く。
「指にすれば良かったのに」
ボォ…ッ!
五本の指の上にある炎が強まった。リュウザンが投げたナイフにより、この五連ファイゴルの発射を一時的に止める事がで来たが、消滅したわけではないのだ。
「じゃ…これはお返しします」
ビューン……カーンっ!!
クラヴィスがナイフを投げ付けて、それをリュウザンが手に持つ剣で弾く。
「これでおしまいです。アハハハハハハハハ……」
今度こそ五連ファイゴルを発射される。ナイフは、隙を作る為の囮だったのだ。
これにより、避ける余裕がリュウザンにはない。
クラヴィスは確信していた。この五連ファイゴルなら二人共これで終わりだと……。
それ故、嘲笑うかのような高笑いが響く。
「ハハハハ……何っ!?」
だが、そうは上手くいかない。リュウザンは無造作に剣を構えているだけ。
なのに炎が二手に別れる。刃先に当たった瞬間、炎が左右に別れたのだ。
「ば、馬鹿な! その剣は魔力を弾くというのか!?」
クラヴィスが驚く。
「貴様相手に何も対策無しだと思ったか? 貴様の情報は、とある世話好きな老人から聞いているんでな」
「アハハハ……そう。でも、そっちこそ、そんな剣一つでボクに勝てると思っているのですか?」
再び余裕綽々といった面持ちでリュウザンを嘲笑う。
「さぁな……おい!」
リュウザンは天を仰ぐと、ソラがいる後ろに振り返った。
「まだ動けるな?」
「ったりめーだ」
そう言ってソラは立ち上がった。
「ならこれを使え! お前用に調整してある」
リュウザンは自分の剣をソラに手渡した。
「調整? ……どういう事だ? ……ぐっ! 何だこれはっ!?」
刀身が落ちる。ソラが想像していたより、遥かに重かったのだ。それに何かが……身体の中の何かが吸われている感覚がある。
「話は後だ…前を見ろ!」
ソラの腕を引っ張り、前に出す。
「行くぞ! ……昔、団長から一本取った戦法だ」
「えっ!? ……あ、ああ……(何なんだ!? この剣は?)」
今一度、力を籠め刀身を持ち上げる。
「ご相談は終わりました? どっからでも良いですよ。来てください」
クラヴィスが二人を嘲笑い悠然と立ち尽くす。
「行けっ!」
リュウザンがソラの背を押す。
「おぅ! ……うりゃぁぁぁっ!!」
ソラが気合の叫びともに一気に地を蹴り、駆け抜けた。
『ファイゴルっ!!』
クラヴィスの手から飛び出た炎の獅子が大地を駆ける。これは一点集中型のものではなく、通常の炎系上級だ。
「ぅおおお……」
だが、そんなものではソラは止められない。五連ファイゴルを弾いた、この剣の前には無意味。
当然これも弾かれる。いや、弾かれるというより消滅した。
「馬鹿なっ!! 魔法が消滅する剣などある筈がない」
クラヴィスが驚きのあまり後退る。
「言っただろう? …この剣はコイツ用に調整してあると」
嘲笑うかのように語るリュウザン。
つまり、この魔法を弾く剣はソラが使う事により、より強力にしてるのだ。
いや正確にはソラの中にあるモノを吸い上げて効力を上げていた。
(何なんだ? この剣?)
胸中、剣に不審を感じているが、今はそれどころではないとも理解している。それ故、彼は止まらない。
「仕方ありませんね…ならっ!」
再び余裕の笑みを見せたクラヴィスは、後ろに飛び距離を取る。
重たい剣なのに、依然とソラの突進は止まらない。これが豪光の暴牛という異名を持つ彼の由縁である。
『ファイゴル…ファイゴル…ファイゴル…ファイゴル……』
無数の炎の獅子が大地を駆けた。
クラヴィスは通常の炎系上級を右手、左手と交互に連発し出したのだ。まるでサラが氷系初級を連発するかように……。
しかし、彼女はあくまで初級。クラヴィスは上級である。それも一点集中型より、制御は難しくないが、マナの消費が激しい方をだ。
それなのに、クラヴィスは顔色一つ変えず放ち続ける。それに対しリュウザンは……。
「ば、バケモノかっ!?」
と吐き捨てた。
それでも、ソラはその悉くを消滅させ、クラヴィスに向けて突進し続けた。
だが、やがて剣はファイゴルを消滅させられなくなり、リュウザンが使った時のように左右に散発し始める。
ピキピキ……っ!
そして、剣にヒビが入った。
「はっ!?」
ソラが怯む。
「アハハハハハハハハ…………やはりそうなりましたか」
クラヴィスが見透かしたかのように高笑いをし出す。
「そいつは長く保たない……ソラ! 一気にケリをつけろっ!!」
リュウザンがソラに向け叫ぶ。
「おりゃぁぁぁ……っ!!」
クラヴィスに距離を詰めたソラが剣を振り上げる。
「結構保ちましたね…その剣」
しかし、クラヴィスは余裕寂々の笑みを見せ身構えていた。
「はっ!!」
「な、何っ!?」
だが、彼は斬り掛からず、真上に飛んだ。クラヴィスはそっちに気を取られる。
プシューンっ!!
その隙を付き、リュウザンが手に持つ剣で斬り付けた。
彼はソラに後ろに付き、クラヴィスの視界から剥奪させた事による見事な一撃だ。
「くぅぅぅ……その剣はどっからっ!?」
だがクラヴィスも簡単には殺られない。
致命傷は避ける為に身体を右に反らし、左肩の傷だけで済んだ。
またリュウザンは一振りしか剣を持っていなかった筈。それがクラヴィスを欺いていた。剣は一振りしか無いと思い込んでいたのだ。
「そこっ!」
上に飛んだソラはクラヴィスの後ろに回り込み、斬り掛かった。
「ちょうしにのるなぁぁッ!!」
ドッゴォォンッ!!
「うわぁぁっ!」
ソラ自身何が起こったのわかっていないだろう……。
わかっているのは自分が、今吹き飛ばされている事。
クラヴィスは炎系最上級を魔法名破棄でソラの持つ剣の鍔に叩き込んだのだ。刀身は魔法を弾くが鍔なら有効だと判断した。
ソラ自身には致命傷にならなかったが、今ので剣に亀裂が走る。保っても、後一度程度しか魔法を弾けないだろう。
「きぃさぁまもだぁぁッ!!」
血走った眼で振り返る。だが、其処にはリュウザンはいない。
「終りだ!」
彼は真上にいた。
ブスっ!!
「がはっ! …ば、馬鹿なっ!?」
クラヴィスの胸部目掛けて落下。見事に心臓部を貫いた。更にリュウザンは其処を抉る。
「ぎゃぁぁぁ……っ!!」
クラヴィスの断末魔と言えるような叫びが辺りに響いた。
「だから調子に乗るなと言ってるだろうっ!!」
クラヴィスは血走った瞳でリュウザンを睨み、彼の腹に手を添えた。
「な、何っ!?」
彼が驚くのも無理無い。確かな手応えのある一撃。確り急所を捕らえていた。だというのに……。
ドゴォォォーンっ!!
次の瞬間、爆発が起きていた。
「ぐはっ!」
ゼロ距離からの炎系最上級により、リュウザンが空中に叩き上げられる。
「これで終りだっ!」
ゴロゴロ……っ!
空が煌めく。
ズドォーンっ!!
リュウザンに向けて一気に雷が落ちた。
ビリビリ……バリィーンっ!!
剣が砕け散る。
「ふ~間一髪だな」
ソラが安堵の息を漏らす。今砕けた剣はソラがリュウザンより更に上に投げたものだ。
「鬱陶しい奴らだ」
クラヴィスが吐き捨てる。
「はっ!」
その後、着地したリュウザンはソラの元へ引く。
「これで、さっきの貸しはチャラな」
ソラが嫌味を漏らす。
「馬鹿言え! 俺がせっかく調整した剣を粉々にしやがって…倍返しな」
リュウザンは憎たらしい笑みを浮かべ、嫌味を返した。
「なにおー」
負けじとソラが突っ掛かる。
「貴様らぁ…何処まで舐めてるだぁッ!!」
そのやり取りに余計に腹を立てるクラヴィス。
「あいつキレているぞ」
ソラがボソッと呟く。
「お前の顔が気に食わないとよ」
こんな時でもリュウザンの口から、嫌味が漏れる。
「なにおーっ!」
「どうやら……ボクを本気で怒らしたようですね」
いきなり、クラヴィスが静かに呟く。
「「っ!?」」
その態度にリュウザンとソラの背筋が凍る。嵐の前の静けさのような、恐怖を感じた。
「良いでしょう……ボクが最も魔力の溢れる姿に変わるとしましょう」
そう言うと見る見る内に、クラヴィスの姿が変わり出す。特に身長が伸び、18歳くらいから25歳くらいの姿になった。
「ソラ……あれ何だ?」
目の前の変化に理解出来なくてボソっとソラに訊く。
「アイツは肉体を若くする事で魔力を下げて遊んでるだよ普段」
「バカなのか? ソラと同じで」
「なにおーっ! 俺と同じにするな」
こんな時でも軽口を叩き合ってる二人だ。
「だから好い加減にしろと言っているがわからないのか?」
そのやりとりがクラヴィスの癇に触る。
「貴様等など……一瞬で消して上げます」
「おい! どうする?」
ソラがリュウザンを突つく。
「さぁな……(参ったぜ…こんな所で、あの力を解放したくないんだがな)」
『○×●☆□◆……』
クラヴィスが言葉にならない言葉を呟く。これは、シャルスで使われた大魔法の詠唱……邪に染まりし者のみ扱える大地系魔法だ。
あの時とは違い、増幅魔法陣が無いとは言え、その威力は計り知れない……。




