第三話 敵増援はソラ?
「………といわけだ」
新兵達の詰所からソラの声が聞こえて来ていた。
「はっけ~ん♪」
其処に現れたのはミクだ。彼女は物陰に隠れて覗き見を行う。
「では、戦果を上げたい者は準備を整え二時間後、表に集合だ」
「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」
「あちゃ~……よりによって、お供は新兵さん達かよ~……だーいじょうぶなのか~?」
ミクはおでこに手を当て頭を抱えてしまった。
・
・・
・・・
「戦果を上げたい者は全員来たか?」
表で新兵達が集まる中、砦の出入口から出て来たソラが叫ぶ。
「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」
新兵達が一斉に応えた。
「出撃っ!!」
短い一言を言い放つと馬に股がった。
「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」
続けて、新兵達も一斉に馬に股がり、ソラに道を開けた。そしてソラがその道を通り、先頭になると新兵達も続く。目指すは現在地から北東に位置する北西の砦……。
だがその途中でジャイロが待ち構えていた。構わずソラは横切ろうとする。
「私が……」
ジャイロが何を呟き始める。その瞬間ソラはピタッと止まった。
「私がお前と同じ経験をしなかったと思っているのですか? 友だけではありません。守れなかった者は沢山います……」
ジャイロの言葉に重みが掛かる。伊達に団長しているわけではない。イクタベーレが陥ちるまでは、副団長だったが、それでも色んな経験を積んで来た者の重みがあった。
「尊敬する先輩も……共に入団した同期……」
淡々と語り途中で濁す。
「そして大切な部下も」
「っ!?」
ビクッ!
ソラの心が揺れたような感じがあった。
他の者にこれを言われて一瞬だけ反応してしまう事はあったが、ジャイロだけは、今までに無い重みがあった。それ故、少し心が揺れたのかもしれない。
「だが、私は歩みを止めません……だから此処まで来れました……」
「………」
「お前は此処で歩みを止めるのですか?」
静かに最後の言葉を掛ける。ジャイロは半ば諦めていた。これがソラと交わす言葉になるだろうと感じていた。
「………」
パカパカ……。
結局何も言わずソラは、これが自分の答えと言わんばかりに歩みを進めた。馬の足で……。
「ソラ……ミク殿、頼みます」
一人残ったジャイロが呟く。
「了解です…ジャイロ団長」
「はっ!?」
突然真上から声が聞こえジャイロは驚き上を見上げた。
「……ミク殿いつから其処に?」
上空に彼女はいた。
「さっきから……余程大切な部下に集中していたのですね。他の気配に気付かないなんて」
真剣な眼差しで返す。
「……はい」
・・・・・・・・・・・・
ソラ率いる新兵達は北西の砦に到着していた。
砦の外は特に見張り等、配備していない。罠ではないかと思わせる様子だ。
「お前達は合図があるまで此処で待ってろ」
「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」
新兵達がソラを見守る中、ソラは単独で砦に進入して行った。
砦の中は一人の男…いや少年が待ち構えている。歳は12,3くらいの少年……クラヴィスだ。
「良く来てくれましたね…来てくださると思ってしたよソラさん」
不適に笑うクラヴィス。
「………」
ソラかは何も答えない。
「アルスエード王子は今頃、西の砦に向う街道で足止めを食らっています。ですが時期に突破されるでしょう……となると西の砦が要となります。其処で挟み撃ちにするのです」
饒舌に語るクラヴィス。
「アルスエード王子も、この砦に増援部隊を配置してある可能性は認めているようですが、まさかそれがご自分の部隊そのものだとは思ってないでしょう。アハ、アハハハハハハハハ……」
おぞましい邪悪なものを感じる高笑いを上げた。
「……!?」
それを物陰から聞いていた者が驚く。彼女はソラが心配で、作戦を放棄し、彼を追って来ていたのだ。
「貴方達に力を授けます。ボクの持てる極上の力をね……その力で王子を殺すのです」
「……わかった」
それをソラは素直に応える。
「ですが、その前に邪魔者を始末しましょう」
クラヴィスの邪悪な瞳は、彼女が隠れている場所を見詰める。
「ソラさんっ!!」
バレてしまった以上、隠れていても無意味。彼女……リビティナはソラの目の前に飛び出し弓を構える。
ソラは平然と歩み寄る。矢を掴む右手を離せば済む。それでソラを止められる。
だが、リビティナは躊躇いが生じていた。逆にソラは平然とリビティナの元まで歩み……。
バコっ!
腹に強烈なパンチを入れた。
「ごふっ! ……そん…な…馬鹿な…こと…やめ」
バタンっ!
リビティナの意識は闇に沈んでしまう。
「アハ、アハハハハハハハハ……」
クラヴィスの高笑いだけが砦内に響いた。
「では兵達の元へ……」
ソラは新兵達が待つ外へ向う。
「ククク……そうですね」
クラヴィスも続く……が、リビティアの前で止まる。
「ねぇ……ソラさん? このままで良いんですか?」
邪悪な瞳をソラに向けた。
「……小娘一人放っておいて問題無い」
ソラは見下すようにそう言う。
「それもそうですね……ボク達の目的はアルスエード王子を止める事ですからね。急ぎましょうか?」
砦の外に出ると、新兵達が続々と集まって来た。
「ソラさん! ご無事でしたか?」
「中はどうでした?」
そして、ソラの隣にクラヴィスがいる事に気付く。
「ソラさん…その子供は?」
クラヴィスは何も答えず右掌を新兵達に向けた。瞳に邪悪な闇が揺らめく。
「「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」」
ただならぬ気配を感じたのか、新兵達が一斉に身構える。
「貴方達に極上の力を与えます」
クラヴィスがそう言うと右掌からドス黒い霧のようなものが発生させた。
それは瞬く間に新兵達を包む。霧が晴れると放心状態のような眼付の新兵達が操り人形化して直立していた……。
……………プルプル……。
クラヴィスの右手が奮えている。
「どうした? これからなんだよ。これからが面白いんだ」
クラヴィスは奮える右手を左手で抑える。彼の額には大量の汗が流れていた。
「顔色が悪い…どうかしたのか?」
その様子を見ていたソラが安否の声を掛ける。
「何でもありません。さあ反乱軍を攻めましょう。彼の理想主義を瓦礫にする時が来ました。その教訓を持って冥府に渡しましょうアルスエード王子を……最高のショーな始まりです。アハ、アハハハハハハハハ……」
そう言うとクラヴィスは深呼吸をして新兵全員を見回した。
「では、思う存分楽しんで来てください」
そして、瞳の奥で邪悪な闇を揺らつかせながら、にこやかに手を振りながら言った。
「……ああ」
ソラがそれに応え出陣した。
――――――――
「あちゃ~…ソラやり過ぎだよ」
上空で窓から砦の中を覗くミクはリビティナを昏倒させたのを見てた。。
「えっ!?」
ミクは何かに気付く。しかし気のせいだろうと思い直した。
ソラ達がいなくなった砦内にミクが降り来て、気絶したリビティナを抱きかかえる。
「リビティナは女の子なんだから、もう少し加減してあげないと……って彼女が聞いてたら怒るかな」
そうリビティナは女である前に騎士だと自分に言い聞かせている。
今のミクの一言を聞いていたら十中八九怒っていただろう……。




