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雅美の書簡  作者: 唐子
【一年目】
10/30

早川 早樹 (3月30日)

『 早川 早樹 様


 早樹ちゃんと手紙って久しぶりですね。電話はよくしているけど。

 みんなにも書いたけど、改めて、この間はありがとう。


 聴香の見送りに、まさか女子みんなでやってくるとは思いませんでした。あんな風にみんなでわちゃわちゃパジャマパーティーするのは久しぶりでしたね。せっかくの聴香の壮行会だったのに、いろいろ暗い話を聞かせてごめんなさい。


 みんなに言ってもらったこと、嬉しかった。

 まず、仕事の前に、私という人間について、私はよく理解しなければならなかったのだと気がつけました。

 いっぱしの女優のつもりでいたって、どうしたって私はまだまだ16の小娘で、理屈づけて考えるより前に、感じたことをそのまま受け止めるべきでした。

 事務所の方針だって、つまりはそういうことだったのに。自然のままに成長していいとお墨付きをもらっていたのに焦って、空回って、ばかですね。悩んだってよかった。でもこれが、今の私なんだって、思えるようになってきました。


 早樹ちゃんの言っていたことも、身につまされたの。私、これまでちゃんと、お客さんのことを考えていたかしら?って。

 舞台に上がることも高みを目指すことも、もちろん重要なんだけど、それ以前に、観客がいなければ、この商売は成り立たないんだって。そういう「仕事」なんだって、ちゃんと理解していたかしら、って。やっとそこに思い至りました。

 早樹ちゃんは、早いうちから「椿庵」の跡取りとして自覚して、そうあるべきと行動してきて、私達にも伝わっています。

 私には、演技を仕事にする「プロ意識」が足りませんでした。これじゃ、自己満足と一緒ですね。おもてなしと一緒というのは、たしかにそうでした。早樹ちゃんの言葉は、いつも方向を定めてくれます。


 今回のことは、いろいろ自分を省みるきっかけになりました。大人の世界に片足つっこんでいるけど、子どもを捨てることはないと、自己肯定できた感じ。

 未熟だし、人の機微に疎いし、わがままだけど、「夢に対して真摯」と言ってくれたみんなに報いるためにも、へこたれてないで、前を向いて歩いて行ける自分でありたいと強く思います。



 春休みは帰らないでごめんね。父と母に、早樹ちゃんからも言ってくれるとありがたいです。実の娘より姪の方が信用度が高いって情けないものがあるのですが、早樹ちゃんの方がしっかり者というのは私達親子の共通認識なもので。


 あと、個人的な意見だけど。

 早樹ちゃんは、もっと自由に生きていいと思うよ。こんな自由すぎる従妹に言われたくないかもしれないけど。もうすぐ高三になる今だから、差し出口をします。うるさかったらごめんなさい。

 それでは、また。



  3月30日

   師村 雅美


追伸:言っていたドラマのオーディション、受けました。 』


早川 早樹 ・雅美達の幼なじみ。・学年一つ上。村に同年の子はいない。・雅美の従姉。ほぼ姉妹。・雅美達のお姉さん役・民宿仕出屋『椿庵』の跡取り娘。・一つ下の子たちが悪ガキ集団でどうしたってお姉さん役に回らざるを得ない。・しかし、しれっと計画立案班に悪知恵を授けたりする。幼なじみの悪戯を最悪なことにはしないけど酷いことにはする、そんな黒幕系お姉さん。



【一年目】はこれで終了。【二年目】から村の方で色々起こります。

息抜き作品ですので、しばらくお待ちください。

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