表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦慄のイクタベーレ ~敗退せし者達の母国奪還の軌跡~  作者: ユウキ
第四部 第十一章 ソラとリュウザン
119/152

エピソード 異国の麗豹②

 俺はマルスト殿下に呼ばれ、王室に訪れていた。


「お呼びですか? 殿下」


 俺は跪きそう言った。

 マルストはワインを一口、口にする。


「悪いがリュウザン! 貴様の素性を調べさせて貰った」

「………」

「貴様はイクタベーレの小僧に仕えていたのではないか?」

「っ!!」


 直ぐにわかると思っていたが、こうもあっさりか。


「……なのに何故俺の所に来たのだ? リュウザン」


 威圧的な鷹の眼を此方を向ける。


「言った筈です……私は自分を肯定してれる者なら誰にもでも仕えます」


 再びワインを口にし、何かを熟慮してる感じだ。


「肯定ねぇ……俺が貴様を肯定したら、自分の君主を裏切るって事か?」


 マルスト殿下の瞳がより一層鋭くなる。


「イクタベーレの私は死にました……今の私はマルストの私です」


 そう…イクタベーレの俺は、もういないんだ。


「ふふ…ははは……ますます気に入ったぞ! リュウザン」


 マルスト殿下はワイングラスを回し、不気味に微笑む。


「良いだろう…俺に着いて来い」


 そして鋭い鷹の眼による眼光で俺を見詰める。


「元より、そのつもりです殿下! 我が剣は殿下に捧げました」


 俺は頭を垂れる。


「では、早速だが反乱鎮圧に俺と来て貰う……お前のその力、見せて貰うぞ」

「はっ!」


 立ち上がり、右手で握り拳を作り左胸に当てた。


 コンコンっ! 


 その時、部屋中にノックの音が響く。


「ん? 空いてるぞ。何の用だ?」

「はっ!」


 ガチャっ! 


 衛兵が王室の扉を開ける。


「陛下! 城に賊が侵入しました」

「そうか……では直ぐ行く」


 そう言ってマルスト殿下は王間に向かう。俺も後を追った。



 ・

 ・・

 ・・・



「久しぶりだなミク」


 マルスト殿下が微笑を浮かべる。賊というのはミクの事のようだ。俺は物陰から、その様子見ていた。


「ど、どーもです。マルスト殿下。ははははは……」


 相変わらず能天気な発言をするミクだが、流石にその顔は引き攣っていた。


「お前はセイラと共に反乱軍に身を寄せていると思っていたが、盗賊にでも転身したのか?」


 前にやる事があるから、まだ合流出来ないと確か言っていたな。つまり、マルストの家宝を手見上げにしようとしたわけか。


「え~~えと、その……」


 ミクが言葉に詰まる。


「それにしてもマルストの剣を持ち出そうとするとは、相変わらず遠慮のない奴だな…」

遠路(えんりょ)はるばるー♪」


 またアホくさい事を……。


「……なんてね。とほほほ……」


 自分の言葉に勝手に沈んでいる。はんと相変わらずな奴だ。


「まあ良い。せっかく来たんだ…ゆっくりしていくが良い……連れて行け!」

「はっ!!」


 マルストの衛兵が敬礼してミクを連れて行く。


「あっこら放せー!」

「放せーーっ!」

「放せったらーーっ!!」

「変なトコ触るなぁーーっ!!」


 いなくなる時まで騒がしい奴だな。

 俺は話が一区切りしたとこでマルスト殿下の前に現れた。


「殿下! 反乱鎮圧の出立は、いつでしょう?」

「今すぐ……だが、その前に…くくく……」


 マルスト殿下が不気味に微笑む。


「?」

「ミクを解放してやれ」

「はっ!? それが命令なら、やりますが……しかし何故?」


 一体何を考えているのだ? 


「くくく……第一に貴様が余所者だから、貴様がやった事なら他の者も、納得するだろう……」


 つまり俺を利用しようというわけか。此処の兵だと何かと問題になるからな。


「第二にアイツは、ああ見えてセイラのルーンナイツの主力だからだ」


 マルスト殿下がそう続ける。


「はっ!?」


 理解し難い。

 ミクが主力なら、セイランローヌ王女の元に返すのは得策ではないのでは? 

 アルス王子率いる解放軍は我軍の敵に値する。その戦力を増強する事は、自分の首を締める事になるのだぞ。


「くくく……リュウザン! 貴様に俺の目的を教えといてやろう……」


 マルスト殿下が薄く笑い語り出す。


「俺は、この大陸から人間外生物(バケモノ)共を全て排除し、我が国を虐げて来た首都ユグドラシルすらも、我が手に落とし、この大陸の全てを手に入れる」


 瞳がギラ付く。野心の燃えている事を象徴してるかのような眼差しだ。


「……それで何故ミクを?」

「利用できるものは、全て利用させてもらう……ただそれだけだ」


 つまりアルス王子の解放軍を利用し、人間外生物を駆逐するつもりか。


「わかりました……ではミクを解放致します」


 俺は頭を垂れ下がった。



 ・

 ・・

 ・・・



「朝食?」


 俺の足音に気付いたミクは、鉄格子の中でそう呟き、此方に向かって来た。


「言っとくけど、私はコーヒーがないと許さない人だかんね~。その辺は、ちゃんとして貰うから……だいたい捕虜の取り扱いは……」


 自分の立場がわかっているのか? 俺は胸中呆れた。


「生憎朝食の配膳でもなければ、コーヒーもない」


 俺がミクの言葉を遮る。こんな奴の言葉にイチイチ付き合ってられん。


「あっ!! ……リュウザンさんっ!?」


 何度か会った事あるからな。直ぐに気付かれたか。


「………」


 だが、俺は相手にしなかった。


「うん、合ってる! 間違いない! あたし一度見た美形は絶対忘れない人だもん」


 しかし、彼女は俺をマジマジと見詰めて来た。美形は認めるがな。

 だが、そこまでマジマジ見なくても、わかっているだろう……。


「………」

「貴方イクタベーレのリュウザンさんでしょ?」


 イクタベーレの俺は死んだんだ。


「………」

「は~ビックリ……やっぱり人違いじゃなかった。ねぇ? 何でマルストなんかに? 貴方も捕まったの?」

「いや……」

「じゃあ何で? ……あ! スパイだっ!! スパイしてるんでしょう? いやーもうやり手なんだから。くぬっくぬっ」


 彼女は、鉄格子の隙間から手を出し俺を突っついて来る。正直ウザい。


「いや、俺は自分の意志で此処にいる」

「えっ!?」

「解放してやるから、さっさと引き上げるんだ」


 牢屋の鍵を放り投げて、俺はその場を後にした。


「え? いや、それは嬉しいけど……本当にどうしたの? だってアルスエード王子に忠義尽くしてたんじゃなかったの? あ、待ってリュウザンさん……」


 最後の最後まで煩い奴だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ