ボーリングに棒立ちのみ
ボーリング、それは、球をポーンして、ガラガッシャンして、ポイントを稼ぐゲームである。
そんなことを、明語が混じった説明文にされて送られていたメールに、私が気付いたのはボーリングをする直前だった。
「ガラガッシャンって。まあ、明らしい。」
そして、貸出しているシューズを履いて一回戦。
「さてと、へいへい西城はーん♪そんな腰の入れ方でええんか?おう?」
明が煽ってくる。ほう、私を本気にさせたな。
「負けたら1日エスコート、忘れないでよ?」
「おっけい!」
よーい、スタート。
私、ストライク。
明、ガター。
5分後。
私、スペア。
明、ガター。
10分後。
以下略。
「スコア、私が168で、明さん、11…。」
「い、いやぁ…あ!ジュース買ってこようか!?なにがいい!」
「ココアがいいな。心の愛が欲しいから。だから、エスコートよろしくね。」
「いや、えーと、はい、うん…。」
何かをあきらめる明に、少し引っ掛かりを感じたけど、やはり勝負で決めたことなので、そこは譲るわけにはいかなかった。
一息ついて、今は昼食をとっていた。
「この後のご予定は?」
明に聞くと、少し困った表情をしながらも答えてくれた。
「うーんと…あー、うん。」
「うん?」
「釣り堀でもいく?」
「なぜにボーリング場にきてまで釣り堀へといく?せめて近くのショッピングモールとかさ。」
「そこいこう!」
なぜだか、ボーリングをしていた時間が塵のようにすぐに無くなっていた気がしたが、まあいいっか。
「それで、ショッピングモールにきたはいいけど、どうする?」
「あー、うん。映画でも見る?」
「なんの?」
映画か。考えて見れば小学生の頃以来だ。
「伊勢海老の放浪記~私が日向に会えるまで~。とかやってるよ?」
「それは、やめておこう。」
「比叡山の最後~雪の風に拐われて~。とか?」
なぜそこまでしてそれを見たいのか、逆に気になった。
「あ、これにしようよ。『私が私である限り』面白そうじゃん。」
なんとなくタイトルに惹かれたのだが、明は反対することはなかった。
内容はこんな感じだった。
女の子が女の子を好きになるなんておかしいと思いながらも、女の子を好きになってしまった。そして、それによる心のズレをその女の子と埋めて幸せになろう。というものだった。
ただ、幸せにはなれていなかった。まだ。
この物語は三部作らしく、これは一部なのだという。
要点とベタだけをいれた恋愛ドラマのような、そんな甘々しく、苦々しい一部だった。
明に感想を聞いても、なにも言わなかった。
「明、今日変だよ?どうしたの?」
「え?そう?」
「うん。ボーリングの勝負が終わったところから。」
まるで、私にとって都合の悪い何かを隠しているような。
そんな嫌なことを連想させるようだった。
「あー、きっと、西城にぼろ負けしたからかな!あはは…。ごめんね?きっと、つまんないよね、こんなの。うん。ごめん。」
「なにがあったのかはわからないけど、それが原因でとか、そんなんじゃ、私は明を嫌いにはなれないし、今日もすごく楽しかったよ。ありがとう。」
思ったままを言葉にすると、明は赤くなった。
そして、大粒の涙を流した。
「西城、私、えっと、うんと、その、あはは。また今度言おっかな!」
そのときの明の顔はいつもの笑顔になっていた。
なら、あとはそのまた今度、時間が解決してくれるだろう。
「わかった。じゃ、また今度。」
そう言って、今日のボーリングその他もろもろは終わった。
実を言ってしまえば、私はボーリングに行ったことなどない。
強いて言うなららボーリングに興味はなかったから、行くことなど考えたこともない。
なんて言ってしまえば少しは強く見えるでしょうか?
たまたま読んでいただいたのであれば有難うございます。




