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雅美の書簡  作者: 唐子
【二年目】
12/30

櫻井 善(5月19日)

『 櫻井 善 様


 丁寧なお礼の手紙をありがとう。

 みんなまとめてのお土産だったのに、わざわざ手紙をくれたのは櫻井君だけだったので、嬉しかったです。

 良子ちゃんと晴くんに、わざわざお手紙ありがとう、と伝えてください。小さい子の一生懸命なお手紙って、くすぐったいものがありますね。


 良子ちゃんはたしか小太郎と同じ、小学一年生でしたね。なのにあんなしっかりしたお手紙が書けるなんてすごいです。良子ちゃんの同級生には私の親戚もいるので、ぜひ仲良くしてあげてほしいです。(それを言ったら村中血縁ですけれど)

 晴くんのお手紙、上手に描けていました。青が好きなのかしら?チョコがそんなにおいしかったなんて、食べてる様子を見れなかったのが残念です。今度帰省するときには、おいしいお土産いっぱい持っていきますね。



(二枚目)


 話は変わります。

 花梨のことなのですが。

 いいえ、花梨と荘助、二人のことなのですが。彼らは今、どのような状態にありますか?

 不躾な質問をお許しください。でも、二人に近しい位置にいる櫻井君から見た二人を教えてほしかったのです。


 というのも先日、花梨から手紙が届きました。初めてのことです。

 内容はどうでもいいことばかりだったのですが、胸騒ぎがしました。女の勘とバカにしないでね。根拠は、一応あります。


 私の知る花梨は、極度の面倒くさがりで、自分の好きなこと興味あること(その方向性がどうであれ)に全力を尽くす愛すべき偏愛主義者です。人に対しても物事に置いても、興味が向かなければ一顧だにしない。それが花梨でした。

 そして、私が覚えている最古の記憶の限り、人物に対するそれは、荘助に向いていました。

 私が覚えた違和感は、中学卒業まで花梨の口から荘助の名前が出てこない日はなかったのに、手紙の中で一言も、彼について触れていなかったところです。思えば、こちらで会った時もそうでした。別の話が弾んでいたので、単に話題としてあげることがなかっただけなのかとも考えましたが、それは違うと感じています。


 櫻井君は、村の不思議話を聞いたことがありますか?村のじじばばから、小さいころに聞かされたりするのだけど。

 あなたの本家の話もあります。今はもう嫡流が絶えてしまった家だけど、村の中では古い家柄で、逸話もたくさん残っています。花梨と荘助の三国家は、櫻井の分家なのですが、ご存知でしたか?

(既知であれば読み飛ばしてください。あなたの曾々お祖父さんと花梨たちの曾々お祖母さんが姉弟だったかしら。詳しいことは神社に過去帳があるので宮司様にお尋ねください)


 逸話とは、『櫻井の人間は、異性を狂わせる』というものです。

 とてもいい響きとは言えないけれど、あなたには妹もいるし、話半分でもいいので、聞いてください。


 とにかく、物騒な痴情のもつれが多いのが、櫻井の家の逸話です。

 嫁ぎ先で義弟に岡惚れされて無理心中、誘拐監禁、勝手に惚れた見ず知らずの男の元恋人に刺される、異性だけでなく同性同士とか。他にも知りたければ、やっぱり神社に行ってみてください。書物殿に記録が残っています。宮司様も詳しいです。


 もう一度言いますが。三国は、櫻井の、分家です。

 私が一番怖いのは、櫻井の女の方が、男に惚れていた場合です。恋に狂った櫻井の女の結末は、例え昔話でもちょっとぞっとして、そして悲しいものです。


 お願いがあります。

 花梨が短気を起こさないよう、見張っていてもらえませんか?

 言われるまでもなく、花梨の変化を貴方たちは敏感に感じているのでしょうけれど、こんな離れた私のところにまで変化が伝わっているとしたら、それはゆゆしき事態だと思うのです。


 この手紙の二枚目以降を、早樹ちゃんか壱織人、渥美か、もしなら宮司様に見せてみてください。きっと、私の危惧を具体的に把握してくれるはずです。


 心配が高じて事態を大きく捉えすぎと笑えればいいのだけど、私もそれを望んでいるのだけど、この件に対しては本当に事がおおきくなる前に、早急に対処が必要なので、お願いします。



 長くなってしまい申し訳ありません。

 村を出てもお役目というものは身に染みていて、どうにも性分となっているみたいです。杞憂だといいのですが。

 ご報告お待ちしております。それでは。



  5月19日

   師村 雅美 』


三国 花梨・偏愛主義者。・極度のめんどくさがり。・幼なじみの中で1,2を争う筆不精。・興味のあることに貪欲。・計画立案班副班長。・荘助の従姉。・10才年の離れた弟を溺愛。


三国 荘助・花梨の従弟。一つ年下。・花梨とはにこいちお神酒徳利・かいがいしい。・暴走気味の一学年上に諦めながらついてきた不憫な学年(全一名)。



村には古い家ごとに何かしら逸話が残っています。「この家系にはこんな人間が多い」程度の認識ですが、物騒なものも多々。


二年目以後は、この二人のもだもだを主軸に幼なじみたちが暗躍します。


あとまったくの余談ですが、「君想い、」の『櫻井先輩』と『ハル』は、この櫻井善の妹弟です。

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