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戦慄のイクタベーレ ~敗退せし者達の母国奪還の軌跡~  作者: ユウキ
第四部 第十一章 ソラとリュウザン
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エピソード ソラ②

 俺はリュウザンはジャイロ副団長に鍛えて貰える事で、一緒にいる時間が更に増えた。

 最初は陰険で人を見下すし、プライド高く嫌な野郎だったが、いつしか友と呼べる存在になっていた。

 それは同じ目標が出来たからだろう。ジャイロ副団長に一本取るという……。

 副団長は強かった。俺達が二人がかりでも、まるで赤子を捻るように扱われる。

 はっきり言って次元が違っていた。俺達は、なんとしてでも、この団長に一本取るんだと誓い、日々鍛錬を怠らず、遂には、二人による連携で一本取れた。


 しかし、悔しかったのは、ジャイロ団長は恐らく全力を出してなかった。何故なら団長は剣を一本しか使わなかったのだ。

 団長の腰にはいつも二本の剣が携われている。一振りはただの鉄の剣。もう一振りは柄に獅子が型取られた剣。見る限り、それなりの名剣なんだろう……。

 だが、決して抜かない。実戦でも同じ、絶対に抜かないのだ。だから俺は訊いて見た。


「ジャイロ副団長は何故それをお使いになられないのですか?」


 団長はその剣に手を添え、静かにゆっくり語る。


「これは扱いが難しくてな、私はまだ扱えきれないのです」


 扱いが難しい? 良く意味が理解できなかった。

 そして、ジャイ副ロ団長に一本取れたのは、これが最初で最後となった。


 過酷な運命の歯車が動き始めたからだ。後に第二次暗黒魔王戦争と呼ばれる戦いが始まる。

 シャルスの裏切りにより、イクタベーレ騎士団は全滅に危機に瀕した。ベテラン騎士が次々に倒れていく。団長も倒れ、ジャイロ副団長が団長となる。

 そんな中、俺達はまだまだヒヨッコ扱いで、最前戦には立たせてくれなかった。

 そのお陰で俺達は生き残り、アルス様と共に逃げ延びた。

 そして、俺達はどんな事があってもアルス様の大望を叶えると、再び誓いあった。


 なのに……。

 なのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのにナノニナノニナノニナノニ……。


 アイツは……命賭してアルス様を護り抜いた。キザで憎らしくて、クールでプライド高く、陰険でいつも人を見下す……それでいて、必ず俺より一歩先に行く(・・・・・・)

 俺は許せなかった。アイツに出来たのに俺には出来なかった。


 後は頼んだぜ―――――っ!! 


 これがアイツの最後の言葉だ。頼まれても、果たして俺はお前のように出来るのかよとずっと悩んだ。自問自答を繰り返した。

 自問自答を繰り返し繰り返し繰り返し、出ない答えを考え続けた。

 いや、答えなど最初っから出るわけがないのかもしれない。いつも俺の傍にアイツがいた。

 だが、もうアイツはいない。心にポッカリ穴を空けた俺には戦う事すらできない。


 剣を持つと手が振るえる。剣が俺に問い掛けている気がした。()()()()()()()()()()()()? と……。

 そう…いつか見た夜空の星の英雄達のように。しかし、重みが違う。違い過ぎる。

 身近で…目の前で…耳元で…心に直接そう言って来てる感じだ。


 気付くと俺は孤立していた。誰とも関わらず、一人でいる事が多くなった。

 もう俺の居場所はないかのように。アルス様も俺を作戦から外すようになった。一層見捨てて貰った方が楽かもしれない。




 そんな時に、あの少年に出会った。歳は見た目から言って12,3の子供である。この少年は、可愛いらしい瞳で、俺を覗いてきた。

 しかし、その瞳の奥では殺戮に満ちた、深い闇を感じさせられるものだ。心の奥で警報器が鳴り響く。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 こいつは危険だ。

 止むことのない警報が脳を刺激する。

 少年は俺を観察するかのように見上げながら、俺の回りグルーっと一周してから、口を開き始める。


「イクタベーレ騎士団の英雄が居残りとは意外ですねソラさん。無論この居残り部隊を統制する為にアルスエード王子が残したのでしょうが……ですが本当にそれだけが理由でしょうか?」


 何か見透かされている感じだ。敵には間違いない。しかし、斬り掛かったところで敵う相手ではないと直感した。


「……誰だ?」


 俺は睨み付けた。


「そんな警戒しないでくださいよ。ボクは貴方と話したいと思っていた者ですよ」


 笑みを見せるているが、どこか冷たいものを感じる。


「……お前は誰だ? と聞いている」


 未だ警報は鳴り止まない。此処で止めないと解放軍が危ない……だがどうやって? 

 戸惑ってると、少年は満面の笑みを作りだす。


「これは申し遅れました。クラヴィスと申します…以後お見知り置きを」


 礼儀正しくお辞儀して来た。


「……できれば二度と会いたくないな」


 額に汗が流れる。全身の神経がヒリヒリする。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 コイツハキケン。

 こいつは危険だと脳髄を刺激する。だが、身体が動かない。いや、動いたら一瞬で俺の存在が消える。


「アハハハハハハハハ……これはまた…ソラさんやはり貴方は面白い方ですね」

「………」


 何が可笑しいだコイツは? しかもおぞましい高笑いをしやがって。俺の中の警報が強くなった。


「それでは、またお会いしましょう」


 最後にそう言って、転移魔法(ソウテン)で去って行った。




 シャルス制圧戦の時に悪夢が起きた。解放軍の大半の新兵達を壊滅させる恐ろしいあの大魔法。

 シャルス城の目の前の森をほぼ焦がし、地獄を思わせるあの光景。俺の頭にクラヴィスが浮かんだ。

 これをやったのは、アイツしかいない。何故気付かなかった? 

 自分が腹ただしい。俺の目の前に現れた時点で、何かやらかすのは明白だ。これじゃあまたアルス様の心に大きな傷が付く。


 何もできなかった自分が悔しかった。一人傷付くアルス様に俺は何も出来ない。

 アルス様を遠くから、見守るしかできない。しかしディーネ王女がアルス様を心配してやって来た。

 眼が合う。俺は何も言わず其処から去る。後はお願いしますディーネ王女。


 俺には何も出来ない。

 俺には……俺には……俺には……お前ならどうした? なぁリュウザン。後を頼まれたのに……。

 お前に後は頼むって言われたのに……。


 何も出来ない自分が悔しい。リュウザンには出来たのに。お前がいたら、こんな事にならなかったかもしれない。

 お前なら、何てアルス様に声を掛ける? 俺にはわからない。


 お前は命賭してアルス様を護った。護り抜いた。俺には出来ねぇよ。お前格好良過ぎだぜ。俺にはお前みたいに出来ねぇよ。

 この戦いは、アルス様にとって本当に辛い戦いだった。

 だがミクによって先行したセイラ王女が救出され、そのセイラ王女から、齎された情報により、シャルス城は制圧できた。




 次の日、俺はジャイロ団長に会議室に来るように言われた。会議室に入ると静かに座るジャイロ団長の姿があった……。


「お呼びですか? ジャイロ団長」

「とりあえず座りなさい」


 俺は空いてる席に座った。


「先日のシャルス城での戦いは何ですか?」


 俺を睨む。


「何ですか? とは何の事でしょう?」


 冷めた態度で返す。ああわかってる。今の俺は剣もロクに扱えないんだ。それを咎めているのだろう。


「本来のお前なら、積極的に先陣を切るのではないですか?」


 明らかにジャイロ団長は怒っていた。


「調子が悪かっただけですよ」


 ただの言い訳だ。


「先日だけではないです……此処最近のお前は一体何なんですか?」

「別に良いじゃないですか。作戦は成功したんですから……それに俺一人いなくたって問題ないでしょう?」


 そう俺なんかいなくても……。俺はリュウザンじゃないんだ。


「そういう問題ではありませんっ!!」


 ジャイロ団長は怒鳴り、ドンとテーブルを叩いた。


「……リュウザン(・・・・・)が死んでからというものの様子がおかしいですよ」


 わかってますよ。アイツが死んでから俺は……。

 自分が不甲斐ない。遂には立ち上がってしまう。

 ジャイロ団長に何を言われようが、俺にはどうする事もできない。


「どうしました?」

「気分が悪いので失礼します」


 俺は出口に向かう。


「待ちなさい! 待ちなさいって言ってるのですっ!!」


 再びジャイロ団長が怒鳴る。


「もうほっといてくださいっ!!」


 俺もつい怒鳴ってしまう。


「部下をほっておけますかっ!! お前このままでは死にますよ」

「だったら、破団でもなんでもしてくださいよ!」


 最後にそう言うとバーンと扉を強く閉めて、会議室から出た。

 そう俺なんか破団にしてくださいよ。一層の事、そうしてくれた方が楽だ。もう何も考えなくて済む。




 それからシャルス城にて志願兵が続々と集まって来た。その中にアイツ(・・・)がいた。


「お久しぶりですソラさん」


 ぬけぬけと、満面な笑みで挨拶してくる。相変わらず、その瞳の奥で邪悪な闇が揺れている。

 コイツは解放軍に潜り込んで何をしたいんだ? 

 疑念付き纏う。内部崩壊? だが、どうやって? 俺にこうやって接触してくるという事は俺が鍵になっているのか? 


「……俺に何の用だ? クラヴィス」


 俺が鍵なら、なんらかのアクションがある筈だ。どうにかコイツの手札を探ってやる。


「これは光栄です……名高きイクタベーレの騎士ソラさんに名前を覚えて頂けるなんて」


 能書きはいい。


「……何の用だ?」


 再び問う。


「いやねぇ……ソラさんは大切なご友人を亡くされ、さぞお怒りかと思いまして」

「ああ……確かに腹が立って仕方無いな」


 自分自身にな……。


「なら…ボクがお役に立てます」

「何が言いたい?」

「力要りません?」


 急に真顔になる。それにより一層コイツの邪悪差が増したように見えた。


「ですから力ですよ……ボクが力を授けますよ……アルスエード王子(・・・・・・・・)を殺す力をね」


 更にクラヴィスの眼が邪悪に煌めく。読めた。コイツは俺を利用してアルス様を殺し、解放軍を内部崩壊させる気だ。だったら裏を掻いてやる。


「……どうやって俺に力を与える?」

「な~に簡単ですよ。ボクの手に触れ、ボクの魔力を受け取れば良いですよ」


 そう言って手を差し出す。どうする? 一瞬戸惑った。

 だが、結局クラヴィスの手を掴んでいた。さて俺に裏を掻く事が出来るか問題だが……。


「では行きますよ」


 クラヴィスの手から、力が……いや深い憎悪が流れてくる。くっ! 思わず顔が歪む。


「大丈夫です……直ぐに楽になりますよ」


 クラヴィスが不敵に笑う。手から直接頭へ深い憎悪のようなものが流れてくきた。

 アルスエードを呪え。

 アルスエードを憎め。

 アルスエードを潰せ。

 アルスエードを殺せ。

 アルスエードを消せ。

 アルスエードを葬れ。

 親友を死においやったアルスエードを憎み、そして殺せと頭に流れて来た。


「くっ! ぬぅ~」


 頭が痛い。激痛が走る。深い憎悪に呑まれる。正気を保っていられない。やはり俺には無理だ。

 ……リュウザン。やっぱり俺もそっち行くよ。お前との誓いは果たせないな。俺は深い憎悪で支配されて行った。

 ……ア…ルス…様……リュ…ウザ……ン……すまない。


 後は頼んだぜ―――――っ!! 


 だがその時だ。奴の最後の言葉が頭に浮かぶ。

 プッハハハ……。

 俺は胸中で笑っていた。そうだよな。このまま死んだら、お前に笑われちまうな。絶対にアイツにだけには笑われたくねぇ。

 一度は支配されたが、なんとか俺は憎悪の塊を自分の中から追い返した。


「どうですか?」


 どうやらクラヴィスは、自分の術に掛かったと思い込んでいる。

 ったくまた、あの陰険でクールなプライド高いアイツに助けられたぜ。


「……悪くねぇ」


 俺は術に掛かったフリをした。


「アハハハハ……さぁソラさん…アルスエード王子に最高の地獄を見せましょう」

「………」

「でもダメですよ…まだ手を出しては」


 クラヴィスの眼が邪悪に煌めく。


「……ああ」

「最高の絶望を与えるチャンスを待ちましょう。アハハハハハハハハ……」


 どうやら俺を支配したつもりだろうが、そうはさせねぇ。逆に俺がお前を掌握してやる。




 遂に解放軍はイクタベーレが当地する砦までやってきた。

 イクタベーレまで眼と鼻の先。その砦奪還の作戦は、セイランローヌ王女が先行し、敵を撹乱。そしてアルス様率いる本体突撃。

 それに加え、俺と数人の新兵での裏口から襲撃。だが、この程度の戦力、恐らくセイランローヌ王女一人で十分。

 俺と新兵達が態々裏口から行く必要ないだろと思っていた矢先、クラヴィスが再び俺の前に現れた。


「チャンスですよ…ソラさん」


 満面の笑みを見せる。


「……何が?」

「増援で、裏口から来た仲間が、まさか敵に回るとはアルスエード王子も予測してないでしょう……これは、あのアルスエード王子に取って苦痛になる。アハハハハハハハハ……」

「いや……今回は不味い」


 咄嗟に俺は止めていた。


「何故ですソラさん?」

「恐らくセイランローヌ王女一人で終わる。砦の者と連携を取るのは皆無。そして無傷な本隊との衝突になる」


 なんとか理由を作った。言う通りにしていたら、掌握なんて出来ないだろう。


「ほー……流石はソラさん。良くわかってますね……良いでしょう此処はソラさんの言う通りにします」


 どうやら理解してくれたようだ。

 しかし、コイツから眼を離すわけにはいかない。だから俺はコイツを見張る事にした。


「あれソラさん行かないんですか?」

「さっきも言ったがセイランローヌ王女一人で十分だ。態々行く必要もない。それにこの方がアルス様(あの人)の精神的なショックが大きくなるだろう……」


 何よりお前の監視が必要だ。


「なるほど……確かにそれはそれで面白いですね。アハハハハハハハハ……ではソラさんは悠長に傍観されるのですね」

「……ああ」



 ・

 ・・

 ・・・



「てめぇ何を考えていやがるっ!?」


 ソラに胸倉を掴み壁に叩き付けられた。まぁこうなるわな。作戦を結果的に無視したんだから。


「どういうつもりだソラ? てめぇの部隊は裏手口から進入し、挟み撃ちにする作戦だった筈だっ!!」


 かなりご立腹だな。


「なのに何故動かなかったっ!?」

「……この程度の砦なら、そこまでしなくとも楽に陥せると思った」


 悪いがこれは俺の問題だ。だから、お前を巻き込むわけにはいかない。


「確かにセイラがほとんどカタを付けた……だがよ、ふざけんなよ! 理由になるかよっ! そんな事……おかしいぞ近頃のお前…リュウザンの事があってから……!」


 うるせーよ。それは俺が一番良くわかってるよ。だけど、俺には奴の監視(それ)しか出来ないんだよ。


「もう良いじゃないですか…イスカさん」


 背後からリビティナがイスカの肩に手を置いた。


「しかしっ!」


 尚も止まらないなイスカ。


「もう良いっ!!」


 珍しいなお前が怒鳴るなんて。

 リビティナが俺をじっと見詰める。


「ソラさん、今回の事はもう良いです。ですがこれっきりでお願い致します……今はアルス様にとって大事な時だと思います……それはあの時(・・・)から一緒にいる貴方なら良くわかっているのではないですか? イクタベーレが陥ちた時、自分もいたので良くわります」


 わかってるよ。だから俺が……俺一人でクラヴィスを止めてやる。

 お前とはずっと一緒にやって来たけど、それでもこれは俺がやる。


「イスカさん! 行きましょう」


 リビティナは踵を返す。


「ちっ! クソがっ!!」


 イスカが舌打ち一つ溢し、リビティナの後を追う。悪いな二人共。

リュウザンはソラに笑われてたまるかと思い奮起し、草人ジョーゼンを倒しました

ソラはリュウザンに笑われてたまるかと思い、クラヴィスの魔力を跳ね除けました

良いライバル関係にしたつもりです

少しでもそう思って頂けましたら幸甚です

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