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私の異世界クラフト  作者: KS
7/8

不愉快な散歩

夜、少し欠けた月が、山肌を照らしていた。


ゴソゴソ・・・


またもや、誰かが抜け出す音に目が覚めた。

テントの垂れ幕を少し上げて覗いてみると、戦闘員さんの中でも背の低い方の男が外に出ているのが見えた。

エイデンだ。

どうやら、また外に出ているらしい。

それにしても、テントは二人一組であるはずなのに、どうして、もう一人の人は、頻繁に外出するエイデンに何も言わないのだろう。


「グッゴーッガァーー」


!?


「吃驚した。なんだ、オーインさんのいびきか」


まぁ、オーインさんみたいに相手の人も眠っているのかもしれない。

いずれにせよ、エイデンを追跡しなくてはならない。









あれから、私の感覚で15分以上、エイデンを追跡している。


「さすがに、疲れてきたなぁ。それにしても、ここ、見たことがあるような気がする」


あっ、今日、テントに向かった時に通った所だ。

えっ、じゃあ、つまり、エイデンは鉱脈に向かっているということ?

なぜ?


「おいっ、出来損ないっ」


「ギャアーーーーーー」


吃驚して、後ろを振り返ると、両耳を手で押さえ、しかめっ面をしているエイデンが立っていた。


「うるっせーなっ、魔獣が反応したらどうすんだよ」


「い、いきなり背後から現れないでよ。驚くのは当然でしょ」


本当に驚いた。前の方にいたはずなのに、どうして、背後に・・・


「夜中に、俺につきまとうお前に対して、俺は驚いたけどな」


(バレていたのか・・・上手く誤魔化さないと)


「別に、つきまっとてた訳じゃないよ・・・鉱脈のところに落し物しちゃったから取りに戻っただけ」


エイデンは、私の返答に対して、小馬鹿にしたような顔をした。


(こいつの表情、ほんっとムカつくな・・・顔面を再起不能にしてやりたいわ)


私が、そんな不穏なことを考えている間にも、エイデンはムカつく表情で、私を問い詰めてきた。


「それにしては、ずいぶんと、こそこそしているんだな」


「魔獣が出るかもしれないんだから、こそこそするのは当たり前でしょ。そっちこそ、夜中に何している訳?」


「ふんっ、お前には関係ないだろ」


そういって、エイデンは、鉱脈の方へ歩き出した。

私も、すかさず、エイデンを追う。


「ねぇ、そっちも鉱脈に用があるの?」


「だからなんだ、関係ないだろ。ついてくるなっ」


「ついていってる訳じゃないから。忘れ物を取りにいくだけだから」


(まぁ、本当は尾行しているわけだし、バレたけど。でも、私の目の前で迂闊な行動はできないだろうし、今夜は、理由をこじつけてついていくしかないよね)


「お前みたいな出来損ないの視線を背中に感じるのは、不愉快なんだよっ」


私だって、エイデンと時間を共有するのは不愉快極まりない。

しかし、エイデンを野放しにするわけにもいかない。

それに、私が、エイデンの後ろを歩こうが、隣を歩こうが、お互い不愉快であることに変わりはないだろう。

これは、仕方のないことなのだ。


「別に、あんたの背中なんか見てないから。自意識過剰すぎなんじゃないの?」


私がこう言うと、エイデンは勢いよく、こちらを振り返ってきた。


「自意識過剰だとっ、真実を言ったまでだ。あぁ、そうか。出来損ないの頭じゃ、理解できないよな」


ここまでくると、もう、何も言えない。

救いようがない・・・

私が呆れた顔をしていると、馬鹿にされたのかと思ったのだろうか。エイデンは、何やら喚きだした。

仕方ない、ここは、雑音だと思って、聞き流すしかない。


そうして、暫くして、喚き疲れたのか、エイデンは息を切らしていた。


「はぁ、だから、はぁ、俺は、自意識過剰などではないっ、はぁ、出来損ないには、はぁ、分からないだろうがなっ」


「で、鉱脈に行くの、行かないの?」


「はっ、行くと、さっき、行っただろ?記憶力がないのか?ついでに、お前が死ぬと、面倒だから、邪魔にならないようついてきてもいい、と言っただろ?馬鹿なのか?」


そんな話になっていたのか・・・

適当に相づちを打ってたから、聞いてなかった。

んっ、ついてきていい?

どういうことだろ。

エイデンが密偵で、何か企んでいるのなら、私を追い返したいはずじゃ?

分からなくなってきた。

謎が謎を呼んで、もやもやする。


「おいっ、ボサッとするな。夜が明けるだろ」


「あっ、うん」







こうして、あの時の私は、エイデンへの偏見と解決しない推測の答えを考えながら、彼の背中を追っていたのだった。

前回の投稿から、一か月・・・


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