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56話 お酒ってほんっとぉに怖いもんですね

 お酒もとっても美味しくて。幸宏さんはいつも通り饒舌で、ザザさんとザギルがトムジェリで、セトさんは静かに突っ込みに回っていて。初めて食べるおつまみだって美味しくて、何を使ってるのか教えてもらったりして。


 日本での話とか、カザルナでの地方の変わった風習とか、とりとめもなくおしゃべりをして。

 きれいな女性達がお誘いに来てたりしたけど、みんなそっけなく断っててちょっと優越感だったり。ふふふ。みんないい男だもんねぇ。みんな私に優しいんだよ。いいでしょう。


 そんでまたごっつい美人きたなと思ったら夜の街モードのエルネスで。

 エルネスもよく使うお店だったらしい。お供の美青年と美少年を「あんたたち今夜はもういいわ」って帰らせて。なにそれかっこいい。


 楽しいなぁ楽しいなぁ。仲良しさんとお酒飲むのって本当に楽しいよね、城で呑んでたのも楽しかったけど、お外だとまた違うんだね、なんて、ぽろっと素直にそんなことも言っちゃったりして。


「……? 和葉ちゃんだって、まあ家庭があるとそんなにいつもってわけじゃないだろうけど呑む機会はあっただろうに」

「んー、職場はパート主婦ばかりでしたし、歓迎会とか親睦会とか? そういうのはランチが多いんですよ。成人してすぐ結婚しましたし、夜出るのは許してもらえなかったし、そうなると学生時代の友人とかとも疎遠になっちゃって」

「は……?」

(……ユキヒロ? そういう)

(いやいやいや、今どきそんなのないっすよ。あっちでも……多分)

(セ、セト?)

(やめてください。こっちだってあるわけないじゃないですかそんなの)

「本当はね、結婚してすぐは別の仕事してたんですよね。パートはパートなんだけど、法律事務所の事務をしてたんです。そこは飲み会とかね、誘ってくれたりしたんですけど、やっぱり許してもらえなかったし、三か月で辞めさせられちゃったんで」

「……なんで?」

「んー、忘れました。何か色々言ってた気もしますけどね。だからこういうお外で呑むのとか初めてです。うれしいなぁ。こっちにきてから初めてなこととか久しぶりなこといっぱいできて楽しい」

「まあ、呑みなさいよ」


 エルネスが新たに注いでくれて、またうふふと笑ってしまう。美味しいねぇうれしいねぇ。


「カズハ。こっちむけ、ほれ」


 ザギルがぽいっと葡萄を一粒高く放り投げてくれたのを、ぱくっと口でキャッチすると拍手してくれた。ドヤァ!


 ずっとピアノが流れていたんだけど、それが聞き覚えのある曲に変わった。バイオリンとチェロもいる。


「あれ。これ…… like it or not? なんで?」

「あー、あれだよ。翔太が楽団に教えてるじゃん? で、楽団員が城下に来て呑んで弾いたりするからさ。結構あちこちの店でもう流行ってんだよ。これだけじゃなくて色々と」

「エルネスエルネス、この歌かっこいいんだよ。なんかね、ちょっとエルネスみたいなの。歌詞が」


 どんなの? というエルネスに、ソファに座ったまま勝手にリズムとりだす肩おさえつつ歌詞を伝えてみた。そうしたら幸宏さんが横で小さく歌ってくれている。曲と歌が横にいるのに歌わないで歌詞伝えるの難しくて笑った。まさに私のための歌ねなんて、頬杖ついてふふんと片方の口の端で笑うエルネス。あなた本当に素敵。


「ユキヒロがなかなか活用してると聞いてますよ」

「……セ、セトさん?」

「ユキヒロ、わかるでしょう。なんでか知ってるんですよこいつ。怖いでしょう怖いんですよ」

「かつよう?」

「あれだよ。兄ちゃん歌って女ひっかけてんだよ」

「なっ! なんでお前までっ」

「ほっほぉ」

「私もそれ聞いてるわよぉ」


 エルネスもにやついてる。そういえば前にも似たようなこと幸宏さんに言ってたよね。


「え。幸宏さんずるいなんでみんなばっかり知ってるの? ねぇ仲間外れ? ハミ子?」

「俺が聞きたいとこだからね? それね?」

「カズハさん、大丈夫です。僕も知りません……」

「お前が今したみたいに歌わねぇで歌詞話すとこっちの言葉になるんだろ。なっかなか効率よく使ってるぞ」

「おーなるほろぉ。さすがです幸宏さん」


 なんかザザさんがめっちゃむせだした。おおう、どうしたんだどうしたんだ。よしよしと背中さすってあげる。ザギル、ザザさんにナッツぶつけるのやめなさい。


「来な、踊りてぇんだろ?」

「ん?」


 ひっぱられてちょっと開けてるピアノ前のスペースにくると、ザギルが踊りだした。

 わ。いつの間に踊れるようになったんだろ。ちゃんと曲にあってる……私たちの動きコピれるんだから当たり前か。こいつも大概ずるいな。

 でもまあいいか。楽しいからいいね。

 ザザさんたちも来てくれたし、他のお客もつられて踊りだしてるしね。楽しいね。エルネスにエロい踊り方教えたらはまりすぎててまた笑った。




 化粧室はトイレというより豪華な控室みたいなお着替えとかもできるように設えてあるとこで、映画でこんなん見たことある! 見たことある! ってテンションあがった。しかし何故ここで着替えできるようになってるのかよくわからない。

 私が使おうとすると、その前に中を誰かがチェックするし、誰も入らないようにドアのすぐ外で待っててくれる。VIP感半端ないんだけど、ゆっくりするものもできないわね……なんて思いつつ、さくさくとドアを開けて出たら、ザギルが妖艶なお姉さんとキスしてた。目が合ったら、しっしってされたから素直に席にそのまま戻る。


「あれ? 和葉ちゃん、ザギルは?」

「なんかね、ちゅうしてましたね。しっしってするから先に戻ってきました!」

「……今ちゅうっていった?」

「ちゅうですね。濃厚でした。ちょっとどきどきしちゃいました」

「カズハさん? 相手はどんなのでしたか?」

「綺麗な人でしたよ。エルネスとはまた違ったタイプの色っぽい人」

「ったく、なにやってんだあいつ……」

「……カズハ、一応ね、念のために聞くんだけどね? あんたザギルとはなんでもないのよね?」

「なんでもとは―――った!」


 すぱんと後頭部はられて、見上げたらザギルが戻ってきてた。


「てめぇ、ぺらぺらしゃべってんじゃねぇよ。ありゃ取引相手だ」

「とりひき」

「まあ、色々とな」

「ちゅうの」

「それで何が成立すんだよばかか。こういう店やら花街やらは色々と情報が転がってんだ」

「それどうするの?」

「……俺を雇うとき、護衛と情報収集って言ってなかったか? ついこないだ俺が何もってきたか忘れたか? あ?」

「あっ―――いやですよ覚えてるにきまってるじゃないですかそうでしょそうだとおもいましたよ」

「―――何かあったのか」

「いや、今んとこひっかかるもんはねぇな。あと、あの新入りども何かやるかなと思ってよ。念のためだ」

「……一応部下だから不快だが、まあ、仕方なかろうな」


 確かについこないだ南方の情報とかすごいいっぱいもってきて役に立ってたって話だった。そうか。こういうお店とか花街とかで探すのか。……ザザさんどころか私以外全員、ああ、理解したって顔してんだけど。幸宏さんまで……えー。

 というか。


「ねえ、ザギル?」

「あんだよ」

「おきゅうりょう、たりるの?」

「―――は?」

「だって、このお店だって、花街? だってあんな綺麗なおねえさんいるとこでしょ? 必要経費? だっていっぱいかかるでしょ? 私そんなのかんがえてなかったよ」

「そらまあ、仕事内容おぼえてねぇくらいだしな……」

「ねえ、ザザさん、ザギルこんなんだけど仕事すごいできるんだよね? お給料てどのくらいだすのがいいの? 相場は? 普通は必要経費は別なんじゃない?」

「い、いや、カズハさん、落ち着いて」

「……お前、ほぼ俺に丸投げみてぇなもんじゃねぇか今更なにいってんだ」

「「「は?」」」

「カズハ? そうなの?」

「ち、ちがうもん。ちゃんと最初決めた額をね、部屋の金庫からわたしてるよ」


 勇者手当とか厨房のお給料は結構な高額になるからと専門官の人が管理していて、部屋の金庫には普段私たちが自由に使える分が用意されている。月に一度補充しに来てくれるのだけど、衣食住全部経費だと城がもってくれてるから全然減らなくて、ほとんどザギルのお給料分しか補充されていない現状だったりする。


「こいつ、相場も何も自分で買い物しねぇから金の種類もわかんねぇし、数えられねぇんだよ。そもそも最初の決めた額だって俺の言い値だし、それも銀貨と間違えて白金貨渡そうとしやがったんだぞ」

「色似てたから仕方ないし」

「白金貨って、貴族でも普段もたないものなのよ……?」

「……確かに城下にも降りないし、買い物もいかないもんな……」

「だから、こいつが金庫開いて、俺が数えて見せて持ってくぞっつってんのを、はーいってろくに見もしねぇで金庫閉じておしまいと。ついでに言えば俺の目の前で鍵あけるからな。番号もとっくに知ってる。最初唖然としたわ」


 くっ……ばらされた。幸宏さんまで口開けてこっちみてる。いたたまれない。


「いや最初は覚えようとしたし覚えましたもん。でも自分で買い物しないから全然ぴんとこないし、そしたらすぐ忘れちゃうし、ザギルにやってもらったほうが早いし、なんかしらないけど金庫の中減らないし」

「それは専門官が補充してるからでしょうがあああ!」


 久方ぶりのザザさんの野太い悲鳴。これ最初の頃厨房にいるの見つかった時によく聞いたな……。


 本当にね、いっぱいあるんだもの。金貨とか。ありすぎてわかんないんだもん。種類だっていっぱいあるんだ。白大金貨だとか白金貨とか金貨とか大金貨とか。身の程超えると手に負えないんだよ……。


「団長……カズハさん、多分一番収入が多いんです。異常な減り方したら専門官が気づきますよ。変じゃないから補充され続けてるんでしょうね」

「ああ、レシピとかか……」

「まあ、心配しねぇでもおかしなことはやってねぇよ。あんな阿呆みたいな真似されたらやる気になんねぇし。あれだ。必要経費だとかなぁ、城のやつらにその分のっけて売ってっから問題ねぇよ。後お前らの魔力管理の手当もでてる」

「城にうるの? なにを? 金貨?」

「今情報の話してたよな? なんで金貨売るんだよ。結構酒回ってんのか」


 ひょいと両脇に手をいれて膝に載せられた。葡萄の小さな房を渡されたからとりあえず食べる。この葡萄美味しい。旬なのかな。


「情報売るの? なんで城に?」

「お前に情報渡して何か役にたてれんのか?」

「……なるほど。じゃあ、ザギルこまってないね?」

「俺ァ今人生で最高に稼いでるな」

「そっか。じゃあいいね!」

「―――っよくないですよ! 授業もう一度受けなおしてください!」


 ザザさんに両肩掴まれて、ソファに座りなおさせられる。

 渾身のエルネス直伝笑顔つくったのにまた効果なかった。えー……。


「……お前、時々その作り笑顔するよな。やり手のやつにもしてたろ。それなんだ?」

「ああ、僕も気になってましたね。なんですかそれ」

「やり手?」

「……和葉ちゃん、小豆の人」

「ああ、小豆の。なんかしましたっけ」

「もう脳内あだ名すら消したんだ……」

「してただろが。完敗だって言わせたやつ」

「うーん? ……ああ! エルネス!」

「な、なによ」

「全然効果ないよ! 効果あったことないよ! これでごまかせないことなんてないって言ったくせに!」

「はぁ!? あんたそんなつもりでつかってたの!?」

「だってそういったじゃん! なんでもごまかせるって!」

「……やっぱり神官長あなたですかほんとにろくなこと教えない」

「ばかね、使いどころが違うのよ。そうじゃなくてね」

「神官長、いらないです。カズハさん、それ忘れてください。僕らみたいに毎日顔合わせてる男にはききませんから」

「……効いてるじゃないよ」

「神官長黙って」

「ということは普段あんまり顔あわせてないひとなら」

「カズハさん、やめてくださいね?」

「あ、はい」





「へぇ。新人どもってそんなのが来てたの」


 エルネスが少し横座り気味にソファに寛いで、脇からウェイターが差し出したグラスを見もしないで受け取る。めっちゃかっこいい。真似してソファに身をうずめてみたけど、多分子ども社長にしかなってないと思ってやめた。


「女性ならでは、ねぇ。武力で叩きのめしたくなるわね」

「エルネスこわかっこいい」

「双方長所があんのよ? 男性ならではってのと並べりゃイーブンじゃないの。くだらない。叩きのめせば折れるか直るかするわよ。ただ随分カズハに執着してるってんなら気になるわよねぇ」

「今のとこ、派手に動いてるのはそうですね。ただ班を離して、休憩時間をずらしてもやたらと仲がよいんですよ。あの四人―――っ!?」


 こっそり圧をかけて強い炭酸を仕込んでおいた酒を、無防備に口にしたザザさんが目を白黒させてる。気づいていた幸宏さんとくすくす笑ってたら、苦笑い返された。まだ慣れてないんだよね。炭酸ね。こっちになかったから。


「神兵団にきてたらかわいがってやったのに。たまにいんのよそういうの」

「かわいがる」

「魔力使用なしで騎士と軍の特訓メニュー泣くまでやらせるわよ」

「泣くどころか吐いてもやめさせないじゃないですか……」


 セトさんが小さく身震いしてる。……奥さん神兵だもんね。きっと詳しく知ってるにちがいない。


「魔力使用なしって? 身体能力補助もしないの?」


 基本、攻撃魔法等を使わない戦闘でも、身体能力を補助する魔法はみんな使ってて、だから訓練もそれでやっとこなせるメニューになってる。比較するなら、私たちの魔力使用なしでの身体能力とほぼ互角になる感じだろうか。……魔法なしで魔力使った上に鍛え抜かれた男性と同じメニュー?


「うちは女性が多いからね。女性中心の集団が女性の特権意識もったら手に負えなくなるわよ。うちは魔法師団なの。魔法で勝負してくんなきゃ話にならないし、魔法がなきゃ戦えないことも叩きこまないと。それに男性が多い騎士や軍とは補い合う同格だからね。妙に見下されたら関係が壊れるもの」


 補い合う同格。私まだそこにもいけてないんだよなぁ。


「騎士団でも軍でもやりますよ。定期的な集中訓練で、懲罰的には使いませんが……。魔力足りなくなってもある程度動けないといけないんで」

「魔力足りなくなっても動けるように」

「ええ。そうならないように魔力管理しますけど、不測の事態ってのはありますからね」

「それ私もできるようになる?」

「……なんでです?」

「お前は足りなくなっても動けるから問題なんだろが」

「あ……そっか。まちがいた」


 私は魔力切れで動けなくなるんじゃなくて、魔力切れに気づかないから魔力酔いで動けなくなっちゃうんだった。じゃあやっぱり魔力管理に戻っちゃうんだな。


「……ねえ、花街ってね」

「また一気に戻りましたね」

「騎士はつかわないんだよね? 訓練に。神兵も?」

「そうね。できなきゃなれないから必要ないわ。どうしたの?」

「幸宏さんは行ったんだよねぇ?」

「えっ急に俺にくる!?」

「だって行ったでしょ?」

「……こ、こっち来たばかりの頃ね? 魔力交感興味あったし?」

「それはどうなの?」

「どうって!?」

「訓練になるの? こっちの人と違って私ら元々魔力ないとこから来てるじゃない。それでも訓練になる?」

「えええ……いや俺ほんとに興味で行ったから訓練なんて頭になかったし、な?」

「そっかぁ」


 グラスに口つけようとして、ザザさんにもってかれたから、代わりに葡萄をもう一粒食べた。


「カズハさん、どうしました?」

「……女の人はどうするの?」

「何をですか」

「だって花街って男の人が使うとこなんでしょ? じゃあ魔力調整とか魔力管理の訓練しなきゃな女の人は?」

「カズハ? その訓練必要なのはカズハのこと?」

「うん」


 エルネスの手のひらが、頬を包んで、青紫に輝く瞳が覗き込んできた。綺麗。


「どうして必要だと思ったの?」

「だっていつまでもなおんないし、訓練したらましになるかなって」

「どうしてましにしたいの?」

「だってほんとはわたしが一番つよいのに、なおんないからわたしを守ろうとするんだよ。ザザさんなんか閉じ込めちゃうんだわたしのこと。ザギルだって死んじゃうかと思った。きっと他の騎士のみんなもそうするんだよ」

「守られるのはいや?」

「ううん。何もできないのがいや。ほんとはつよいのに何もしないのがいや。もうあんななにもできなくて見てるだけなのがいや」

「ゆっくりじゃだめ?」

「和葉ちゃん、それは俺も同じだから」


 エルネスが調律をしてくれている。気持ちいい。

 幸宏さんも、テーブル越しに覗き込んでそういってくれるけど。

 ちがうんだよ。モルダモーデは私がいいといった。


 私が一番最初に狙われる。


 そして私じゃなきゃ礼くんがいいといったんだ。

 

 悪夢が、きっともう私に時間が残ってないといっているのに。

 時間稼ぎくらいしたいのに。



「……ゆっくりでもいい?」

「ええ。いいの。あんたのペースなのが一番いいの」

「えへへ。じゃあそうする」


 チョップが脳天に振ってきて、見上げたら口に葡萄つっこまれた。えー。


「お前ばっかじゃねぇの。俺は自分から契約破ったことねぇんだよ。三年あんだぞ。三年」

「あ、はい」

「この国じゃ三年働いた実績と身元しっかりしたやつの推薦あったら、国民になれんだろ? 書いてくれんだろ? 推薦状をよ」

「あ、知ってた?」

「おうよ。こんな美味い契約破るほど馬鹿じゃねぇよ」

「私買い物上手だったねぇ」

「……まあ、騎士も守るのが身上なんで、そこは譲ってもらわないと困りますね。立場ないです」

「団長、あなたなんでそこで口説けな「なにいってんだセトおまえばかか」」

「え。ザザさんて自分から口説けないタイプっすか」

「ユキヒロ、ちがうからな。セトのいうこと間に受けるな? いいな?」

「おぉぉ……平時に敬語が抜ける貴重なザザさんを俺は見た」

「ほんとヘタレねぇ」


そう言って抱きしめてくれたエルネスはすごくいい匂いがした。





 みんなでご機嫌に城に戻ってきたのは覚えてるんだけど。


 目が覚めたら、礼くんの部屋のカウチで寝ていて、そのカウチにもたれかかって床に座り込んで寝ているザザさんのつむじが見えて、幸宏さんは向かいにあるソファで寝てて、ザギルはカウチの私の足元のあたりで寝てて。

 ローテーブルに散らばる瓶とかカップとか見れば、呑みなおしたんだなと思うんだけど。

 

 んー……?


 現状把握するのに固まってたら、ザザさんの頭が動いた。


「……おはようございます」

「……おはよう、ございます?」

「その顔は、結構覚えてないですね?」

「ばれましたか。私粗相しましたでしょうか」


 ひそひそ声で言葉を交わしつつ、ザザさんが眉間に手首を押し当ててから前髪をくしゃりと握った。やだかっこいい。朝から眼福。


「いいえ、とてもかわいい酒でしたよ。外で呑むのもいいですね。また行きましょう」

「は、はい。楽しかったとおもわれます」

「ああ、でも、行くときは必ず僕がつくので。それは守ってくださいね」

「それなんですか。私ほんと何やったんですか」


やだお酒怖い。

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