その場に立ち尽くすことしかできなかった
「やばいな、これ」
体がだるい、咳もひどい、完全に風邪ひいたなこれは
俺は黒宮玲司、高校一年生、現在三時間目の授業を受け終わった後なんだが、風邪のせいで全然授業が頭に入ってこなかった。
「大丈夫?」
隣から心配そうな声音で話しているのが、俺の幼馴染の白銀雪、名前と同じく雪のように白く透き通た肌に、日本人特有の黒髪黒目、スタイルもよく幼馴染の俺から見ても目を奪われるほどの美少女だ。性格はとても優しい、こんな俺にも気にかけてくれるくらいに
ちなみに俺は見た目は中くらいだ。よくもなく悪くもなく、オタクということを除けば日本の普通の高校生だ。そんな俺が、こんな美少女な幼馴染に心配してもらえるなんて、
「玲司? 本当に大丈夫?」
返事もしないまま俺は感動に浸っていたので、雪がもっと心配していた。
ようやく意識を現実に戻した俺は、
「ちょっと風邪ひいたかも、保健室行ってくるは」
「え! 大丈夫⁉ 先生には私から言っとくから、早く行きなよ」
俺が風邪と聞いた途端に、雪は顔色を変えて、保健室へ行くように促した
「雪は心配性だなぁ」
俺はだるい体を机から起こし、席を立った。
「あぁそうさせてもらうよ」
そういって俺は自分の教室を出て保健室へと向かった。
案の定保健室で計ったら、39度台の熱だった。
すぐに帰り支度をし、帰るよう言われた。
まぁ今インOルエンザとか流行ってるし、仕方ないよね。
俺はいったん教室に帰り荷物を取って教室を出た。
教室を出る時に雪がお大事にって笑顔で言ってくれた。
とてもうれしくて涙が出そうだった。
多分大体の人が察してると思うが、俺は雪が好きだ。愛してると言ってもいい。
だが俺は彼女と釣り合う男じゃない、好きなことを伝えて今の関係が壊れてしまうのが怖い、だから今でもただの幼馴染として接してる。
だから俺はこんな毎日が続けばいいと思っていた。
近くにかわいい幼馴染がいて、二人で話をしているこんな日常がずっと続けば、そう思った。
だが日常とはすぐに壊れてしまうものだとあの時の俺は、考えもしていなかった。
俺が学校の入り口から出ると冷たい風が吹く、季節は一月中旬くらいで肌寒い、俺は黒色のベンチコートっていう足まで長さのあるコートを着ている。そのおかげであまり寒さを感じない。
風邪がひどくなったのか視界がぼやけて見えた。
これはまずいなと思い、早く学校を出ることにした。
俺が校門を出た瞬間、後ろの方でまばゆい光が差した。
振り返ったが、光が強すぎて目を開けていられなかった。
その光がだんだんと弱くなるとあたりは静寂に包まれた。
さっきまで生徒の声が校門まで響いていたのに、今は学校から人の声がしない。
嫌な予感がし、玲人は自分が風邪なのも忘れて学校に向かって走った。
学校の中に入るとさっきまで入り口にいた生徒達も消えている。
教室に向かう途中も人の姿が見られない。
不安になりながら自分の教室にたどり着いた
玲司が自分の教室のドアに手をかけ勢いよく開ける。
「雪!」
大きな声で叫んだが返事はない。
なぜならそこには、幼馴染の姿どころか、クラスメイトすらいなかったのだから。
「嘘……だろ……」
玲司はその場に立ち尽くすことしかできなかった。