【12月:鈴森葉市とちょっとまじめなメール】
※ 今回、あとがき部分に小話もどきが潜んでおります。
「そういうのちょっと……」という皆さまはご注意ください。
※ またも唐突なメール形式。読みづらくて申し訳ございません。
※ 小話の方が本文より長いというナゾ使用になっております。あとがきの使い方を間違っている気がしないでもない。特に読まなくても本編に差し支えはありません。
『To:葉市
Sub:今大丈夫?
本文:夜にごめん。今からメールしていい?』
『To:雅美
Sub:いいよ
本文:なんかあった?』
『To:葉市
Sub:相談というか
本文:質問というか…
てか、体調大丈夫?ちょっと長くなるかも』
『To:雅美
Sub:点滴ヒマー
本文:で、勉強してただけだから。
終わるまでならつきあってやるよ』
『To:葉市
Sub:ありがと
本文:修学旅行のお土産の話なんだけど。
あ、葉市も修学旅行土産出してくれたでしょ?ありがとね。
まとめて送ってきたのは知ってると思うんだけど、お守り選んだ人がいるのね。
それ誰か知らない?みんな教えてくれないのよ』
『To:雅美
Sub:はぁ?
本文:何ソレ。
もう答え出てるんじゃん』
『To:葉市
Sub:やっぱり
本文:櫻井君なのかな?』
『To:雅美
Sub:あのさぁ
本文:雅美はそれ突きとめてどうしたいわけ?』
『To:葉市
Sub:どうって…
本文:普通に、お礼言いたいだけだけど』
『To:雅美
Sub:無題
本文:お前、いつまでそれ続けるの?』
『To:雅美
Sub:無題
本文:そもそも善にも腹立つんだけど。
ずっと受け身でさぁ。怠惰じゃない?なに?雅美なら許してくれるとでも思ってるわけ?
暢気なの馬鹿なのどんだけヘタレなの?ホントに男なの?心狭すぎ』
『To:雅美
Sub:無題
本文:雅美も雅美でしょ。いつまで村での役目引きずってるわけ?
自分から変わるって言って村出たわけでしょ?
なのに物理的距離ができてもずっと役まっとうしようとして。
お前が役者なのはわかるけど、日常まで引きずられるなんてそれどう考えても異常だよ』
『To:雅美
Sub:無題
本文:夢も結構。村の変化を率先して誘導しようと行動するのも結構。
でも、雅美はいろんなものを混同しすぎてる。本末転倒だね』
『To:葉市
Sub:無題
本文:辛辣…
あとメールの波状攻撃こわいです控えてください…』
『To:雅美
Sub:無題
本文:言い返せないでしょ。この無意識甘えた。
双子の弊害だよね。あいつらホント過保護』
『To:葉市
Sub:そうね
本文:確かに、ちょっと、甘えてた。ごめん。葉市の言うとおりだわ。
最近いろんな人が甘やかしてくれるから、天狗になってた。
謙虚さが足りてなかったかも。
いろんなことひっくるめて考えてたのも、言われるまで気がつかなかった』
『To:雅美
Sub:うん
本文:気づいたんなら、大丈夫でしょ。
雅美は自覚したらちゃんと正せる人なんだから。
あとついでに言うと、初恋こじらせすぎ』
『To:葉市
Sub:は
本文:』
『To:葉市
Sub:まて
本文:まてまてまてまて。ちょっとまて。
え?なに?初恋?まだですけど????
てゆか恋愛経験皆無ですが???
呼び出しも告白も手紙すらもらったことありませんけど????』
『To:雅美
Sub:無題
本文:それこそは?だよ面倒くさい』
『To:葉市
Sub:いやマジで。
本文:まじめに。
モテるっていうのは、アリスとか花梨とか聴香とか壱織人のことでしょ。中学ん時すごかったわよ?
地味に本命が多かったのは早樹ちゃんとか仁千翔とか渥美とか櫻井君だったみたいだけど』
『To:雅美
Sub:無題
本文:……本気で言ってる?
確かに奴らはキレイ所だけど』
『To:葉市
Sub:え?
本文:だって、私ファニーフェイス枠でしょ。だから演技力で売ってるんだし。
中学ん時は男女問わず遠巻きだったよ。
事務所でも私くらいのなんてごろごろいるって言われてるし、身の程は知ってるよ。
美人村で一人凡顔とか、結構つらいんだけど』
『To:雅美
Sub:まって。
本文:理解が追い付かない。とりあえず自己評価低い!
雅美お前美人だからね?きりっとした感じの美少女だからね???』
『To:葉市
Sub:慰めありがと
本文:でもそういうのは満潮ちゃんに言ってあげてよ。
美人とか言われたの、葉市が初めてだわ。照れるわねこういうの』
『To:雅美
Sub:おっと
本文:こいつは話が通じない。
確かに村は他所に比べて美人が多かったけど、お前も含めだったからね?
なんでファニーフェイスとか思ったの?』
『To:葉市
Sub:なんでって
本文:かわいいとか美人とか今まで一回も言われたことないし。
壱織人が昔「愛嬌はある」って言ってたから、じゃあそうなのかなって。
現にこの年まで色事に差し迫ったことなんてないし。
え、顔は並だと思いたかったんだけど、並以下だったのかしら?』
『To:雅美
Sub:とりあえず
本文:初恋云々は置いとこう一回。自覚がないときたもんだ。
雅美はキレイだよ。僕が保証するよ。
ねえその情緒で大丈夫なの?ちゃんと危険回避できるの?心配になって来たんだけど』
『To:葉市
Sub:危機?
本文:危ないことはしてないわよ?
スタントは使ってないけど、これでも運動神経いい方だし』
『To:雅美
Sub:……。
本文:うん。これは、こっちで議題にするよ。雅美はそのままがんばれ。
お守りについては、一言でいいからきいてみたら?
一度でもお礼が言えれば、律儀な雅美のことだから満足でしょ』
『To:葉市
Sub:なるほど
本文:そうね……感情と礼を尽くすのは別物だものね。
ありがとう葉市。途中なんか変な方向いったけど、助かったわ』
『To:雅美
Sub:いいけど。
本文:僕は藪をつついてとんでもねー事態を把握してしまったけどね……。
点滴も終わったし、もう寝るよ。おやすみ』
『To:葉市
Sub:おやすみ。
本文:長々本当ありがとう。おやすみなさい』
・ ・ ・ ・ ・ ・
後日、昼休み。県立秀峰高校生徒会室にて。
「―――というわけだけど、何か申し開きはある?」
パイプ椅子に腰掛け足と腕を組んだ葉市は、プリントアウトした先日のメールログを読みすすめるうちに頭を抱えた壱織人をねめつける。
「なんという……ことでしょう……」
「そういうのいいから。で?僕が満潮との時間を割いてまで危惧する事態になった経緯を説明してもらおうか?」
「鈴森クンたら熱烈ゥ……」
「よし連帯責任だ。渥美と花梨と早樹さんと仁千翔に連絡取ろうかな」
「まってまって葉市よーちゃんまって。さすがの俺もそのラインナップ一斉とかやばい」
「じゃ、まず質問に答えてもらおうかな。告白呼び出し手紙一回もないっていうのがまず信じられないんだけど?」
「それは俺達です」
「よし通報」
「やめて!まってこれにはちゃんとした理由あってだから!」
あわてる壱織人は普段はりつけられた胡散臭い笑顔など跡形もなく、疲れたようにため息をついて中学時代を回顧する。
「あったよ。普通に手紙とか呼び出しとか。たださぁ、普通の告白とかなら、よかったんだけど、そういうんだけじゃなかったから、こうなったわけで」
これはどの世代でも幼なじみ全員にいえることなのだけど、と前置きして語ることには。
村の子は、端正な顔立ちの子が多い。言ってしまえば美人が多い。それはみんな自覚していた。ただ自覚の後が問題で。
「自分は他より容姿が整ってるらしい、気をつけねば」と他己評価や言動を省みる「慎重派」。
「確かにきれいかもだけど他の方が美人だし、自分なんて普通普通」と自分の容姿を歯牙にかけない「自己評価崩壊型」。
この二つにおおよそ振れるという。
壱織人、仁千翔、早樹、渥美、花梨、聴香は前者で。
雅美、アリス、善は後者だった。そして、厄介な事態に陥るのも、大概が後者だった。
「もおさぁ…自覚あるやつはいいんだよ。自己防衛しようって気を付けるから。それでもヤバいのは誰かしらが気がついて、俺とか仁千翔が制裁したし。厄介なのはあの三人なんだよ。アリスはまともな彼氏みつけて戦力になったし、善は渥美と花梨が目ぇ光らせてたけど、問題は雅美。これがもうアカン」
「何となく察するけど……具体的に?」
「雅美はさ、人のことはよく気がつく割に、自分のことに関しては視野狭窄というか鈍感というかマイペースというか。とにかく真正面で、悪意が理解できないわけじゃないのに、飛び込んでっちゃうの。女子上級生の呼び出しで、一回マジ危なかったのがあるんだけど、危機感じてなかったの。びびったよね。何がびびったって、自覚のない雅美が怖い。たとえ女子でも安易についてかない約束させたよね。でも行っちゃうの丸め込まれちゃうと。もう俺も仁千翔も渥美も花梨も聴香も奔走したよね」
ちなみに善は、雅美に負けず劣らずの鈍感だから、こんなこと気づいちゃいなかったよハハハ鈍感まじギルティ。
遠くうつろな目の壱織人なんて愉かおっと、滅多に見ない姿に、それがどれほど重労働だったのか察せられて、葉市は組んでいた腕を頭に移動する。頭が痛いな。低気圧かな。
「雅美のゲタ箱と机とロッカーは本人が開ける前に要チェックだったし、それでも入ってくる手紙は誰かが同席して中身確認して、呼び出しだったら無視。行くっていうんならついてったり、罠はめたり、噂ばらまいたり。中学時代こんな感じで村の子専守防衛に尽くしてたらあの評価ですよハハハ上等だどっからでもかかってこいや返り討ちにしてやんようちの子に手ぇ出してみろ許さん絶対にだ。一回さあ、雅美の上履きに○○ぶっかけられててさー、一回の量じゃなくってさー、絶句したよね。トラウマだよいまだ。何が悲しくて朝から他人の汚物処理……」
で、雅美は、自分のことは気がつかないくせに、人の危機には超敏感だから、すぐ向かっちゃうんだよね。せっかちだから、たまに報連相わすれるし。たとえそれが、自分を嫌ってる善の危機でも。
「で、あんまり鈍感だから上げ膳据え膳で先回りして害虫退治してたら、告白も呼び出しも一回もないピュア100%雅美ができていたと」
「おっしゃる通りで」
「それで、過保護なお前らを受け入れてる雅美をみて、善の勘違いも加速してったと?」
「えー、おっしゃる通りで……」
「幼なじみセコム鉄壁すぎアホか、お前たちはアホなのか?無駄な完璧主義もここに極まれりだね。傷の浅いどっかしらで痛い目みさせた方が効果的だったでしょ雅美の場合」
「…………それ……気づいたの……中二……雅美が東京の高校行くって………聞いたとき……」
「高校でも守れるとか考えてたんでしょやだーこの自信過剰のナルシスト。お前が思ってたってことは仁千翔もか。お前ら双子本当かしこい馬鹿というか残念な馬鹿だね知ってた」
「よーちゃん辛辣ゥ……知ってた……」
「まだ『ファニーフェイス疑惑』が残ってるけど?」
「これ俺も不思議なんだけど。美人じゃん雅美」
はて?と首をかしげる壱織人は嘘をついているようには見えない。
師村雅美という少女は、客観的に見て美少女である。
村では埋もれるかもしれないけれど、ピンでみたらちょっと近寄りがたいほどには美少女である。
だからこそ壱織人たちも苦労したわけで、進学先が女子高ときいて安心したわけだけど。
突きつめる前に、予鈴が鳴った。午後の授業が始まってしまう。
壱織人と葉市は立ち上がり、廊下に出る。生徒会室の施錠をする壱織人を待って、二人は歩き出した。
「愛嬌ウンヌンは、何となく記憶にあるわ。放課後村外の男が集まって校内美少女ランキングつけてたから、乱入したんだよね。でも前後に「雅美はガチ美少女で高嶺の花っぽいけどノリも面倒見いいし、あいつの母親に比べたらまだ愛嬌ある美人だから」ってあったんだよ」
「とりあえずサイテーな内容だったのだけはわかった。なに?コケ下ろされでもしてたから頭にきたの?」
「そのとーりでーす。お高くとまってとか見下してとか根も葉もないことをぐちぐちね。これでも一千万倍に希釈して褒めた」
「まぁよかろう。高嶺の花にあこがれても近づけないヘタレのひがみでしょ。そのあとちゃんとへし折ったんでしょ?」
にっこり笑う壱織人に、おおよそのことを想像できて、葉市はとりあえず沈黙する。
自分だって幼なじみが根も葉もない中傷にさらされたら一言どころでなく口撃してしまうだろう。まぁそれはひとまず置いておく。
「……誰も言ってやらなかったのかな」
「何を?」
「『お前はかわいいよ』『きれいだよ』『そのままでいいよ』ってさ」
「ぅゎ、彼女もちっょぃ」
「茶化すんじゃないよ?」
「うぃっす。あーでも、かもな。それなら、なんか、納得だけど」
雅美の努力は、みんな認めていた。ほめていた。言葉にしてた。その方が彼女は喜んだから。
でも、こんな根本的なところを抜かしていたことに、今初めて気がついた。
努力なんかしなくても、雅美のことが好きだと、大事な友だちだと、言わなくてもわかるだろうと。
「あぁ~正解な気がする鈍感まじギルティ……」
「雅美も大概だけどね。僕らにも落ち度はあったね」
「鈍感が二人揃うともう本当めんどいな。そこはご両人にまかせよ?そうしよ?」
「あ、関わる気ないんで」
「デスヨネ。知ってたぁ……」
がっくりうなだれる壱織人を横目に、葉市は思う。
こいつの幼なじみコンプレックスも大概だな、と。
・ ・ ・ ・ ・ ・
美少女のゲシュタルト崩壊。
ちなみに↓
高嶺の花……雅美(正統派)、早樹(クール)、聴香(芸術家)
可愛い………アリス(愛玩)、花梨(妖婦)
イケメン……渥美(厭世的)、善(本命化旦那属)、荘助(本命化穏健派)、葉市(儚系)
男前…………仁千翔(本命化ガテン系)
教祖…………壱織人(カリスマ笑)
()の中は属性的な。本命化属は本気度高い人が多い。




