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私の異世界クラフト  作者: KS
6/8

土竜のように


「お嬢ちゃん、寒くないかい?」

「はい、大丈夫です」



登山3日目、私達は山の中腹と頂上の中間あたりまで来ていた。

やはり、この山は不思議だ。

登れば登るほど、樹木が多くなる。

そして、それらが霧や霜と相まって、少し不気味だ。

地面が平らであったら、呪いの森と言われても可笑しくはないだろう。



「オーインの親方おやっさん、ここらで良くはないですかね」


戦闘ギルドの党員の一人が、オーインさんに尋ねている。

おそらく、ここを拠点としてはどうだ、と聞いているのだろう。


「もう少し、茂ってなきゃダメだな。これじゃあ、筒抜けだ」


焚火の際の煙で、魔獣に、居場所がバレてしまってはいけないから、もう少し木が茂った場所にすべきだと言いたいのだろう。

私も、ずいぶん、分かるようになったものだ。



「承知しやした。それじゃあ、もう少し、奥に張っときやすね」












さて、一部の戦闘員さん達が、拠点探しをしている間に、私たちは魔石の鉱脈を探し出さねばならない。

そんなの事前に、あるのを使えばいい、と思うかもしれない。

私も、そう思っていた。

しかし、驚くことに、鉱脈が移動するらしいのだ。

だから、こうして毎回、探さなくてはならないのだ。

ちなみに、なぜ、鉱脈が移動するのかは分かっていないらしい。

この山自体が魔獣だという意見もあるらしいが、考えると怖いので、考えないことにした。

まぁ、気を取り直して、鉱脈を探すとしよう。








「おいっ、あったぞ」


戦闘員さんの声だ。

どうやら、鉱脈らしきものを見つけたらしい。

声がした方へ向かうと、オーインさんが“品定め”をしていた。

鉱脈のすべてが良いわけではない。

魔石の質が育ってなかったり、魔石がほとんどなかったり、危険性が高い鉱脈もあるのだ。

最も、大抵の鉱脈は危険であるが・・・


「うむ、なかなかに良いな。よしっ、ここを崩してくれ。ワシは、他も見てくる」

どうやら、当たりだったらしい。

戦闘員さんの見つけた鉱脈は、小さな横穴に続いている。

オーインさんたちが中に入るには、もう少し穴を広げなければならないのだろう。

オーインさんが、そそくさと他の鉱脈を探している間、私たちは、主に戦闘員さん達が頑張っていた。


ガッ、ゴッ、ガッガッガッ、ゴッツ・・・



「硬いな。こりゃ、内側から壊していかないと無理だぜ」


「じゃあ、私が中に入って壊していきますよ。私なら、入れますし」


「おう、頼むぜ、嬢ちゃん。気ぃつけてな」


こういう問題が浮上したとき、私は、よく中から壊す作業をしている。

もう何度もやっているので手慣れたものだ。

私は、穴の中に入り、すぐさま中を確認した。


「おいっ、早くとれよっ」


不快な声がして、斜め上を見たら、いつの間にか来たのか、エイデンが穴の隙間からツルハシ的なやつをぶらさげていた。

ツルハシ的なやつといったが、ツルハシのようなメリケンサックのような、よく分からない形をしている道具だ。



「さっさと、しろよ」


「分かってるよ。安全確認してたの。急かさないでよ」


「貴様の親方が安全確認したんだろ? 親方を信じてない証拠じゃnイダッ」


私は、ツルハシ的なのをつかんでエイデンの方へ思いっきり押した。

いい気味だ。

別に、オーインさんを信頼してないわけではない。

ただ、前に入ったときに、奴がいたのだ・・・

2本の触角を持つ茶黒い悪魔・・・Gがっ!!

まさか、この世界でもお目にかかるなんて思わなかったのだ。

よく覚えていないが、あの時の私は半狂乱になっていたらしい。

それ以来、私は奴がいないかのチェックは欠かさないのだ。









「はぁー」

どうにか、エイデンぐらいは通れる大きさになった。


「嬢ちゃん、頑張ったなっ。よしっ、エイデン、お前も手伝ってやれ」


「はっ、なんで、俺がっ」

戦闘員のおじさんの命令に、エイデンが抗議の声を上げる。

彼は、こういった作業が嫌いなのだ。

他の戦闘員さんもやっているのに、我儘だ。

だが、私もエイデンと作業するのは嫌なので、ここはエイデンに同意しようと思う。


「エイデンは慣れていないみたいですし、私一人で大丈夫です」


「そうだっ、コイツ一人で十分じゃないか!!」


私の言葉に、すかさず、エイデンが反応した。

なんだが、釈然としない。

というか、腹立たしさを覚えるが、ここは我慢しよう。


「だがな、嬢ちゃん、手伝ってもらっている俺たちが言うのもなんだが、あんたは働きすぎだ。

それに、エイデンも、いい加減、こういうことにも慣れなくちゃならねぇ」


「だが、俺はっ」


「エイデン=ディ=ブレイデン、これは上司命令だ! 嬢ちゃんを手伝いなっ」


「くっ、承知しました」


驚いた。おじさんの、こんなに怖い表情は初めて見た。

流石のエイデンも何も言い返せず、穴の中に入ることにしたようである。


「嬢ちゃん、驚かせて悪かったな」


「いえ・・・」




その後、エイデンも私も、おじさんの監視のもと、日暮れまで、淡々と、土竜のように作業をしていたのだった。
















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