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パムテッドの姉妹



「ネ…ネイシー様!なぜこのような使用人用の浴場に…!?」


「ああ、シームか。なに、寝付けなくてな。風呂でも入れば変わると思ったが、生憎と王族浴場の方が既に火を落とした後だったのだ。

こんな夜分に釜焚き人を叩き起こすのも忍びなかろう。したがって、お湯を借りておるぞ」


「そそそ、そうでありましたか!ならば私は失礼致しますので、どうぞごゆるりと…」


「待て。シームは風呂に浸かりに来たのであろう。

見ての通り私は一糸纏わぬ有様だ。王族の威光など服を脱げは取るに足らんのだよ。裸の付き合いというやつだ」


「服は無かろうと王族の血は隠せるものでは御座いません。

ネイシー様の清らかな乙女の肉体こそ、私のような下々の給仕に見せるにはあまりに持て余す輝きであります」


「やれやれ相変わらず頭が固い。血筋と言うならシームとて立派なものだろうに」


「私は妾の子であります故」


「そう悲しい事を言うな。妾だろうが腹違いだろうが、私はお前のこと実の妹のように思っておるのだ」


「そのお言葉だけで身に余る光栄であります。ですがどうか、外では同じように言わないでおかれますよう。ネイシー様の立場のためにもです」


「ままならぬものよ。姉妹が姉妹らしく振る舞うこともできぬか。なればこそ、今ここで私はお前と語り合いたいのだ。

さあ、立ったままでは身体が冷めるぞ。湯に入れ」


「………はぁ、仕方ありません。私の負けです」


「それで良い。どれ、もっと近う寄らんか」


「パワハラですか?」


「何を言う。浴場に王族の権威は届かぬという持論を曲げるつもりはない。

これはセクハラじゃ!うりうり!」


「ああっ!おやめくださ……ちょっ、どこ触ってんですか!?」


「可愛い妹の成長をこの手で確かめておるまでよ!ほれほれ!どや?ええんか?ここがええんか?」


「んくぁぁあ……ぁっ…!」











「ふぅ。すっかり長風呂になってしまっているな。

おやシーム、顔が真っ赤だが逆上せてしまったのかな?」


「お戯れを……誰のせいだと思っておられるのですかこのエロ王女が」


「ふふふ。やはり砕けた口調のほうが『らしい』ではないかシームよ」


「こっ、これは失礼しました!」


「謝るでない。同じ父王の娘なれど、私とお前の待遇の差に申し訳ないと常々思っておったのだ。

せめて二人きりの時くらい、まっこと姉妹のようでありたい。これは私のわがままかの?」


「宮廷に住まわせていただき、ネイシー様にお使えできるだけでも至上の幸福。それ以上の望みなど願うだけで罰が当たりましょう。

ですが、今日はとても楽しかったです。ありがとうございますネイシー……お姉様」


「おお!おお!良い!スゴく良い!もう一回!もっかい言ってくれ!」


「嫌であります」


「いけずな!ええい王命であるぞ!」


「このような場所で王命とは、はて?

私は持論を曲げぬネイシー様が好きでございます」


「お願い!払うから!先っぽ!先っぽだけでいいから!」


「ネイシーおね…ハイ先っぽ終〜了〜」


「ぐぬぬぬぬー!!!もういい!風呂から上がるぞ!」


「御意に。……ネイシー様、それは……?」


「ん?ああ。このバスタオルか?」


「バスタオル!バスタオルですって!?気が違われましたかネイシー様!

我が国でのバスタオルの使用は禁止されていると、まさかお忘れではありますまい!?」


「しかしな。日頃から質素倹約に努めている私なのだ。この程度の贅沢は許して欲しいものだ」


「なりませぬ!なぜバスタオルなど……。普通のタオルではいけないのですか!?」


「タオルだと身体を拭く時に一枚じゃ足りぬのだよ。まさか二枚も三枚も使っていたずらに洗濯物を増やすこともあるまい」


「なれば!こう、使うごとにタオルを絞って再利用すべきです!皆もそうしております!」


「それだと髪が湿ったままになろう」


「そこはドライヤー使えっていつも言ってんじゃん!いつも言っております!」


「しかしなぁ。そうだ!シームも一回バスタオルを使えば良さが分か……」


「遠慮いたします。ネイシー=アルン=パムテッド8世」


「一気に他人行儀に!?ああもう!なんて頭が固いんだこの妹は!」


「妹?妹だと…?

ネイシー様、いや貴様は……バスタオルで拭いたその口で私のことを妹と呼んだのかァッッッ!!!?!」





長らく平和が続いたパムテッド王国が、二つに分かれ争ったタオルバスタオル戦争。


これがその始まりであったのでした。




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