【10月:安藤聴香へ宛てたメール】
『 Bonjour, 聴香!
メールのいいところは時差を気にしなくていい所ね。
私は相変わらずよ。あなたも元気そうでよかった。
学校が始まって一か月経ってメール、ってことはそれなりに慣れてきたってことかしら?
確かに周囲に同じ道を志す人があふれている環境っていいわよね。私も今の学校で感じています。モチベーションが違うよね。
暮らすと観光じゃ全然違うってメールもらうたび思うけど、世界各国から集まるとすごいわね。
私たちの常識がスタンダードなわけじゃないって理解してても、文化的差異にはちょっと戸惑うよね。たった五か月じゃ完璧に慣れるなんてまだ早いのか。
聴香のことだからマイペースにやってるとは思うけど、タブーさえ侵さなければ、気にしすぎないのが一番だと思うわ。
ぜひ環境を楽しんでね。
そういえば、この間あった体育祭で面白い子たちと知り合いました。
同級生でモデルの子の話をしたでしょう?その子が持ち上がり組の下級生を紹介してくれたのだけど。
同じ職能クラスの一年生たちで、すっごいきれいな子たちなの。びっくりしたわ!
巷で美人村なんて言われてるうちの村だけど、村にはいないタイプですごい新鮮。
一人は混血かな、プラチナブロンドのビスクドールみたいな子で、とってもクールな音羽さん。
もう一人は麗人というの?すらっと背が高くて中世的な、女性にもてるタイプ奥澤さん。
うちのクラスはケガ御法度な人が多いから、決まった種目以外は免除されてるのは去年話したと思います。連合が縦割りなのもね。
忙しいのはお互い様というか、我が職能クラス連合は勝負から外れてるせいなのか、すごく和気藹藹としてるのよ。他クラスに比べて人数も少ないしね。
去年は当日仕事で出られなかったから知らなかったけど、この連合ごとの応援合戦で特に異色を放つのが、私達職能クラスなんですって。確かに、全然違ったわ。
普通、応援合戦って、応援団が前に出て、連合全員で一丸となり、というのを思い浮かべるじゃない?現に普通科の連合はそうだったし。
でもね、職能クラスは違ったの。
前に出るのは、その日にオフをとれて、その日のために練習ができるという前提で、とにかく、なんというか、全力だったのよ。主に前述した二人が出てくるのだけど。二人ともすごいのよ。
奥澤さんは衣装制作に携わり、音羽さんはエレキバイオリンを生演奏。
それで三年生のモダンダンサー志望の方(留学が決まってるらしい)が持ち時間の10分間で本格披露。
ダンスも生演奏も、目の前で見るとすごいわね。とてもプロの犯行で、間抜け面をさらしてしまったわ。
聴香が本気で演奏をしてる時と同じ空気だった。
言葉がうまく出てこないのだけど、完成度の高さは、そのままプロ意識の高さなのだと思うわ。去年も見られればよかった。ちょっともったいないことをしました。
聞けば、界隈では職能クラスの応援合戦は結構な注目度なのですって。去年は当時二年生の声楽家の先輩がアカペラを披露したらしいわ。
まったく同じ方向を向いていなくても、芸や職分の道を究めようとする人たちに囲まれてる私も幸せ者ですね。
周りががんばってると、私も負けてられないって奮起するもの。
映画の撮影は、うん。師匠の鍛錬やっといてよかったってしみじみ思ってるところ。
護身術程度の古武術だけど、本っっっ当やっといてよかった。
ちょっと愚痴らせてね。
多少アクション入るって言われてたけどさ、スタント入れるって言われててちょっと気抜いてたのよ。馬鹿だったわ。
スタント、無しになりました。
ふふふリハでいい動きしすぎたわぁ……夏からこっち、打ち身青アザだらけよ。監督鬼か。
アリスが気にしてお野菜たくさん送ってくれて、ちょっと泣いたわ。あの子の天然な優しさは後世に残すべき財産だと思うのよ。
こんな感じで私もがんばっています。冬になる前にアクションシーンは全部終わる、はず。増やされなければ。ほんともー……。
やめ!愚痴おわり!
どうせがんばるなと言ったってがんばるんでしょうから、止めないわ。でも、倒れる前になにか口にするようにしてね。
そちらにはぶっ倒れる寸前に止めてくれる心優しいあなたの弟達はいないのだし。
またメールくださいね。私もするので。それではまたね。
雅美 』
ちな美人村というか集落というかは実存します。友人の故郷がそうでした。
友人も眼福物の美人です。なむなむ。




