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雅美の書簡  作者: 唐子
【一年目】
2/30

西野 アリス (4月7日)

『 西野 アリス 様


 久しぶり、というほどの期間ではないけど、久しぶり。ちょっと動揺がおさまらない内にあなたに一言いっておかなければと思い、これを書いてます。


 ねぇ、あなた、知ってて黙ってた?いいえ、アリスのことだから、言ったつもりになってたか、本当に忘れてたか、どちらかね。


 入学式後に、理事の一人に呼び止められました。その方に「妻と子供たちがお世話になってます」と頭を下げられました。

 訳の分からない私は、理事のお名前を頂戴してもわかりませんでした。お子さんの名前を聞いて、私は驚きました。


 あなたのお宅が、お父様だけ別居してるのは知ってたけど、進学先の理事の一人とは知らなかったんですけど?!


 通りでうちの父親が、この学校なら東京行きを許してやるなんて言うわけよ!ていうかお父様ナイスミドルでちょっとときめいたわ!仮にもお嬢様学校の入学式なのに絶叫したわ注目あびるわ、初日からやらかした!もしこれが伝え忘れだったら、帰省した時覚えてらっしゃい!




 ……吐き出したらちょっと落ち着きました。

 それから。あなたたちだけ村にいるのは、小母様のお仕事のためって説明されました。差し支えないから説明してくださったのだろうけど、人様の家庭の事情だし、一応アリスにも私が『知った』ということを報告しておきます。他言しないと約束します。


 オムツのころからの幼なじみなのに、まだ知らないことってあったのねと思いながら、今脱力してるところです。


 あと、ちょっと聞きたいのだけど。あなた、お父様に何言ったの?

 「アリスにはこの学園に入学して、できれば私の手元から高校に通って欲しかったんですけれどね、年ごろの娘は、父親よりも大切なものがあるんですね……」って、煤けて、ものすっごい哀愁だったんだけど。見ず知らずの娘の友人にこんなこと吐いてしまうなんて、ねぇ本当に何言ったの?大体想像はつくのだけど。



 最後になりましたが、才華高校入学おめでとう。

 花梨、聴香、渥美、善にも同じ言葉を伝えてくれるとありがたいです。たしか同じ学校に進学でしたね。壱織人と仁千翔にも、会ったらでいいわ、伝えてください。葉市には手紙を書くわ。


 東京はめまぐるしい所です。目標があって上京したけど、すでに山が恋しいわ。でもまだ始まったばかりだから、頑張るつもりです。

 それでは、またね。東山君にあまり迷惑かけないようにね!



  4月7日

   師村 雅美 』


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