植物怪人VS騎士 戦士 村人 治癒師
某鬼ごっこゲーを意識した一作になると思われます。
「ここは……?」
女性は気が付くと森の中に一人立っていた。
「確か……」
顎に手を当てて、何故ここにいるのかを考える。
「調査……駄目だ、それ以外が浮かばない」
頭を横に振り、歩き出す。進んでいると、前方の方から叫び声が聞こえてきた。
「誰かー!」
女性は叫び声の方へ向かって走り出す、その先にいたのは二人の少女だった。
「どうかしたのか⁉」
叫びながら少女に向かって行くと、彼女はこちらを向き嬉しそうに叫ぶ。
「ああ! 人がいた! こっちこっち!」
女性は手を振る元気そうな少女に近づき改めて話を聞きだす。
「人が二人もいるとは……君達も迷ったのか?」
「そうなんだよ! でも三人寄ればもん……もん……?」
少女は空虚を見つめながら言葉をひりだそうとうわ言を呟き続ける。
「文殊の知恵……か?」
「ああ! それ!」
女性の指摘を聞きスッキリしたのかまたしても大声で喜ぶ。
「それよりも、ここは何なの⁉」
二人の下りにしびれを切らしたのかもう一人の少女がヒステリックに叫ぶ。
「ああもう! 森まで行って、果実集め何てやらなきゃよかった!」
「熱くなりすぎだよ。今は人が増えた事を喜ばないと!」
「私はアンタみたいに軽くないの!」
元気少女の台詞にも攻撃的になるヒステリックな少女は続けて言った。
「それに、頭にモヤがかかった感じがして……気持ち悪いしイライラするのよ‼」
「頭にモヤ?」
彼女の最初の言葉が気になった女性はその言葉を復唱をする。
「えっと……お姉さんは自分の名前とか分かる?」
「名前……それは……」
元気少女に言われ、女性は自己紹介をしようとした。しかし、ヒステリックな彼女の言う通りその部分だけがモヤがかかったかのように朧気で、声すら出ない。
「どういう事だ……? 思い出せない……⁉」
「やっぱり?」
「というと? 君もか?」
「うん、私も、この子もね」
「……謎の森……記憶喪失……どういう事だ……?」
ガサガサッ!
「誰⁉」
顎に手を当てて考えようとすると、草むらから何かが動く音が聞こえて三人は音の方を向き警戒をする。
「私達に敵意は無い、人なら出て来てくれ」
女性の声に反応したのか、草むらから気弱そうな少女が震える足で現れた。
「ひ、人ですか……?」
「ああ。突然ですまないが自分の名前は分かるか?」
「えっと……」
少女は女性の質問に答えようと考え込む。
「あれ? えっと……」
「いや、もういい。君も私達と同じで記憶が朧気なのだろう?」
「はい、すいません……」
「最ッ悪ね!」
「うう……」
「そう言うな」
ヒステリー娘の罵倒に縮こまる。女性はそれを論する。
少女が声を掛ける。
「あの……」
「ああ、現状を話さないとな」
女性はこれまでにあった事、自分達に起きた事を全て話した。
「そうだったんですか」
「今後、どうするか考えていた所なんだ」
「でも、これで四人揃ったね! こう言うの、四面楚歌って言うのかな?」
「それ、悪い意味の言葉と思うんですが……」
「で、アンタは何か考えはあるの?」
少女は少し考えると、顔を上げて言う。
「私は、名前が無いと……不便ですよね」
「取り敢えず、仮名とか決めとく?」
「そんな事してる場合⁉ 私は早く帰りたいの!」
「す、すいません!」
「いやいや、決めた方がいいって!」
「私の話聞いてた⁉」
「騒ぐな‼」
言い争う三人を女性が怒鳴ると、驚いて黙り込む、それと同時に一斉に視線を移した。
「呼び合いが必要になってくるかもしれないからな、簡単な言葉でもいいから決めておくべきだと思う」
「分かった!」
「あ、ありがとうございます!」
「はぁ……」
一人を除いて賛同し、早速、元気少女は、女性の体に視線を向ける。
「何か、私よりもいい装備持ってる?」
元気そうな少女はそう言って女性の服装をまじまじと見つめる。
彼女は全身を銀の鎧で固めており、凛とした顔立ちに長いであろう金髪を後頭部に雑に留めている姿をしており、それに対して少女は思った事を言った。
「何か、騎士みたい!」
「騎士みたいか……」
彼女の台詞を呟くと、少し間を置いて口を開く。
「仕方がない、取り敢えず、名前を思い出すまでは騎士と呼んでくれ」
女性、もとい騎士は元気少女の服装を見つめる。
「君の恰好は、少なくともベテランの冒険者とは言い難いな……」
赤色のシャツに茶の革の手袋、ピンクのミニスカートを着こなし、鉄の肩当と足甲を装備した、赤みを帯びた髪をツーサイドアップで止めている元気そうな少女は得意げに答える。
「じゃあ、私は戦士でどうかな?」
茶髪のロングヘアにみすぼらしい格好をしたヒステリックな少女は腕を組んで三人から目を逸らしつつ言う。
「……村人」
白のローブを纏い、首には十字架のペンダントを掛けて、腰には一冊の本をぶら下げている。茶色の髪に二本のおさげを肩に掛けている気弱そうな少女は口を開いた。
「えっと……治癒師です」
「治癒師?」
「えっと……傷を治す魔法や、薬学に詳しい……と思います……」
「思う? かえって不安しかないわ」
「すいません……」
「そう言うな、記憶が無くて不安なのは彼女もだ」
村人の言葉に思わず謝る治癒師。騎士は村人を論すると、口を開いて疑問を投げかける。
「それで、何故そう思うんだ?」
「えっと……この本です」
治癒師は腰にある本の表紙を三人に見せつける。
「これは……見た感じ手作りっぽいな」
「でも、気が付いたらこれを持ってたんです。それで、もしかしたらって……」
「薬学……は兎も角、魔法は使えないのか? すまないが、私にはそう言った知識が無いからな……」
「多分、無理なんじゃないかな?」
騎士と治癒師のやり取りの間に戦士が割って入って来た。
「何故?」
「私さ、火起こし程度の魔法なら使えるんだけど、それすら出せなかったし……」
「無能ばっかじゃない!」
またしてもヒステリーを起こす村人、
「リーダー気取り、馬鹿、雑魚、どうしろって言うのよ‼」
フォ……フォ……フォ……フォ……
その時四人の耳に不快な声が微かに聞こえてくる。
「な、何ですか?」
フォ、フォ、フォ、フォ
「近づいて来てる……!」
そして一行の前に、木々を分け一体の異形が現れた。
その姿は人の形は辛うじてしているが全身が木になっており、頭部は髪の毛の様に蔦が生い茂り、左腕は全体が蔦に覆われていてそこには謎の果実が実っている。
それを見た村人は恐怖に囚われてしまった。
「ひぃ⁉」
「あ!」
「待て! 君が一人になるのは危険だ!」
騎士はそう言ったが、彼女はそれを無視して何処かへと走って行ってしまう。
異形は三人を見つめるとゆっくりと動き出す。
「来るか……!」
騎士は右手を左腰に伸ばし何かを掴もうとした。
「……⁉」
手に感触がなく腰を見てみると騎士と名乗った癖に盾どころか剣すら無い事に気づく。
「あれッ⁉」
戦士の声が聞こえ、その方を向くと彼女も同じ事を考えていたのか、右手を右肩後ろに伸ばして空虚を掴んでいた。
木の異形はゆっくりと三人に向かって迫って来る。
「ぐっ……!」
全員、戦う手段が無い現状の中で彼女は叫ぶ。
「全員、散って逃げろ‼」
「分かった!」
「は、はい!」
騎士の叫び声を聞くと二人はそれぞれ別々の方向へと走り出した。
ステータス紹介
騎士(24)
体力:4 速さ:2 器用:2 耐性:3
気質:若き騎士団長
性格:リーダーシップ 自己犠牲 逆境